第41話 4人の戦争
なぜ読み終えていない作品の主人公である変身の暗示のマスターに成れたのか。
セイギが黒き戦士に成れた理由、それは彼女の意味が関係している。
その意味とは〈世代交代の可能性〉。
効果は元のマスターが死亡した時、後継者が現れたなら読み終えずともマスターに成れると言う物。
槍の暗示がやられている間に回収した〈変身の殺人〉から召喚していた。
2年前の自己紹介を思い出せたこと、それを推測し当てたこと、シゲルの死を乗り越えバネにするしかなかった。
「マスター! なんで銃を撃たなかったの! 」
挫くの暗示が激怒するのも無理はない。
変身する前に撃っていれば確実に仕留められた。
その事に対してまるで見透かし、小バカにするように変身の暗示がかわいらしい声で嘲笑う。
「そんなことができるものか。自分の手を汚すことの恐怖は刑事だからこそ。醜い、実に醜い」
「でも俺はできる。ここからは欲望のために動く。シゲルさんがいないならレジスタンスとはお別れするよ。じゃあねぇー」
そう言いながら次元の裂け目から〈槍の殺人〉を取り出し、槍の暗示を回収する。
「スピード!」
彼女の掛け声と共に黒き戦士から青き戦士に変貌し、足を踏みしめ、見えないほどの瞬足でこの場から逃走した。
「あ! 待ちなさい!」
セイギ達を追いかけ始める挫くの暗示。
カゲタはその光景に銃を撃てなかった自分の不甲斐なさを呪う。
正義感より人殺しになる恐怖が 勝った。
リボルバーをベルトに取り付けたホルスターにしまい、彼らを追いかけるため廊下を駆ける。
(俺はただ銃口を向けていただけ。人を殺すことが怖いんだろう。もう刑事でもないんだがな)
捨てられない刑事だった時のプライド。
ノルマを達成しなければならないと言う警察の義務から解放されたが、失ったものの方が多くあった。
(この世に正義も悪もない。あるのは人がどう解釈するか。人にとって都合が良いことができたかどうかだ)
アジトの通路は頭に入っている。
おそらくセイギは外に出るために出入口へ向かうだろう。
ここから出られた場合自衛隊にレジスタンスの居場所がバレる。
それは避けなければならなかった。
一方挫くの暗示はセイギをひたすら追いかけていた。
外へ逃げ出した彼らの気配を辿り、肉眼では捉えきれない速さで走り続ける。
しかしブックエスケープの範囲からギリギリ出てしまいそうになり、悔しそうにブックエスケープを使用した。
なんとかその場を凌いだビルの上にいる4人。
しかしレジスタンスだったと言うことで指名手配されている現状、顔は知られているだろう。
『これからどうするんだ?』
そう分かっているはずの変身の暗示の口振りに対し、青き戦士は「決まってるよ」と静かに2つの組織に怒りを込み上げる。
「自衛隊とレジスタンス、両方ぶっ潰すのさ」
無茶なことを言っている。
だがそれでいい。
欲望のために人殺しをしようとする相棒に正義の暗示は心を踊らせた。
やはりマスターで良かったと興奮し、口部分をクラッシャーオープンさせる。
『セイギらしいな、フハハハハハハハ!』
笑い声が止まらない彼に引き気味な槍の暗示。
無謀な行為を笑いながら受け入れた赤き戦士の考えが理解できない。
(セイギ様が行おうとしていることはただの自殺行為です。しかしそれを止めることなどできないでしょう。だからこそ私は戦いに投じます。すべてはセイギ様のために)
この身をマスターに捧げる。
そう誓ったあの頃から今にかけて後悔したことは度々ある。
だがそれでも自分が主人公なのだからと妥協している。
逆らえば正義の暗示に殺されてしまうかもしれないと言う恐怖などもうない。
ただ従えばそれでいいのだ。
「とりあえず傷を治してから自衛隊を潰すよ」
『分かった』
『分かったのだ!』
『承知しました』
こうして始まった4人の戦争。
自分自身の正義のために、自己満足のために、そして。
消えてしまったミウの想いを無駄にしないために。
月が雲で隠れた夜を迎え、戦場に向かう黒き戦士。
「主人公を確認。排除する」
軍勢の暗示の1人が銃口を向けたその時。
「ガ……………ハ……………」
凄まじいスピードで接近され、拳が腹を貫いた。
ゆっくりと引き抜いた右腕の返り血をスナップで払い、「スピード!」と言う掛け声と共に青き戦士に変化する。
さらに正義の暗示、槍の暗示を召喚し、建物を破壊していく。
そこへ黒き鎧に触手を巻いた武器の暗示がミサイルに乗って現場に到着、地面に降り立ち次元の裂け目からバズーカを2丁取り出した。
トリガーを弾き、ミサイル2弾が勢い良く射出される。
標的はランクがフツウの槍の暗示。
だが射出音に気づいていた彼は鉄製の槍を次元の裂け目から2本発射し、激突、爆発を引き起こすのだった。




