第37話 サイレントストレス
一方その頃、電撃の暗示と破壊の暗示は逃走を続ける主人公を追いかけていた。
その姿はブリキのおもちゃのロボット。
青いボディを持ち、四角い頭にはラジオを思わせる2本のアンテナが生え、Dの文字が赤く印字されている。
さらに口部分と腹にはスピーカーが付いており、腕と足が細くなっている。
意外と足が速く、破壊の暗示の意味が届かない。
しかもさっきから音がまったく聞こえない。
会話ができず、ただ闇雲に追いかける。
(あいつ。すばしっこい)
イライラし始めた彼女は電気をケーブルから人差し指に伝達し、光線を放つ。
しかしまるで攻撃が来ることが分かっているかの様にコミカルなジャンプで躱される。
(あの主人公、俺達をどこかへ誘い込もうとしているのが見え見えだ。だが 電撃の暗示のあの攻撃からして痺れを切らしたなぁ)
声が発せられれば助言を言えるのだが、できない以上自分でこの場を解決するしかない。
とりあえず〈回り込めない〉を破壊し、主人公の前に出現する。
(なに!?)
突然現れた破壊の暗示に、彼は驚きつつ、高く飛び上がり天上に伝って走り出す。
(役目はそろそろ終わる。ハズレである俺達を頼りにしてくれた剣豪の暗示様に感謝しかないぜ)
実は後ろにもう1人の主人公がおり、毒針を今か今かと刺そうとしている。
それに気づかない2人は追いかけ続ける。
無音状態の中、ついに行き止まりにロボットを追い詰め、殺しにかかる。
電気を両手に集め、殴り掛かろうとした。
次の瞬間、突然主人公の体が燃え上がり、悲鳴を上げながら灰と化した。
さらに後ろからも悲鳴が聞こえ、振り返るとそこには炎魔人の暗示が燃えるスズメバチの様な顔をした主人公の頭を殴り、首から切り離した。
灰となった彼らを見て、改めて究極の主人公の強さを不意打ちとは言え思い知った。
「あなた、確かレジスタンスの究極の主人公よね? なんで私達を助けたの?」
電撃の暗示が腰に手を当てながら質問すると、炎魔人の暗示はため息を吐き、左肩を回す。
「あんな奴らに指揮されるつもりはない。従順な3人とは違って俺はマスターを選ぶ。お前達を助けたのは前に護衛をした時の縁だ。これからよろしく頼む」
「良いのか? お前のラノベはレジスタンスにあるんだろう?」
破壊の暗示の発言に対して、次元の裂け目から〈炎魔人の殺人〉を取り出し、2人に見せつけた。
「物をくすねることなど容易い。支配者の暗示がいない以上好きにさせてもらう」
次元の裂け目にライトノベルをしまい、2人が目を細められ、じーと見つめながら警戒される。
「ほら、スタジオまで案内してやる」
左の両腕で着いてくるよう促し、歩みを進めるのだった。
一方その頃刃の暗示は蹴りの暗示に悪戦苦闘していた。
1度アンカージャッキの攻撃を頭にくらい、意識が朦朧としている。
視界が歪み、息を荒くする。
(こいつ、戦闘経験が豊富すぎる。私の剣術に対応する速度が速いのも去ることながら、同じく連んでいた主人公とは明らかに別格だ)
エクスカリバー・ジャイアントキラーを短く持ち、カウンターの構えをとる。
「いくら武器が強力な物だろうと、使い手が疲労困憊では意味がない!」
足を踏みしめ、近づいて来る彼に、大剣の持ち手を強く握る。
「テリャー!!!」
叫びを上げ、大きく振りかぶる。
「弟の仇を取らせてもらうぞ!」
振り下ろされたエクスカリバー・ジャイアントキラー右サイドステップで躱し、回転蹴りを繰り出す。
だが…………
突然次元の裂け目が開き、鎖鎌が射出、全身を拘束される。
「バカな!?」
予想外の攻撃に動揺する蹴りの暗示。
刃の暗示は大剣をゆっくりと持ち上げ、敵に向けて再び振りかぶる。
「これで………ようやくお前と………おさらばできるな………」
息を切らしながら振り下ろされたその刃はバッタを叩き斬り、血を噴水の様に溢れ出させた。
「私にも………帰る場所がある………お前達の様に………マスターに寄り添い続けるために………」
血に汚れた鎧、アンカージャッキの攻撃によって歪んだ兜。
膝から崩れ落ち、大剣を支えにする彼女。
3人の遺体を見つめ、勝利の余韻に浸ることなく、息を荒くしながらゆっくりと立ち上がり、首を振って意識を保ちつつ、すり足でスタジオを探すのだった。
何分経ったのだろうか。
スタジオに到着した頃には激しい頭痛に襲われ、その場で後ろから倒れてしまう。
「こんなところで………死んで………たまるか………」
立ち上がろうとするが、全身に激痛が走る。
それでも仲間の元へ向かうため無理矢理体をお越し、震える足でスタジオに入る。
そこに待っていたのは………
「あら、随分とやられたのね」
救いの暗示の目を細め、口にされた言葉。
それは安堵の気持ちを沸き立たせる発言。
戦いが終わったのを示すように仲間の主人公達が待っているのが分かった途端、力が抜け、崩れ落ちる形で倒れ込むのだった。




