第33話 色んな意味の変化
病原菌の暗示はハンドガンの弾ギレ状態になったマガジンを床に落とし、次元の裂け目からマガジンを取り出し装填する。
「さあ番犬の暗示、正義の暗示の元へ戻るぞ」
「ワン!」
2人は走ってスタジオに戻って行く。
レジスタンスと言われている者達はゲームマスター、つまり主人公のまとめ役が逮捕され、その友人のマスターが残党として他のマスターを集めて結成された存在である。
究極の主人公は3人回収したが、魂の暗示だけは残念ながら無くなっていた。
(俺達はただマスターに従えばいい。おそらく自衛隊はこの放送を観てこちらに向かってくるだろう。引き返せないんだな。戦争に発展することは)
自分はマスターと共にある。
そう考えて動いてきた。
マスターに従っていればそれで良い。
生き甲斐だった。
人を殺せと言われれば殺すし、守れと言われれば守る。
主人公はそう言うものだと妥協している自分がいた。
一方放送局の入り口の門には、放出の暗示と召喚の暗示がおり、侵入者が来ないように警戒していた。
「召喚の暗示様。自衛隊はなにを仕掛けてくるのでしょうなぁ」
「話によればマスターをかき集めて我々を全滅させようとしているらしい」
回答に対して機械の龍は高笑いを上げる。
「そんなバカげたことができるはずがない。なぜなら我々には3人の究極の主人公の方々がいるのですから」
こうして戦いの準備を整えているレジスタンス側。
その中にセイギは馴染めずにいた。
彼はただの殺人鬼だと自覚し、精神的に追い詰められている。
誰も心配してはくれない。
シゲルは戦いに忙しくなり、話し相手にはなってくれない。
障害者だからと支えてくれる者などいやしない。
自分は正義の暗示槍の暗示のおまけでしかないと思うと病んでしまいそうになる。
(俺は害なんだ。正義の味方になりたいってワガママを他人の死で叶えようとしている害なんだ)
両手を見ると血塗れで、瞬きをすると血などない。
2年も戦ってきて思ったことは他の者達との温度差。
いつ暴れてもおかしくない自分に彼らは手を差し伸べるのではなく、拳をくらわせてきた。
気絶させられるほど殴られる。
正義の暗示と槍の暗示のマスターだからレジスタンスに居させてやっていると告げられ治療など行われない。
赤くなった程度だからとほっとかれる。
食事は与えてやってるんだからと偉そうに言われる。
こんな生活耐えられなくてもプライドが許さなかった。
そんな中、セイギはミウという同い年ぐらいの黒髪の短い女性のマスターと仲良くなっていた。
彼女の主人公は悪夢の暗示であったことは驚きである。
ちゃんと向き合って話を聞いてくれる。
同じ趣味を持ち、アニメなどの会話が楽しい。
彼にとって支えであり、失いたくない存在だった。
「じゃあ俺、正義の暗示が心配だからテレビを確認してくるね」
「うん、またお話しましょ」
やつれた様子でテレビを観るため廊下を歩いて監視室に向かう。
その様子を見ていた2人のマスターは不思議そうに首を傾げる。
「あいつ、誰もいないところで楽しそうに独り言なんてして、気は確かなのか?」
「元々あいつはおかしいんだよ。突然暴れるし、持ってる主人公が強いからって理由で置いてやってるのにグチグチ言いやがる奴だ。まったく、さっさとこのレジスタンスをやめてほしいぜ」
セイギに対してコソコソと呆れたようにそんな話をしながら、彼らは廊下を歩き出すのだった。
一方その頃、ナイツとヒメ、コサメはヘリコプターに乗り込み、テレビ局へ向かっていた。
「そろそろだ。これ以上は近づけないのでここで主人公を戦場に送れ。いいな?」
パイロットの威圧感がある命令に、3人は従うしかなかった。
主人公達を召喚し、パラシュートで降下していくのを確認する。
(みんな、絶対に死なないで)
両手を絡め、祈るヒメの姿に、コサメは余裕のない自分を情けなく思った。
アスファルトの道に着地し、救いの暗示、残酷な映画の暗示、電撃の暗示、破壊の暗示、刃の暗示の一同はパラシュートを投げ捨て、テレビ局へ向かう。
「久しぶりだな。火事から助けてもらった以来か?」
刃の暗示が救いの暗示に馴れ馴れしく話しかけると、「そうね。あなたとは会うことはないと思っていたけど、会えて光栄だわ」と笑みを浮かべ、返事を返す。
再開を喜ぶ2人に、残酷な映画の暗示はかつての相棒だった催眠術の暗示が目に浮かぶ。
(催眠術の暗示、俺を見守っていてくれ)
彼女が死んでしまったことを知ってから、彼は命の重みを知った。
他人の死などどうでも良いと言う考えは別に変わってはいない。
だが大切な人を失うつらさ、この身に沁みるのだった。




