第31話 デスサイズニュース
支配者の暗示が悩み耽っていると、究極の主人公である剣豪の暗示は貧乏ゆすりをし始める。
「そろそろ決めてもらいたいものだ。兵士に混じった出来損ないの主人公など、わしの刀で始末してくれるわ」
刀を次元の裂け目から取り出し、さらに次元の裂け目を大量に開き、軍勢の暗示に向けて刀と剣を飛び出させる。
「分かった。分かったよ〜。教えてあげないといけないよね〜、私達がどれだけ怒っているのかをさ〜」
「許しが出た。消えろ」
次々と降り注ぐ刀や剣は軍勢の暗示達の心臓部を貫き、立ったまま死亡していく。
「滑稽だな。自衛隊などわしらを止められん。フハハハ!」
駆逐されていく者達の悲鳴に笑う彼を動けない正義の暗示、槍の暗示、銃の暗示はただただ呆然と見ていることしかできないのだった。
一方その頃とあるテレビ局では、情報の暗示にノゾミは怒りを覚えていた。
彼は政府の情報をいじった。
つまり都合良く国の方針を書き換えたということである。
主人公を撲滅するという動き。
これによって市民への安全は損なわれているのだ。
女子トイレの中でスマホのマイクに口元を近づけ、会話をし始める。
「あなたは確かに私のために動いてくれた。でも自衛隊を動かすほど落ちぶれてない!」
『マスターは間違った正義の心を持っている。弟と似ているんだ。正義の執行を行う弟と真実を伝える者である姉。愚弄していているとしても自分の悪い行いは偉いと都合良く改変する。そうだろう、マスター』
嫌味を言われ、彼女はセイギの笑った顔を思い出し、ドアを殴る。
瞳が狂気に満ち、再びドアを殴った。
「私はあんな奴とは違う! 怒って暴れて罪悪感なんて感じないあいつとは訳が違う! なにが障害者の害は使わないでくれだ! セイギは私にとって完全な害なのよ! あいつがいなければ
自分が責められることはないんだから!」
怒りが収まらないまま、手を水道で手早く洗い、勢いよく女子トイレを出る。
「情報の暗示、とりあえず明日のシンジツの分の情報を編集部のパソコンに転送しておいて。私はスタジオの片付けを手伝いに行くから」
『悪かったな、俺には悪魔になりきれない自分がいる。マスターを死なせたくないという自分が』
情報の暗示は感じている。
ノゾミを選んだのは間違っていないと。
弟に対して憎しみと恨みを持ち、他人を社会的に破滅させる力を存分に扱えるのだから。
「セイギ君、これ以上主人公を世間に知られたら俺達は破滅する」
「もう手遅れですよ。シンジツが世間に放送されている以上は」
「確かシンジツは君のお姉さんが放送をしている番組だろう?」
現場に向かうシゲルはお姫様抱っこしているセイギに対して質問する。
「お姉ちゃんは俺を追い詰めようとしているんです。俺の正義を悪に塗り替える。観てれば分かりますよ。地獄に落とそうとするお姉ちゃんの願望が筒抜けですから」
精神を病んでしまった彼の前に、再び悪夢の暗示が現れる。
「お前は姉を殺したいと思っている。ならば新たな力が必要だ」
カチカチと歯と歯を擦り合わせながら、後ろに廻る。
「新たな力って?」
「主人公を集めろ。そして正義の暗示の糧にしろ。そうすれば、最強の戦士が誕生する」
「最強の………戦士………」
セイギの発言にシゲルは不思議に思い、声を掛けようとする。
と、正義の暗示達が支配者の暗示に動きを封じられているところを確認する。
「セイギ君! 早く2人を戻すんだ!」
「わ、分かりました!」
ズボンのポケットから〈正義の殺人〉と〈槍の殺人〉取り出し、彼らを回収する。
それに合わせてシゲルが足の裏でブレーキをかけ、地面を蹴って高く飛び上がり、現場から逃走した。
『申し訳ないセイギ、かなりの情報が漏れた』
『これからどうしましょう? 私達は社会的に消されてしまうのでしょうか?』
槍の暗示の心配と不安の言葉に、変身の暗示が「ガハハ」と笑う。
「安心しろ。我々が正義の味方であることに変わりはない。これから悪がうじゃうじゃ出てくる。集めるのだ、レジスタンスを」
「その通り、すでに仲間は何人かいる。セイギ君、一緒に戦ってくれないか?」
セイギは考えを巡らせ、整理する。
もし自分が足を引っ張ってしまったら。
悪いことだけが頭に過ぎる。
すると悪夢の暗示がまたまた現れ、左手の関節をバキバキと鳴らす。
「なにを迷っている。お前に仲間が増えるんだぞ」
「でも、俺にはそんな資格は…………」
「ある。我のマスターはレジスタンスの一員なのだ。彼女は確信している。お前が殺人鬼ではなく、悪を倒す使者だとな」
さっきから様子がおかしい彼に、シゲルは(誰と話をしてるんだ?)と感じるのだった。




