第3話 害なす者は裁かれない
階段を急いで下りる男子を視線に捉え、下りていくヒメ。
足音で気づかられたか、足早に下りきると、廊下を走り出す。
この状況で追いかけたところで教師にウソの情報を流され、自分が悪者扱いされるだけと判断し、ヒメは追求をやめた。
しかしここで引き下がれば再び正義の暗示がこの学校を脅かすのは間違いない。
(救いの暗示が心配になってきた。私以外の人を守ろうなんて絶対思わないだろうし )
一旦2階に上ろうとすると、傷だらけの救いの暗示が階段を下りながらオートマチックガンを乱射してした。
「救いの暗示!?」
「下がってて、あいつが来る」
ゆっくりと下りて来た正義の暗示の姿に、意味にある〈不安定〉がピッタリな狂気がそこにはあった。
戦いによって負った傷口から血が吹き出していると言うのに、正義の暗示は叫び声を上げながら、狂った様に首を何回も回している。
視線にヒメが入ると、首を鳴らし、昭和ヒーローを彷彿とさせる小ダサいポーズをとる。
それはまさに〇〇ライダースト〇ンガーを思わせた。
「悪は俺達が排除する。邪魔をするなら、ここで消す! トォー!」
床を破り、高く飛び上がると、ベルトの左サイドスイッチを叩く。
同じくベルトのスクリューが回転し、黄色のラインから右手拳に伝達される。
バネの様に右腕を引き、救いの暗示に向けて殴りかかる。
「ジャスティスパァァァンチ!!!」
これをまともにくらえばやられる。
単調ではあるが、マスターであるヒメに危害があれば。
そう思うと救いの暗示は意味の通り〈異常なまでの依存〉が息を荒くさせる。
(絶対に、絶対にヒメが死ぬなんていや。そんなこと絶対にさせない!)
ヒメをマスターとしてではなく、愛しい者として見ている彼女は、小柄の体では予想がつかない怪力でお姫様抱っこをし、大量のホコリが立つほどの勢いで校庭に出る。
攻撃を外し、着地すると、立ち上がり、口部分をクラッシャーオープンする正義の暗示。
「スピードアッ………」
その続きを言おうとした時、支援級の教室からマスターである男子がニヤリと笑みを浮かべながら現れる。
「セイギ」
「もういいよ正義の暗示、僕達は多くの悪を倒さなきゃいけない。逃亡者は体育館で集まっているはず。質より量とも言うし、何よりヒーローである僕達が焦ってどうするの? そうでしょ、相棒」
セイギと言われた男子は、彼に向けて優しく指示を出し、帰り支度を済ませた状態で玄関で上履きから靴に履き替え、右手を振る。
「じゃあ僕は学校を出てるから、何かあればブックエスケープでここから脱出してね」
「分かった。おそらく警察官がいるだろう。保護されるフリをしてこの場を離れてくれ」
「オーケー」
彼らにとってこれは正義の執行。
なんの罪悪感もなく、次々に人を殺してきた。
悪である者はすべて消す。
皆が持つ悪をすべて否定する。
そんな身勝手な殺人に誰もが思うだろう。
狂っていると。
捕まって死刑になればいいと。
だがその考えすら悪と見なされ、逆に死人の仲間入りになる。
誰かが言っていた。
障害者と言う字を使ってはいけないと。
障害者の「害」は「害悪」と言った様な表現に取られてしまうと。
しかし誰かが反論した。
障害者は完全なる「害」なのだと。
未完成な存在は最初からいなくていいと。
障害者の障害は訳しであると。
人の一障に害なす者を訳した物だと。
世間が何を言おうが結果がすべて。
何か報われる様なことをすれば応援され、何かを犯せば、批判される。
障害者をニュースは「かわいそう」とか「応援しよう」とかと取り上げる。
しかしそれは逆に言えば天使と吊るし上げ、狂った悪魔達を隠し、現状を観せずにお茶の間を騙し続けている。
現に悪魔達は暴言を吐き続け、迷惑かけ、しまいには暴力を振るう。
それでも刑務所に送られず、死刑にもならない。
行くとしたら精神病院の隔離室ぐらいだろう。
確かにそこは生き地獄だ。
だがそれは法で裁いたとは言えない。
いずれ治ったと判断されれば出てくる。
そして悪魔達は世に解き放たれる。
この世には裁けないものがある。
障害者の害ある行為がその1つなのだ。
高速で体育館に向かう正義の暗示はセイギに対して狂っていると言う考えが間違っていると認識している。
(セイギは決して悪ではない。俺が選んだあの青年の言葉を間違いだとは言わせない。悪はすべて排除し、平和な環境を作ってみせる)
信じた相棒の考えを汲み取り、鍵がかかったドアを殴り壊し、体育館に侵入、全員の悪を計測する。
恐怖し、悲鳴を上げる生徒達。
教師達は正義の暗示を取り押さえようと無謀にも立ち向かう。
「悪を感知、排除する」
彼は右手をベルトのスクリューにかざし、シューティングシルバーを取り出す。
「シューティングシルバー!」
床を踏みしめると、高く飛び上がり、生徒達に光線の雨が降り注ぐ。
あまりにも簡単に殺害していく執行人に、教師達は恐怖で体が動かない。
「教師諸君、悪である者達の選別はすでに完了している。お前達を含めてな!」
銃口を教師達に向け、正義の暗示は容赦なくトリガーを高速で弾くのだった。




