第27話 ジャスティスパンチ
セイギは障害者という烙印を押されている。
自閉症と知的障害を患っている彼は、名前を覚えるのに時間がかかる、衝動を抑えるのが難しい、漢字や英語などの言語が読めない物があるなど、他にも欠けているところがあり、泳いでいる右目を見れば障害者だと分かるだろう。
この擁護学校はそんな生徒を支援する場所である。
セイギにとってここは前の学校より生きづらさをそこまで感じなくなったことがとても大きかった。
いじめっ子が居らず、休み時間であれば出入り禁止されているところ以外は校内で行動ができるため、1人でゆっくりできる場所を探すことができた。
しかし1番問題なのは隣の高校の女子高生が跡を着いて来ることだ。
友達と帰ってもシゲルと主人公狩りをしててもいつも着いて来る。
外国人だろうか、金髪でテレビで観たロシア人の顔立ちをしている。
教師にも相談したが、まったく話にならなかった。
彼女がストーカーなのか、それとも新手のマスターなのか。
どうあれこれ以上の彼女の行動は許すわけにはいかない。
無視し続けているのも気持ち悪いので、正義の暗示に監視させた。
その結果分かったのは女子高生の名前はメイシア・ベンと言い、主人公のマスターであること。
主人公のランクがオオアタリであること。
それぐらいだろうか。
(後はシゲルさんに任せるとして、オオアタリの主人公を出されるのは危険だよね。警戒しないと)
そんなことを考えながら友達と別れ、家まであと少しのところだった。
警戒した矢先の事。
黒きフルアーマーを纏い、触手を全身に絡み付かせた主人公が目の前に猫背で現れた。
「悪いな、お前が俺のマスターの追尾に気づいているのは知っていた。これ以上ザコの主人公に集まられたら困る。だからこそ、お前達を殺す。容赦なくなぁ」
その発言にセイギは〈正義の殺人〉と〈槍の殺人〉を取り出し、正義の暗示、槍の暗示を召喚する。
「先に名乗っておこう。俺の名は武器の暗示。意味は武器、生成、貯蔵だ」
「俺の名は正義の暗示。意味は正義、不安定、悪の絶対排除だ」
「私の名は槍の暗示。意味は槍、生成、貯蔵でございます」
3人の挨拶が終わったところで、戦闘が始まる。
先に動いたのは武器の暗示。
次元の裂け目から、なんと戦闘機に搭載されているミサイルを1発発射する。
正義の暗示はセイギを抱き抱え高く飛び上がると、安全な空き地に着地する。
「俺達に任せてここにいてくれ。必ず戻ってくる」
「分かった。頼んだよ」
セイギに見送られ、再び敵との戦闘に入る。
道に激突したミサイルは住宅の外壁を次々と破壊し、アスファルトの道をえぐり、植木を吹き飛ばしていく。
「正義の暗示様、あいつは意味の通り武器をすべて生成、貯蔵できます。早くしないとこの一帯が火の海になるでしょう」
「そんなことはさせん。行くぞ槍の暗示、トォー!」
掛け声とともに高く飛び上がり、ベルトの左サイドスイッチを叩くとエネルギーが左拳に伝達される。
「ジャスティスパァーンチ!」
繰り出される攻撃を武器の暗示は触手を伸ばし、返り討ちにしようとする。
だが突如次元の裂け目が複数出現、赤い槍が射出され、触手を串刺しにする。
さらにアスファルトの道に突き刺さり、使い物にならなくなる。
(ここでミサイルを使えば俺も巻き添いをくらう。こいつらならアサルトライフルで…………)
思い描く最中正義の暗示のジャンプパンチが顔にクリーンヒット、触手が槍で切れ目を入れられながら吹き飛ばされ、アスファルトの道で引きずられる。
ゆっくりと立ち上がり、首をゴキッゴキッと鳴らし、傷ついた触手をとぐろ状に巻く。
「ケッ、その程度の攻撃で…ウッ…………」
突然爆裂する体、正義の暗示の必殺技をくらった者はエネルギーが注入され、爆散する。
さらに相手の悪のレベルが高ければ高いほど、破壊力が増す。
「自分がオオアタリだったことを呪うがいい」
血反吐を吐きフルアーマーの隙間からダラダラと血が流れ出す。
このままではザコだと見下した彼らに逆に殺される。
(ブックエスケープをやるしかないか)
肉体に限界を感じ、武器の暗示はブックエスケープを使用、マスターの元へ戻って行った。
「セイギが心配だ。俺達も戻ろう」
「分かりました。そう言えばあの 武器の暗示という主人公のマスターが見当たらないのですが、どこにいるのでしょうか?」
槍の暗示の不思議そうに首を傾げる姿に、正義の暗示は悪い予感が頭に過ぎった。
「まずい!セイギがマスターに狙われている!」
「なんですって!?」
慌てる2人はブックエスケープで速やかにセイギの元へ向かうのだった。
『セイギ! 大丈夫か!』
『おケガはありませんか!』
心配する声を上げる中、セイギはひたすらにメイシアから逃げていた。
「2人共丁度良い時に! なんとかして!あいつ俺を確実に消すつもりだ!」
彼の言う通り、メイシアの表情は必死さを感じさせる。
それほどまでに彼女はセイギを殺したいのだろう。
『ブックエスケープはすでに使っている。ここで召喚されればセイギは社会的に抹殺されるのは確実だ』
『じゃあどうします? このままではセイギ様はあの小娘に殺されてしまいますよ?』
2人の会話にセイギは救いに諦めを感じ、家に帰ることに専念する。
するとちょうど良いところにコンビニがあり、匿ってもらうためそちらに向かう。
だが斜視による視線の弊害が災いし、なにもないところで前から転んでしまう。
「いっててぇ」
立ち上がろうとする彼を見てチャンスと踏んだメイシアは折りたたみナイフを右手で取り出し、刃渡り6センチほどの刃部分を引き出す。
(殺してやる! 友達の仇をここで!)
折りたたみナイフを逆手に持ち替え、背中を刺そうとする。
その時だった。
突然後ろから右手を掴まれ、刃物を取り上げられた。
「あなたなにをやってるの!」
その声の主は救いの暗示のマスターであるヒグラシヒメだった。




