第23話 ソウルスキルゲッター
主人公がマスターに依存する理由、それは最後のあとがきまで読んでくれたと言う信頼とマスターとなった者の人格を自分が理解してあげたいと言う親密度の高さがある。
「確かもう1人いたよね〜。と言っても動けなくしてるから〜、すぐに見つけられるんだよ〜。魂の暗示〜、探しに行ってくれるかなぁ〜」
支配者の暗示に魂の暗示と呼ばれた少年は「分かった」とめんどくさそうに目を細め、ため息を吐く。
すると体が光に包まれ、黒き狼の姿に変身した。
「この近くに主人公の匂いがする。あとで合流しよう」
「オ〜ケ〜」
牙を見せつけながら四足歩行で走り出す狼の姿に「ニヒヒ」と笑い、腰に手を当てる支配者の暗示。
残酷な映画の暗示はマスターの声に耳を傾ける。
『殺して…………人を…………殺して…………大丈夫…………手伝うから…………』
様々な者の入り混じった声、これがマスターである怨念の集合体だ。
この図書館に住まう怨念。
それは廃墟になった際住み着いた存在。
『分かった。任せたぞ』
心の声で通じ合う2人。
すると支配者の暗示の体が浮かび始める。
「なになに〜? もしかして残酷な映画の暗示のマスターを怒らせちゃったかな〜?」
動きを封じられながらも余裕の笑みを浮かべる。
だがそれもここまで。
救いの暗示の持つサバイバルナイフが宙に浮かび、勢いよく襲いかかる。
彼女は目の前ギリギリで攻撃を止めるが、今度は喉を締められる。
さらに床に叩きつけられ、体内がブチブチと音を上げながら口から血を吐く。
怨念の力に負け、死亡した支配者の暗示の顔は常に笑顔を保っていた。
金縛りが解除された残酷な映画の暗示は鉤爪の刃を擦り合わせながらヒメに向かって走り出し、貫きにかかる。
「俺達3人は最高のトリオだぜ!」
左腕をバネにし、繰り出される刃。
それに対し 救いの暗示は友人を守るため再びお姫様抱っこを行い、逃走する。
「逃すか」
暗闇に姿を消し、逃げ出す者の目の前に現れる。
だがその時にはすでに圧倒的スピードで抜かれており、視界から消えた。
気配を感知し暗闇に消えると、そこは1階のフロア、ここまで逃げて来た人間はいなかったので焦りを感じる。
しかし自動ドアはマスターによって動かなくなっている。
問題は相手のパワーとスピードが明らかにAクラスだと言うことだ。
自動ドアは強化ガラスではあるが、彼女なら壊すことは容易いことだろう。
『早く…………殺して…………逃げられる…………』
『分かってる。必ず仕留めてやるからな』
マスターの命令は絶対。
暗闇に消えようとする彼の前に仲間の主人公が現れる。
巫女服を着た短い黒髪の女性、右人差し指には糸が通された5円玉が結ばれている。
「催眠術の暗示なにしに来た? マスターには待機してろって言われ…………」
その続きを言おうと瞬間、催眠術の暗示が5円玉を向けられ、揺らし始める。
「あなたは段々眠くなる。あなたは段々眠くなる」
「その声! おま…………え…………は…………」
急な眠気に襲われ、倒れ込む残酷な映画の暗示。
「はぁ。抵抗するのが悪いんだぜ、催眠術の暗示」
ため息を吐きながら光に包まれると、そこにいたのは魂の暗示の姿だった。
「まさか支配者の暗示が死ぬとはな。まあ俺がその力を手に入れたんだ。マスターには怒られるだろうが、それでもこれは大きいぞ」
仲間の死を自分の力に変える主人公。
どう言う意味かと言うと、死んだ存在の魂を魔法陣に宿すことで姿や能力をそのままに成り切ることができる。
つまり犠牲が出れば出るほど強くなると言うことだ。
「とりあえずここの怨念を魔法陣に封じ込めて、それからこいつをマスターのところへ持って行くか」
全身の魔法陣が赤く光り出し、怨念を取り込もうとする。
魂の暗示には見えるおぞましい怨念の姿。
人間の姿はほとんどなく、あるのは鬼火の集合体。
悲鳴に近い咆哮を上げながら吸収されていくマスターである存在。
その光景に彼は喜びの引き笑いをし、完全に怨念の力を手に入れるのだった。
数分後、ヒメは図書館脱出後、救いの暗示の圧倒的スピードで高校にギリギリ遅刻をせずに到着するも残酷な映画の暗示の恐怖と救いの暗示の走りによるめまいのダブルパンチで体調不良を訴え保健室のベッドに寝ていた。
「マスターの人〜、起きて〜。ふ〜」
可愛らしい声で耳元に息を吹かれ、思わず叫びを上げながら起き上がる。
そこにいたのは死んだはずの支配者の暗示だった。
「あなたやられたんじゃあ?」
「それは違う支配者の暗示だよ〜。それよりこれ、あなたにプレゼント〜」
彼女に渡されたプレゼント、それは〈残酷な映画の殺人〉と書かれたライトノベル。
それに対して動揺で手が震える。
「どうして私にあんな奴のマスターにならなきゃならないの?」
「だってあなたは図書館で救いの暗示を助けた。きっと残酷な映画の暗示も報われるはずだよ〜。あっこれ返却効かないからそこんところよろしく〜」
「えっ、ちょ…………」
続きを言おうとした時には「じゃあね〜」と次元の裂け目を開き、消えてしまった。
「ヒグラシさん? どうかされました?」
保健室の女性教師の質問に、「すいません。もう出ます」と体調が優れないままフラフラと教室に戻るのだった。




