第19話 想いとは裏腹に
中古ゲームを買った帰宅中に黒ずくめの男が兵士を消滅させたところを偶然見てしまったコサメは、恐怖で息を荒げながら逃げ出す。
「電撃の暗示、破壊の暗示、私怖い。どうしていつも人が目の前で死んじゃうの?」
彼女の質問に、2人の親友は口ごもる。
その時だった。
減少の暗示のマスター、ケンイチとすれ違う。
『パパ、主人公の気配があのお姉さんからします』
「そうか、パパは仕事があるから、主人公狩りは頼んだよ」
『分かりましたパパ』
〈減少の殺人〉を会社のカバンから取り出そうとする。
「手を上げろ、主人公のマスター」
アサルトライフルの銃口をケンイチに向ける軍勢の暗示の3人。
指示通り手を上げると、ふと彼は今日のニュースを思い出す。
(そう言えば朝のニュースで言ってたな。自衛隊が主人公の駆除に乗り出したって)
この状況にも冷静な彼だが、娘同然の減少の暗示を殺させるわけにはいかない。
『コサメ! 主人公同士が戦ってる! 止めないと!』
電撃の暗示は支配者の暗示から命令された行動をとる。
もしこれをしなければなにをされるか分からないからだ。
しかしコサメは聞く耳を持たず、全速力で逃走しようとする。
『コサメ!』
「殺し合いなんて私は望んでない。電撃の暗示にも破壊の暗示にも戦ってほしくないから」
2人と仲良く一緒に居られればそれでいい。
死んでほしくないと願い続ける。
それがなんで間違っているというのか。
だがそんな考えを否定するように店の屋根で銃の暗示が膝をつきながらコサメにスナイパーライフルで狙いを定める。
「あの役立たず共には頼らねぇ。さっさと終わらせるかぁ」
引き鉄を弾こうとした次の瞬間。
後ろから銃声が聞こえ、背中から激痛が走る。
「グハ…………」
後ろを振り返ると、軍勢の暗示の1人がアサルトライフルを構えていた。
「どこを狙ってる…………俺は…………」
続きを言おうした銃の暗示に対して、容赦なく銃弾が右足に撃ち込まれる。
『我々は主人公を排除しろと命じられた。仲間にしろとは言われていない」
アサルトライフルを彼の腹に向けて連射するもブックエスケープを使用され、逃走された。
「まだ主人公の気配がする。警戒を怠るな』
全員に連絡される仲間の声。
と、銃の暗示が銃口を向けていた方向を確認する。
「主人公の気配がする女子高生を発見。2冊持っているようだ。近くにいる軍勢の暗示は直ちに始末せよ」
連絡を終え、アサルトライフルを次元の裂け目に収納し、店の屋根から飛び降り、足の裏から着地するのだった。
一方その頃、自宅に帰ろうとするコサメに軍勢の暗示5人はアサルトライフルの銃口を向けながら追い回していた。
どこに逃げようと主人公のマスターである限り、死ぬまで追い続ける。
とうとう追いつかれてしまい、彼女はついに窮地に立たされ、とっさに電撃の暗示と破壊の暗示を召喚し、身を固める。
「主人公の出現を確認。これより排除を行う」
一斉に銃口を2人に向けるが、突然アサルトライフルが粉砕され、地面に散らばった。
「コサメをよくもまあ追いかけ回してくれたな」
「覚悟してもらうよ」
透明なケーブルから電気を拳と足に伝達され、電撃の暗示は軍勢の暗示達に向けて放電を繰り出す。
灼き焦げ、消し炭になる兵士達2人。
「次は俺の番だ」
今度は破壊の暗示が意味である〈すべての破壊者〉を発動する。
なんと軍勢の暗示が次々と崩れ落ちる。
「今お前達から、〈命〉を破壊した」
命を奪われた彼らを見て、コサメはその現場に青ざめる。
そして親友に戦ってほしくないという願望が一気に消え去るのだった。
「ねえねえマスター。最近主人公の争いが私含めて48人いても絶えないんだけど〜」
支配者の暗示はマスターである管理人にムスッとした表情を浮かべると、彼は「大丈夫だよ。これも想定内だ」自信有り気に4冊のライトノベルをデスクに並べた。
「それなに〜?」
「これは主人公を超えた存在、究極の主人公が召喚できる殺人シリーズ。〈魂の殺人〉、〈召喚の殺人〉、存在を消されていた〈炎の殺人〉の強化版〈炎魔人の殺人〉と〈剣の殺人〉の強化版〈剣豪の殺人〉。彼らには支配者の暗示と協力してもらうように指示してある。頼んだよ」
「分かったよマスタ〜。任せておいて〜」
サムズアップする彼女の可愛さに見惚れながら、4冊から究極の主人公を召喚する。
「さあみんな〜、行くよ〜!」
「「「「おー!!!」」」」
4人は一斉に支配者の暗示の次元の裂け目からさまざまな箇所へ移動するのだった。




