第18話 情報変更
警察官の遺体を担ぎ、黒き戦士は弟の事を拒絶するノゾミを見て、ため息を吐く。
「ノゾミさんがセイギ君の事を毛嫌いしている理由までは知らないが、あの子は確かに狂ってる。俺と同じでな」
彼女がどうしてセイギの事をなぜ嫌うのか。
あれは20歳になった頃、4歳のセイギが保育所であまりにも非常識なことをするために姉である自分に被害が降りかかる。
突然他の幼児に暴力を振るったり、砂をポケットに詰めていたり、それに対して親は厳しく叱っていたが、そんな物は彼にとって言語配列でしかない。
なぜなら自分にとってそれは正義感で行ったことなのだから。
邪魔で仕方なかった。
セイギが問題を起こす度に保育所に呼び出される。
その都度関係ない自分に厳しい言葉を掛けられ、セイギは責任などまったく感じていない表情が苛立たせた。
ノゾミは怒りを抑えるため歯をくいしばった後、呼吸を整える。
「あいつがいなければ私はあんな目にあってない。あの身勝手なあいつのせいで親がどれほど苦労していることも知らないで」
「だから偽りのない情報を流し続けている。だがそれは警察にとって都合が悪いことだ。あんたも世間の目には気をつけろよ。じゃあな」
彼女に注意をし、黒き戦士は高く飛び上がり、ビルの屋上に飛び移ると、姿を消した。
「私はあなたみたいにセイギを受け入れられない。他人であるあなたみたいにはね」
独り言を口にするノゾミに夕暮れの空はなにも答えてはくれない。
緊張が解け、喉が一気に乾いたので、バッグから喉飴が入ったビニール袋を取り出し、喉の痛みに耐え、右手で1つ掴み、包を開けると、口に放り込んだ。
テレビ局内に戻ると、仕事仲間達が心配した様子で集まって来た。
「ヤマダさん大丈夫ですか?」
後輩の男性に声を掛けられ、苦笑いで口を開く。
「大丈夫大丈夫、なんかの手違いだったみたい」
そうウソを吐いたが、長く突き通すことはできないだろう。
なぜなら外にはパトカーがあるのだから。
帰宅時間になったのは深夜0時の頃。
警察が集まっていると思いビクビクしながらアスファルトの道を歩き、再度確認すると、そこにパトカーはなかった。
「ウソ。確かここにパトカーがあったはず」
しかも警察の気配がまったくない。
「情報の暗示、もしかしてあなたが?」
「情報を書き換えることは可能だ。政府はマスター達の番組を全面的に支援するようにとな」
確かに 情報の暗示の力なら情報を改ざんなど容易いことだ。
だがそれに対して彼女は自分の理念に反することをされ、怒りで歯をくいしばる。
あくまで情報を伝えるだけで良かった。
人に影響を与えることはしたくなかった。
それに反して情報の暗示は不思議そうに「うん?」と声を漏らす。
「だがパトカーは退かしてはいない。しかも主人公の気配が薄っすら残っている。つまり我々の情報を欲している主人公とそのマスターがいることになる」
話を聞きながらノゾミはテレビ局を出ると、自分の住む一軒家に帰るため、駅に向かう。
「マスターによって主人公の扱い方が違う、まったくいやになっちゃう」
しかし次の日、全国の自衛隊が主人公を駆除するために動き出した。
これも情報の暗示の意味がもたらした政府の意向変更による物だ。
その際持ち入れられたのは同じく主人公の軍勢の暗示だった。
兵士の格好をした彼ら、彼女らはステータスがすべてCであり平均なものの、人に溶け込むことができるほど日本人に近い顔立ちをしている。
なおかつ軍勢の暗示同士で通信機なしでも遠距離の会話が可能である。
そんな者達を取り仕切るのは、若くして指揮官になった女性、サイバレンコだ。
長い茶髪をゴムで結んでいる彼女は、軍勢の暗示に命令を下す。
「我々軍人は国を守るためにここにいる。全員、全力で主人公を排除しに向かえ」
レンコの命令に勢いよく軍勢の暗示達は敬礼し、移動を開始した。
バラバラに行動し始め、主人公の気配を確認する。
しかし世間の目からは不愉快極まりない物だ。
兵士がうろついているなんて物騒な時代なった物だと思える。
そんな中、男性の1人の軍勢の暗示 が少年から気配を感じ、距離を取り始める。
「主人公の気配が少年から出ている。近くの軍勢の暗示はこちらに向かってくれ」
連絡した後目の前には黒ずくめの巨体の仮面を付けた男が立っていた。
主人公の気配がムンムンとする彼に、「お前を排除する!」と気合を入れて拳を作り、走り出す。
しかしバックステップしつつ、黒ずくめの男は次元の裂け目から手早くスマホを取り出し、ゲームアプリを起動する。
するとスマホが肉体に取り込まれ、カードが3枚表向きに展開される。
「私のターン」
ガスマスクでも付けているのか、ドスが入った男の声がこもっている。
カードが1枚が引かれ、4枚になる。
「私は〈指揮官出撃命令〉をプレイ、ランダムな指揮官を手札に加える」
手札を交換し、主人公はターンを終了する。
「さあ、お前のターンだ」
そんな言葉を無視し、殴り掛かる軍勢の暗示。
この時は思っていなかった。
相手にしてはいけない者だったということを。
「ギャーーーーー!!!」
敗北した彼は消滅し、それに対して「良い勝負だった」と言ってマスターの元へ戻ろうとする。
だが軍勢の暗示が3人現れ、アサルトライフルを構え、正確に銃弾を連射していく。
「私は〈バーサークガーディアン〉をプレイ」
その発言に巨大な鎧を身に付けた剣と盾を持ったケンタウロスが現れ、銃弾を防ぐのだった。




