第17話 真実を告げる者
ドラゴン、2人の戦士、どう観てもありえない状況が監視カメラに録画されている。
「これどう報告する?」
「いやいや、こんなもん報告できる訳ないだろう。もしこれを観せてみろ。激怒されるは笑いのネタにされるは、どっちにしろこれは隠蔽するしかない」
警察においてこの様な事件は世間に知られるのは困るのだ。
なぜなら怪物がこの世に存在すると言う事実が広まれば自衛隊が出動し、国民に理由を問われた際の言い訳を上司や自衛官が行う。
そこまでの大ごとになるのは避けなければならない。
もし自衛隊が怪物に負けた時、それは日本の負けなのだ。
特殊部隊など日本には存在しない。
ロボット兵器なんてある訳がない。
そう、国民はただ偽りの日常を過ごしていれば良いのだ。
「じゃあこれは回収して誰も観ないように保管庫に送っておくか」
「そうだな」
警察官はUSBメモリをパソコンに刺し、映像をコピー、胸ポケットに入れると、残った映像を削除するのだった。
一方その頃、シゲルと別れ、帰宅したセイギは正義の暗示の事が心配で風呂に入っても落ち着かなかった。
「正義の暗示、君の戦い方は俺が好きな特撮のヒーロー達によく似ている。だからこそ戦術が読まれやすい。それぐらい理解してるよ。どうすれば良いのかなぁ?」
主人公との戦闘はあまりに不得意な彼だが、意味には〈悪の絶対排除〉と言う物がある。
その内容は悪のレベルが確認できるだけではなく、その度合いに応じてパワーが上がると言うもの。
主人公達の悪のレベルはAからA+++であり、勝つことは造作もないはずなのだが。
「パワーだけじゃダメなんだ。戦い方を変えないと」
風呂から上がり、タオルで体で拭き、パジャマに着替えると、リビングに向かった。
するとリビングのテレビに映っていたものに絶句する。
なんとそこには放出の暗示、変身の暗示、そして正義の暗示の戦闘がニュースに取り上げられていた。
(ウソでしょ。いや、よく考えろ。こんな映像誰が信じるもんか)
どこから映像が撮られていたかは知らないが、真面目に内容を説明しているキャスターに一種の恐怖を覚える。
このチャンネルのニュース番組であるシンジツと言う番組はかなり危ない橋を渡っているように観える。
なぜなら主人公の事件をいつも当然の様に流しているからだ。
視聴率もあまり伸びていないらしいのだが、後番組が中々放送されない。
「セイギ、ごはんできるから座ってー」
「はーい」
母の指示に従い、イスに座り、ニュースを見ながら食事の時間にウキウキし、足をばたつかせ、食事を待つのだった。
ここはシンジツの放送局。
このニュース担当の短く切られた黒髪の30代女性は番組に対して熱心に取り組んでいる。
そう、主人公の力を借りてもだ。
「どう情報の暗示、ニュースになりそうな情報は仕入れてきた?」
『あぁ、全世界の裏情報を集めることなど容易いことだ』
〈情報の殺人〉から流れてくる主人公の声。
それをあたかもスマホで聞いているようにマイクに口元を近づける演技をする。
今まで隠されてきた情報を流すことで、政府に狙われていることは知っている。
映像として残っているのは情報の暗示の意味の1つ〈映像漏洩〉があるから。
〈映像漏洩〉とは本来殺したい相手の情報を映像化し、マスターに伝える能力。
それを利用して女性は真実を伝えるため情報の暗示に情報を集めさせている。
『マスター、明日の分の映像と情報がある。パソコンに転送しておいたから後で確認してくれ』
「分かった。編集に送っておく。ありがとね、あなたにはとても感謝してる」
『主人公はマスターに従う。それぐらい当然の事だ。では話はここまでにしよう。存分に仕事をしろ』
そう言って情報の暗示は口を閉ざすと、女性はスマホをバッグにしまい、放映されているニュースを確認しながら、自分の入れたコップ1杯の水を一気に飲む。
この番組によって取り上げられたニュースは事実を語っている。
しかしあまり観られていないのが現状なのだが、それでも伝えられる権利がある。
それだけでもこの仕事に生きがいを感じている。
(さて、私もこの放送を見届けないと)
キャスター達が映し出されている3画面を見つめていると、突然出入り口が開かれ、警察官2人が焦った様子で入ってくる。
「今すぐ放送を止めろ! これ以上情報を流すな!」
「お前達のせいで隠し通してきたものが台無しだ! 適任者であるお前を逮捕する!」
取り押さえようと小走りで近づいてくる2人に、彼女は大人しく捕まる。
ここで情報の暗示を出せば、仕事仲間に化け物使いであると思われてしまう。
それは社会的に破滅することを意味した。
いや、警察に捕まった時点で破滅しているのは確実だろう。
手錠を掛けられ、パトカーまで運ばれる。
その時だった。
なんとニュースで映像に出ていた黒き戦士が現れ、警察官2人の頭を殴り、殺害した。
「あっ、あなたは…………」
「通りすがりの世話焼きだ。あんたには俺と近いものを感じたもんでなぁ。つい助けちまった」
黒き戦士は女性の手錠の鎖を引きちぎり、さらに輪を力任せに引っ張って破壊する。
パトカーから降りると、情報通りの者の姿に驚きもない。
「あんたの情報は頭に入ってる。名前はヤマダノゾミ。セイギ君の姉であり、ここのテレビ局のニュース番組、シンジツのプロデューサーである。そして主人公のマスターであることも知ってる」
自分を知りすぎている黒き戦士に驚き、表情を歪ませるノゾミと言われた女性。
「どうしてセイギの事を?」
その声のトーンは驚きと言うよりも、セイギの存在を拒否しているように聞こえる。
「ノゾミさん。あんたは知っているはずだ。自分の弟のやっている重罪。俺のやっている重罪。とかなぁ」
追い詰めるように発言を繰り出す黒き戦士に、彼女は相手の情報を知っているからこそ、情報の暗示を出すのをためらうのだった。




