第16話 協力の先に
「さあ2人とも、ボケっとしないでこいつを倒すぞ」
シゲルは変身の暗示の声に唖然としているセイギと正義の暗示に指を指した後、膝を折り曲げ、左手を拳にしながらバキバキと指を鳴らすと、放出の暗示に向かって足を踏みしめ、走り出す。
(この動きからして接近戦タイプ、ならば!)
翼を広げ、高く飛び上がると 放出の暗示は光線を放つため、光を口に貯める。
「シューティングシルバー!」
正義の暗示は右手をベルトのスクリュー部分にかざすと、銀色のビームガンであるシューティングシルバーを取り出し、放出の暗示に狙いを定める。
トリガーを連続で弾き、ビームが連射される。
巨大な体を持つドラゴンには到底避けることはできず、翼に風穴が次々と開く。
黒き血の雨を降らさせられながら彼は急落下し、地面に叩きつけられた。
ベルトのスクリュー部分にシューティングシルバーを収納し、正義の暗示は左サイドスイッチを叩く。
エネルギーが左足に伝達され、右足をバネに高く飛び上がる。
「お前の敗因はただ1つ、それはスナイパーの如く遠距離攻撃を仕掛けなかったことだ」
怯んでいる放出の暗示にドロップキックを仕掛けた。
「ジャスティスキーーーーーーック!!!」
(お前達は我の意味を忘れているな)
左足が体に直撃すると思われたその時だった。
「甘い!」
なんと全身から光線が乱れ撃ちされ、正義の暗示の全身を貫いた。
「正義の暗示!?」
セイギは相棒の傷つく姿に、動揺と戸惑いで思わず名を叫ぶ。
「セイギ君危ない!」
右足を踏みしめ、シゲルは全速力で彼の元へ向かい、抱きかかえて光線をギリギリで躱した。
「我の意味の中に龍の姿をした兵器と言う物が存在することを、説明はしたはずなのだがなぁ」
拡散する光線が撃ち終わり、ドラゴンの真の姿が露わになる。
その姿は元の龍の姿とは異なり、機械仕掛けとなっていて、大量の銃口がむき出しになっている。
黒きボディパーツから漆黒の血ではなくオイルが滴り落ち、地面を汚す。
「翼など戦闘には不必要だ。むしろ邪魔だったので感謝するぞ。フハハハ!!!」
高笑いを上げる放出の暗示に、正義の暗示の体がピクリと動き出し、ゆっくりと立ち上がる。
「お前は……俺が倒す……」
「フン、その傷だらけの体でなにができる?」
風穴だらけの戦士を、鼻で笑うと、全身の銃口から光線を放ち始める。
シューティングシルバーをスクリュー部分から取り出し、シゲルに投げ渡す。
「スピード…………アップ…………」
右サイドスイッチを叩くと、足の血管が浮き出てくる。
砂埃を立てながら一気に加速し、左サイドスイッチを3回叩く。
3回次々とエネルギーが左足に伝達され、高く飛び上がる。
無防備なドロップキックの体勢に入った。
「無謀で同じ攻撃が通じると思うな!」
光線が乱射される中、ここまで血迷った攻撃を仕掛けるとは、そう思った時、正義の暗示の思惑が成立する。
なんとあらん方向から撃ち出されるビーム弾が、放出の暗示の頭を貫いた。
(なっ、なにーーー!?)
相手は1人ではない、2人である。
そんなことは理解している。
問題はこの光線の雨あられを躱しながら頭を正確に狙うのは不可能に近い。
なのになぜ。
(これはブックエスケープを使うしかない!)
意識が朦朧とする中、彼はブックエスケープを使用し、この場から消えた。
再び空振りに終わった攻撃に左足から着地した正義の暗示はトドメをさせなかったことに不甲斐なさと情けなさを感じ〈不安定〉が発動する。
咆哮を上げ、首を何回も回す。
「俺は……俺は! ウワーーーーーー!!!」
公園に残る爪痕。
ゲームで遊んでいた子ども達の遺体、ジュースが噴き出す自販機、焼け落ちた遊具、その光景を見たシゲルはシューティングシルバーを持つ右手をぶらんと力を抜き、変身を解除すると、現状を整理する。
「セイギ君、とりあえず警察に来られる前に正義の暗示を戻した方が良い」
「分かりました」
狂った様子の 正義の暗示を〈正義の殺人〉にセイギは戻し、2人でその場を逃走するのだった。
数分後、パトカーが5台到着し、警察官達は公園を橙色と黒の危険を示すビニールテープで包囲する。
「これはまた不可解な現場だなぁ」
この惨劇を「不可解」と言ってしまうあたり、一連の事件を見慣れてしまったのを警察官は感じてしまう。
「監視カメラを観てみるか、なにか手がかりがあるかもしれない」
監視カメラの映像を確認できるように管理人に許可をもらい、管理室の鍵を開けてもらう。
記録映像を巻き戻すと、とんでもないものが映っていた。
「なんだこれは。CGじゃないよな」
そこには機械仕掛けのドラゴンと特撮でいそうなスーツを着た者達が戦っているのが録画されていたのだった。




