【番外編】前世:白井夏美の嫉妬(7)
夏美は翌日教室で、ある女子生徒から話し掛けられた。
亮介が米国に行っている間に静子と少し仲良くなっていた真中結子だ。
「ねえ、白井さん。昨日の放課後、山下さんと会ってたわよね?」
「えっ!?」
しまった!
まさか、真中さんに見られてたなんてっ!
夏美はどうにか誤魔化そうと考えたが、
真中に真っ直ぐな目で見据えられ、思わず狼狽した。
「山下さんが学院近くの公園から出て来たから、
懐かしくて追いかけたんだけど、途中で見失ったの。
その後にあなたが公園から出て来たわ……びっくりするような笑顔で」
「!!」
「異様だった……あなたのあの笑顔。
青白い顔の山下さんとは全く正反対だった。
あなた、山下さんに何を言ったの!?」
ガラガラッと教室の扉が開いた。
そこには亮介が立っていた。
「……おい。何の話だ…?山下って、静子のことだよな?
……お前、どういうことだ?」
目の下に隈ができ、窶れて明らかに顔色が悪い亮介は、夏美を睨み付けながらフラフラと近付いた。
夏美は恐怖で足が竦み、声が出ない。
「あっ、あの、それ、は…」
「静子と会ったのか?」
「……」
「言えよっ!話せっ!!」
「きゃー!」
「乾くんっ!」
亮介は夏美を思い切り睨み付けながら、
夏美の制服の襟首を強く捻り上げた。
「くっ、苦しいっ!」
「おい。早く言え。言わないと俺はお前を殺す。本気だ」
「ひぃっ!……っく……言いま、す!」
亮介は夏美から乱暴に手を離した。
ガタガタ震えながら、夏美は話した。
「き、昨日、いきなり、下校途中に、は、話し掛けられて、公園で話し、ました」
「何を話した」
「…っ!」
「白井さん!全て言いなさいよっ!」
「……」
夏美は『全て隠蔽していた』と言うと、亮介に殺されると思った。
恐ろしくて何も言えず、震えながら俯いた。
ガンッ!!!
「きゃー!」
亮介が机を蹴り倒した。