【番外編】美久子 学院祭 高校生編(27) 葉月と流青(6)
「ちょ、ちょっと、待ってください!
乾先輩っ!紙袋、返してください!お願いしますっ!」
「いいから。これは俺がクリーニングをして君に返す」
「はっ!?いやっ、それは無理です!絶対無理ですっ!」
歩きながら必死になって紙袋を取り返そうとするが、
流青は葉月と反対側の手で紙袋を高い位置に持ち上げるから全く届かない。
なんで、自分の汚れた制服を乾先輩にクリーニングしてもらわなきゃいけないのー!?
そんなのありえない!恥ずかしさの極みだ!
絶対に嫌!無理だー!!
葉月がぴょんぴょん飛び上がりながら紙袋を取り返そうとしても、
涼しい顔で流青は阻止する。
とうとう涙目になって葉月は流青に訴えた。
「乾先輩!もう、ほんっとに勘弁してくださいっ!
ほんっとに無理です!返してくださいっ!
こんなの、せ、セクハラ、ですよっ!」
流青がピタッと止まり、葉月を見下ろした。
葉月も両手を上げたまま流青を見上げて、固まった。
ばっちりと目が合った。
「ぶふっ!!」
「!?」
「……勘弁、……セクハラ、……ククッ!」
「!!?」
流青が空いている手の拳を口に当てて笑っていた。
「!!」
「そうだな、悪かった。
いくら何でも女子の制服を持って帰ったら駄目だな。
確かに完全にセクハラだ。ククッ!」
葉月はもう、流青から目が離せなかった。
恐ろしい程整った顔の流青が、
笑った顔を初めて見て、
胸の辺りがきゅっとした。
葉月は自分が恋に落ちたことを、
素直に認めるしかなかった。
絶対に叶わない恋を。
「これはとりあえず返す。本当にすまなかった」
流青から制服が入った紙袋を渡され、
少し寂しく思ってしまった。
さっきまであんなに返して欲しいと思っていたのに。
「ありがとう、ございます」
流青は頷き、少し周りを見回した。
周りには色々なクラブの出店が出ている。
ぼーっと流青を見つめていると、
流青の目線がある一点で止まった。
「……有沢は、ぬいぐるみは好きか?」
「え?ぬいぐるみ、ですか?……はい、まあ」
「そうか。ちょっと来い」
葉月は流青に言われるがまま、後を付いていった。




