【番外編】美久子 学院祭 高校生編(16) バスケ部 コスプレカフェにて(8)
恵と七海は美少女オーラを振りまきながら
笑顔で『ごちそうさまでしたー』と、
赤面するバスケ部員達にお礼を言い、
颯爽とコスプレカフェを出て行ってしまった。
美久子は二人を追い掛けようと慌てて立ち上ろうとしたが、
流青にがっつりと腰を抱かれて駄目だった。
「「「「「「!!(きゃー!!)」」」」」」
「美久子。もう少しゆっくり出来るな」
「……はい。でも、いいの?滞在時間30分って決められてる、よね?」
「ああ、もちろん大丈夫だ。俺は昼休憩無しにするから」
「ええっ!?そんな!ダメだよ、ちゃんと休憩取らなきゃ!」
「今、この時間が俺に取っては究極の休憩だな。本当に癒される……」
流青はそれはそれは嬉しそうに美久子を見つめ、
そのままいつものように膝抱っこをしようとしたところで、
美久子にペチッと腕を叩かれた。
「ダメだよ、流青くん!人前だよっ」
「……わかった」
少しムッと口を尖らせながら、
流青は姿勢を正して椅子に座り直した。
すると、流青の目の前にジュースのストローが見えた。
「?」
「……あーんはダメだけど、ジュースで我慢、してね?」
「っ!……(俺の美久子可愛すぎるだろう。本気で他のヤツに狙われる。早く食べてしまわなくては。もう我慢の限界が近い。美久子は本気で俺をコロスつもりだな。まあ、美久子にはコロされたって良い。既にコロされているも同然だ。むしろ本望だ)」
頭の中は煩悩とちょっぴり変態的思考で溢れかえっていた流青だが、見た目は安定の完璧クール美男子だった。
流青は嬉しそうにはにかんだ笑顔で頷き、
美久子の差し出したストローでジュースを飲んだ。
「「「「「「!(きゃー!)」」」」」」
美久子は頬を赤らめながら、流青を見つめていた。
その様子をバスケ部員達は、
アゴが外れそうな表情で食い入るように見ていた。
バスケ部員にとって、乾 流青は完璧超人だ。
NBAも本気でやれば狙えそうな流青になら、
プレーを厳しく指摘されても心から納得出来る。
普段は超絶クールだが、たまに笑うこともある。
けれど、こんなに嬉しそうにはにかむ笑顔なんて誰も見たことがない。
これはヤバい。男でも惚れそうなレベルだ。
「……俺、今、人生で滅多に見れない、
めちゃくちゃ貴重な場面を見てる気がする……」
「「「俺も!」」」
「アノ、流青の彼女、スゲー……」
「「「うんうん!」」」
「猛獣使いならぬ、超絶クール美男子使い、だな」
「「「だな!!」」」
皆、美久子を心から尊敬の眼差しで見ていた。
「美久子、ジュースのおかわりを持ってくる。少し待ってて」
「うん。ありがとう」
流青は立ち上がり、
指先で美久子の左のえくぼをスッと撫でて、
バックヤードに行った。
「「「「「「!!(きゃー!!)」」」」」」
「……もう。ほんとに」
美久子は一瞬で赤くなった顔を隠すように俯いて、
一人で耐えていた。
「大丈夫?宇佐美さん」
いきなり女性の声がして見上げると、
ピーターパン姿の江川実希子が立っていた。




