【番外編】美久子 学院祭 高校生編(12) バスケ部 コスプレカフェにて(4)
「「「いらっしゃいませー!!!」」」
流青に窓際奥の4人席に案内(引き摺られ座ら)された美久子達は、バスケ部員の興味津々な目線と、お客さん女子達からの熱く冷たい視線をこれでもかっ!と浴びていた。
七海と恵は『すごーい!内装、凝ってるねー』とか、
『コスプレ、なかなか良いレベルに仕上がってるわね!』と、
のんきに周りを見渡していた。
美久子は一人、背中に汗をダラダラかきながら俯き加減でテーブルクロスを見つめていた。
着物の中の長襦袢は大量の汗で大変なことになっているだろう。
しかし、冷や汗の理由は周りの熱く冷たい目線のせいだけでは無かった。
「……美久子。何故こっちを向いてくれないんだ?」
美久子の隣に座った流青はテーブルに肘を付いて、
迷子の子犬(実物は大型犬)の様な哀しい目で美久子をじっと見つめていた。
流青の身体は完全に美久子に向いている。
椅子もほぼ真横に寄せている。
相変わらず卑怯な手口を使う流青だ。
美久子はさっき廊下で書生風姿の流青を見た瞬間、
完全にハートを撃ち抜かれた。
実は和装男子好きな美久子のモロ理想の姿形の流青に、
再び恋に落ちた気分だ。
前世を合わせたら三度目だ。もう、落ちまくりだ。
急に何だかとてつもなく恥ずかしくなってしまい、
まともに流青と目を合わせられなくなった。
七海と恵はニヤニヤしている。
「この格好、合ってないか?」
「ええっ!そ、そんなこと無いよ!凄く似合ってる!」
「でも、さっきから美久子と全然目が合わない。淋しい。
こっち見て、美久子」
「美久!見れない理由、言ってあげたら?ふふっ!」
「ええっ!?そんな!……えっと……流青くんが、
すごく格好良すぎて、まともに見れない、です……」
「そうか!よかった」
流青は美久子に格好良いと言ってもらい、
とても嬉しくなってにっこりと笑った。
「「「「「!!(きゃー!笑ってるー!格好いいー!)」」」」」
流青は机の下で、美久子の手をそっと握った。
「っ!?」
「美久子が着物を着ると言っていたから、
俺もこれを選んだんだ。着物ペアルックだろ?」
机の下で握っていた手をゆっくりと机の上に持ち上げた流青は、美久子の目を見ながら手の甲にちゅっとキスをした。
「「「「「きゃー!!!!」」」」」
「ぎゃー!!流青くんっ!な、何するのっ」
「乾くん。はい、はしゃがないー」
「もー、またムダに敵を増やしたらダメだよー」
「大丈夫だ。牽制になる」
「……さっき、廊下で並んでいる女子達からすっごく睨まれたんですけど?今も睨まれてますけど?」
「わかっている。大丈夫だ」
流青は何か手立てがあるらしい。
さすが、流青くんだなーと思いながら、
美久子は必死に握られている手を離そうと藻掻いていた。
「乾くーん!1番さん、準備OKでーす!」
呼ばれた流青は「少しだけ待っててくれ」と名残惜しく離した手で美久子の頬をスッとなぞり、バックヤードに入って行った。
「「「「「(きゃー!ほっぺた触ったー!!)」」」」」
「……あれは、無自覚タラシだねー」
「あ!七海もそう思った?」
「思った思った!」
「……もう、あかん……」




