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【番外編】美久子 学院祭 高校生編(4)   流青、お茶室までも付き添いたい

美久子は流青に心持ち引き摺られながら、お茶室に着いた。

お茶室前には既に看板や赤い野点傘(のだてがさ)

緋毛氈(ひもうせん)を敷いた白竹製座机(すわりづくえ)も出ていて準備が進んでいた。

着物を着た何人かの茶道部員が流青と美久子を見ると、

目を丸くして固まった。



「「「「「!(きゃー!!乾流青くんだっ!本物だー!)」」」」」



みんな、キラキラした目でガン見している。

美久子はもう誤魔化せなかった。



「うっ。……流青くん、ありがと。

本当にもうここで、大丈夫だよ(頼むから、早くコスプレカフェに行ってー!みんな見てるー)」

「美久子、ここが茶室で……準備は何処でするんだ?」

「……その(ふすま)の奥の水屋です……(もうダメだ。誤魔化せない。こりゃあかん)」

「そうか。一橋さんに、警備の人数が足りるか至急確認しないと……。俺も後で美久子のお点前(てまえ)を見に来るから。

で。何で敬語なんだ?いつもの様に喋らないと、ここでキスするぞ」



流青が顔を近付けて、美久子の耳元で囁いた。



「ひえっ!?」

「「「「「!!(きゃー!!頬にキスしたっ!?)」」」」」



見る角度によっては、頬辺りにキスをしたように見えた。

比較的大人しい女子が多い茶道部員達だが、

心の中は乱痴気騒(らんちきさわ)ぎで、それはもう大変だった。

実はハーレクイン好きな先生も、目をキラッキラさせている。



な、な、何てことをしてくれるんだ!

傾国の美男子っ!

絶対ワザとだっ!!



囁かれた耳を押さえながら、美久子は顔を真っ赤にしながら流青をキッと睨んだ。

『睨んだ顔も可愛すぎるだろ俺の美久子もうどうしてくれよう俺の女神このまま攫いたい』な気持ちを我慢した流青は、

溶けそうな笑顔で美久子を見つめた。



「「「「「!!(きゃー!殺人スマイルー!)」」」」」


「美久子、いいか?変な野郎が来ても無視するんだぞ。

野郎どもが長居するようなら、

お点前だからとしっかり正座させて、

すぐに一橋さん達に言うんだぞ。

そいつらが足が痺れた状態で、

一橋さん達が追い払ってくれるからな」



何かスゴい作戦っぽいけど、一橋さんが笑ってるよー。

それに、お茶席には多分、男子はほぼ来ないよ!

来ても、ちょっと乙女な男子だよ。

ご年配のマダムか、和菓子好きな女子ばっかりだよ。

だから茶道部の女子も先生も流青くんの出現に、

完全にテンションがおかしい。

気持ちは重々わかるけれども!



「わ、わかった。流青くん、ありがとう。

ああっ!ほんとにもうそろそろ時間だねっ!

コスプレカフェに遅れちゃうよ。

後で行くからね。流青くんもがんばってね!」

「……後で。必ず来て。待ってる」

「「「「「!!(きゃー!実は甘えん坊!?萌える…)」」」」」

「……はい。後でね」



流青は一橋と話をした後、

名残惜しそうに何度か振り返りながら去って行った。

美久子はその後、茶道部員と顧問の先生に会場ギリギリまでがっつり質問されて、本当にぐったりと疲れた。


フラフラな美久子はその後気合いで唐物(からもの)のお点前を披露し、お客様をもてなした。

後は裏方でお茶を点てまくった。

一服300円のお茶席はなかなか盛況で、

お茶菓子が切れかけて1年生部員が買い出しに走った程だった。


あっという間に時間は過ぎた。

10時半過ぎにきのぴいと七海がお茶室に迎えに来て、

二人にお茶を一服飲んでもらった後、

少し他の出し物を周りながら流青のコスプレカフェに向かった。




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