【番外編】美久子 流青のバスケの試合を観に行く 高校生編(21)
「美久子……俺…色々、気付かなさすぎて、悲しい思いをさせて、
本当に、すまなかった」
流青はまだ美久子を抱き締めたまま、
叱られた大型犬のように美久子の肩に頭を乗せて項垂れていた。
「……もしかして、さっきの、聞いてた?」
「っ!……うん。聞いてた」
「!?……どこから?」
「ほぼ、初めから」
「平松さーん!……」
平松は車に美久子と実希子を乗せた後、
急いで流青に電話を掛け、
実希子との車の中のやり取りを全て聞かせていた。
流青は駐車場まで走りながら、ほぼ全て聞いた。
美久子の真の言葉に感動して半分泣きそうになりながら、
部室から全力で走って来た。
「美久子…今も昔も未来も来世も、ずっと一緒にいてくれ」
「!」
「…この前の練習の時、悲しませて、ごめん」
「……」
「俺は美久子だけのもので、美久子は俺だけのものだ」
「……」
「他の女なんて触らせない!
だから、何か考えたりしないで。
執着してて。もっと。俺に、ずっと。」
「……うん…………うん」
美久子は泣きながら何度も頷いた。
ひとしきり泣いた後、
時間が経っていることに慌てた。
「流青くん。もう、本当に時間が無いだろうから早く練習に行って!私はほんとに、もう大丈夫だからね」
「美久子…」
「明日の準決勝、絶対に勝って!
決勝も勝って、WINTER CUPに連れて行って!」
「……分かった。美久子を絶対に連れて行ってやる」
「うん!」
もう一度ぎゅっと美久子を抱き締めた流青は、
また走って体育館に戻って行った。
美久子は平松のいる車に戻って、自宅まで送ってもらった。
「……平松さん。ありがとうございました。
一緒に居てくださって…すごく心強かったです」
「……美久子ちゃん。僕は今日、久しぶりに感動したよ」
「えっ?」
「きっと、これからもこういう事が何度もあるかもしれない。
けど、絶対に流青を一人にしないでやってね」
「……はい!」
「頼むね。本当にありがとう」
「こちらこそ……よろしくお願いします」
美久子と平松はにっこり笑った。
美久子は窓の外を見ながら、
実希子のことを考えていた。
流青くんから婚約者と聞いた時の江川さんは、
すごくショックを受けてた。
流青くんのこと、本気で好きだったんだな……。
高校入学してから、ずっと好きだったんだもんね……。
けど、流青くんのことは誰にも譲れない。
前世の苦しさを思ったら、
今、どんな目に合っても、
流青くんを諦めることなんて絶対に出来ない。
流青くんだけは、絶対に譲れない。




