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【番外編】美久子 流青のバスケの試合を観に行く 高校生編(19)

車に座って暫く経っても、実希子は少し下を向いたまま黙っている。

車の中に沈黙が続く。

美久子は実希子が話しだすまで待っていたが、

このままでは始まらないと思い、思い切って実希子に話し掛けた。



「で、お話しって、何ですか?」

「……」

「……流青くんのこと、ですよね?」

「……そうよ。……私、流青くんが好きなの。

高校に入ってからずっと好きなの」

「…知ってます」

「!……そう。だから」

「好きなのは……人を好きになるのは、

その人の自由だから、良いと思います」

「え?」

「江川さんが流青くんを好きなのはあなたの自由だから、

それで良いと思います」

「…だったら!私に流青くんを譲ってよ!」

「それは無理です。私も流青くんが大好きです」

「はあっ?」

「流青くんも私の事を好きだと言ってくれて、

私達はお付き合いしています」

「だからっ!別れてよ!私も流青くんが好きなの。

流青くんの彼女になりたいの!」

「ごめんなさい。それは無理です。

私は今も昔も未来も来世も、流青くんと一緒にいます。

二人で決めたんです。ずっと一緒にいるって。

江川さんが流青くんのことを好きでいるのは、

江川さんの自由です。

けれど、それ以上は駄目です。ごめんなさい」

「っ!流青くんは、私に笑って話してくれる!

すごく楽しそうに笑ってくれるわ!」

「はい。この前の練習の時に見ました。

二人とも、すごく楽しそうでした。

すごく…うらやましくて、悲しかったです」

「そうよ!流青くんは私といて楽しんでくれた!

バスケの詳しい話も私なら出来る!

なのに!あなたのせいで、

流青くんはこれからは乾と呼べとか、触るなとか…。

優しかったのに…私にだけは笑ってくれてたのに!

私だけは流青くんって呼んでも笑ってくれたのに!!

あなたなんかよりずっと…ずっと前から一緒にいて、

いっぱい笑って、いっぱい悔しい思いも傍で見てきて支えてきたの!

全部あなたのせいよっ!」

「……はい。すみません。でも、無理なんです。ごめんなさい」

「……」

「嫌なんです、やっぱり…。

初めは私の勝手な思いで、

こんな束縛するようなことを言ったら駄目だと思いました。

けれど……すごくすごく苦しかった。

私以外の女性から触られたり、

名前で呼ばれたりするのは、嫌なんです。

私が嫌だと言っても、

それでも流青くんがそれを他の女性に許すなら……

私は、何かを考えないといけないのかもしれません」

「…心が狭いのね!そんなんじゃ、

いつか嫌がられて飽きられて捨てられるわよ!」

「……わかります。それでも、嫌なんです。

私は流青くんだけのもので、

流青くんは……私だけのものです」

「そ、そんなのっ!

流青くんを独り占めして!

流青くんは嫌がるわよっ!

私だけのものって、そんな執着みたいな!」



ガーッ……


後部座席のスライドドアが開いた。



※美久子、がんばりました!!

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