【番外編】美久子 流青のバスケの試合を観に行く 高校生編(15)
「…なんだ、湊人」
ガツッ!
湊人が振り向きざまに流青の頬を殴った。
「っ!?」
「流青、お前、マジでバカだったんだな?」
倒れた流青は湊人に制服のジャケットの胸倉を両手で掴まれ、
上から湊人に思いっ切り睨み付けられた。
「はっ?」
「…お前、何で昨日、うさみみちゃんが気分悪くなって帰ったか知ってる?」
「!?」
「……クラブの休憩中、お前と江川実希子が仲良く笑ってたらしいな。
江川はお前の腕を叩きながら笑ってたらしいじゃないか」
「流青、他の女と笑うくらいならわかる。
だが、お前はうさみみちゃん以外の女と、
えらくスキンシップするんだなー」
「……宇佐美さんはそれを見てショックで顔面蒼白。
倒れそうになった宇佐美さんを、
うちの一橋が抱えて保健室まで連れて行った。
宇佐美さんは一橋に悪いが自宅まで送って欲しいと初めて頼んだそうだ。青白い顔で。全て、一橋から聞いた」
「っ!」
「もしさ。うさみみちゃんが他の男子と仲良さそうに笑いながら身体を叩いて。スキンシップしながらめっちゃ楽しそーに笑ってるの見たら、お前どう?あれー?平気なんだー!」
「っ!!」
「そーいう事だよっ!!」
ガツッ!!
湊人が近くの机を思い切り蹴った。
「流青。お前は、死ぬほどモテる。
そんなの痛いほどわかってんだろ?
なあ?只でさえいつも不安なうさみみちゃんのこと、
どうしてもっと気遣って大切にしてやらねーんだよ?」
「……」
「…ねえ?何で泣かすの?何で平気でいられんの?
お前、うさみみちゃんを幸せにするってうさみみちゃんの両親に約束して婚約したんじゃないのかよ!?何泣かしてんだよっ!」
ガツッ!
「痛っ!!」
今度は湊人が流青に殴られた。
「平気じゃねえっ!!!俺はっ…美久子に、何やってるんだ…」
「じゃあ、やる事はひとつだな」
「……」
「己の不始末で、大事な女を泣かすな」
「!……」
「宇佐美さんは流青が思うよりもずっと、男に好かれる」
「っ!」
「婚約してるからといって、気を抜くな。
あっという間に攫われるぞ」
「……ああ。そうだな。わかった。
……湊人……健二も、すまなかった」
流青は二人に頭を下げて、出て行った。
「……湊人。お前、諦め切れるのか?」
「……ま、最後まで足掻いてみるよ」
「そうか……」
湊人は天井を見上げて、深い溜め息をついた。




