【番外編】美久子 流青のバスケの試合を観に行く 高校生編(13)
その日の昼休み。
美久子達のAクラスにて。
いつもの様に食堂で昼ご飯を食べ終わった流青は、
教室に戻り自席で実希子とバスケ部の練習メニューの話をしていた。
「すごい!さすが流青くんだねー!この時間振りでいこう!」
「ああ、そうだな。これなら上手く進むだろう」
「監督とキャプテンにも伝えるね!」
美久子の席の周りに集まっているいつものメンバーは、
そのやり取りを見ていた。
「……ちょっと。美久」
「んー……」
「アレ、何?」
「うーん…。男子バスケ部のマネージャーさんなんだって」
「Bクラスの江川実希子ちゃんだねー」
「…さすが湊人。よく知ってるじゃない」
「ふふ。まーねー。高校から学院で、
中学校までバスケでかなり頑張ってたみたいだよー」
「…ふーん」
「膝壊して本人は現役退いて、マネージャーするみたいな」
「そーなんだ」
「現役辞めるのは辛かっただろうね…」
「ねえ!アレさ、完全に乾くんをロックオンしてるじゃない」
「っ!…やっぱりそうなんだ…」
「美久、気付いてたの?」
「…うん。昨日、バスケ部の練習見に行って、
多分そうじゃないかなあと思った」
「そっか…」
「流青くん、腕触られても、珍しく嫌がらないのには、
ちょっとびっくりしちゃった」
「「腕触らすー!?」」
「あっ!腕を軽く叩く感じくらいだからね!」
「あー。そーいうパターンね」
「うわー。いるよね、男子にやたらとペチペチ触る子!
俺、あーいうのめっちゃ苦手」
「合コンで女子から嫌われるタイプよね。
乾くんも、何で名前呼ばせてるのよ!?」
「あー、アレね。去年くらいに理由聞いたら、
男バスのマネージャーだから特に気にしてないって、
普通に言ってたよー」
「湊人!それ、去年聞いてたの?」
「まーねー。気になる事は先手打っていかなきゃねー」
「さすがだねー!八木くん!」
「でしょ!七海ちゃん!もっと誉めてー!」
「……特に気にしてない、か……」
「……美久。ほんとは嫌なんでしょ?あのマネージャーの名前呼び」
「え!……うん。ほんとは嫌…だけど、大丈夫。
流青くんがマネージャーだから特に気にしてないって思ってるなら大丈夫」
「婚約者なんだから!我慢しなくていいのよ!」
「!……きのぴい…」
「…私なら、もし、他の女子が健二って、
私と同じように呼び捨てで呼んでたり、
下の名前で呼んでたら……すっごく嫌だわっ!」
「き、きのぴい!」
「恵以外、呼ばせる訳がない」
「…健二……はっ!で!もしもよ!
美久のこと、他の男子が美久子ちゃーんなんて呼んだら、
アノ乾くん、激怒だと思わない!?」
「お、思う」
「ヤバいよねー」
「魔王降臨でしょ。俺、最初うさみみちゃんって呼んだらボコられたもん」
「!?」
「でしょ!?だからよ!
美久が嫌なことは、乾くんにも嫌だって訴えて良いのよ!」
「う、うん」
「そー!そー!美久がそれ言ったら、乾くん超大喜びだよ!小躍りだよ!」
「こ、小躍り!?」
「あははっ!だねー!めっちゃ見てえ!流ちゃんの小躍り!」
「誰の小躍りだ?」
バシッ!
「痛ってー!流ちゃん、頭叩くなよっ!」
「乾くんの小躍りよ」
「は?俺?」
「そー!そー!乾くん、今夜辺り、美久から嬉しいお話しがあるかもねー!」
「何っ!?美久子、何だ!?今、言ってくれ!早く!」
「えっ?今っ?いやっ?えっ?今は、無理ー!」
「「「あはは!」」」
「何だか楽しそう!私も仲間に入れてくれる?」
流青の傍に、実希子が立っていた。




