【番外編】前世:白井夏美の嫉妬(2)
夏美と静子は同じクラスだった。
静子は同性から見ても美しく、色白で、長く艶々とした黒髪が光輝いていた。
生まれながらのお嬢様で、誰にでも優しく楚々とした雰囲気で、男子からはとても人気があったが、かなりの数の女子からは疎まれていた。
静子は女子に絶大な人気のある亮介に大切にされているために、中学の頃から女子には嫌われているという噂を耳にした。
夏美も数少ない外部生のため入学式以降なかなか友達が出来ず、
休み時間も一人だったが、ある日の昼休みに静子が話し掛けてきた。
「あの……よかったら、一緒にお弁当、食べない?」
綺麗な二重の焦げ茶色の瞳にびっしりと長い睫毛が縁取った優しい目で、
遠慮がちに話し掛けてきた静子は本当に可愛らしくて美しかった。
「…うん。ありがとう。…いいの?」
と、夏美が答えると、静子はあどけない笑みを浮かべて「もちろん」と頷いた。
亮介に愛される理由が少しわかった。
家が近所という共通点があり、静子とはすぐに仲良くなった。
静子は本当に優しく、女子に無視されても文句を言わなかった。
「…亮介のこと、好きになる気持ちがわかるから。
でも、私は亮介から離れられないから、仕方が無いのかなって思うの」
と、苦しそうに話していた。
静子には悔しいけれど勝てないと思った。
それでも亮介を見る度に胸が痛くなるほど恋心は膨らみ、
心の奥底では静子が羨ましくて憎らしかった。




