【番外編】美久子 流青のバスケの試合を観に行く 高校生編(5)
第2クォーターが終わり、10分間のハーフタイムに入った。
聖陵学院が57対18で勝っている。
「バスケって、すごく面白いねー!って美久っ!大丈夫っ?」
「あ、うん!大丈夫!はーっ、いつの間にか身体中に力入ってたみたい。あかん…なんか、つ、疲れた……ふーっ、はーっ、ふーっ…」
流青の試合を見ながら身体中に力が入りまくっていた美久子は、浅い呼吸で前のめりになってガチガチに固まっていた。
深呼吸をして生き返る。
「フッ」
後ろの一橋が美久子を見て小さく笑った。
「…もう、一橋さん!笑わないでくださいよ!
私も必死なんですから!」
「いやいや、美久が必死って!
そこまで疲れるほどガチガチになって、
息止めて応援って……あはははっ!」
「フフッ。すみません、つい」
「…はいはい、いーですよ。
私も周りの女子みたいに可愛らしい声で、
可愛らしーく応援出来ればいいんですけどね…」
「美久子っ!!」
「へっ?あ!」
『『『『『『きゃーーー!!!!』』』』』』
『流青くん、こっち見てるよっ!』
『ミクコって誰っ!?』
『えーっ!?彼女いるのっ!?』
『乾くん、なんか顔が怒ってない?』
ハーフタイムで休憩中の流青が、
美久子の真下辺りのコートから見上げていた。
首にタオルを掛けて、無表情で立っている。
流青くん!全身汗だく状態なのに、
キラッキラですこぶる格好いいってなんなの!?
そうだ!傾国の美男子だった。なら仕方が無い。
でも……あれ?なんだかかなり不機嫌だ。
気を取り直して、美久子は流青に声を掛けた。
「り、流青くん!」
「……」
「あれ?無表情…」
「美久!ほめて!ほめて!」
「え?あっ!」
「……」
「流青くん!シュートすごかったよ!格好良かったよー!後半もがんばってねー!」
流青が、にぱっと笑った。
満面の笑みだ。
『『『『『『『きゃー!!!笑ったー!』』』』』』』
「あらら、大喜びだね。ご機嫌なおるの早いねー!」
「……」
「美久子!見てたか?俺のシュート!」
周りの声がかなり大きくなってきた。
声を出しても掻き消されてしまうと思った美久子は、
思わず両手で小さく丸を作って、こくこくと頷いた。
笑顔はちょっと引き攣ってたかもだけど。
流青は嬉しそうにうんうんと頷いた。
「最後まで見てろよ!」
『『『『『『『きゃー!!!!!』』』』』』』
そう言ってまた笑った流青は、
走ってチームに戻っていった。
「乾くん、美久のひと言で笑顔出まくりじゃん。
すごい効き目だねー!」
「……もう。格好良すぎて、ほんと困る」
美久子は改めて流青の超絶的な格好良さにやられてしまい、
両手で真っ赤になった顔を覆った。
『何?アノ女』
『誰?アイツ』
『流青くんにあんなに話し掛けられて…』
『ちょっとムカつかない?』
周りの不穏な声を聞き、一橋はすぐにインカムで指示を送った。
聖陵側のベンチから流青と美久子のやり取りをじっと見ていた女子生徒が、チームの元に戻ってきた流青に声を掛ける。
「流青くん!監督が呼んでたよ!」
「ああ、悪い。ありがとう」
その女子生徒は、バスケ部のマネージャーの江川実希子だった。




