表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/132

【番外編】有沢 葉月の初恋(4)


「美久子ー!」

「うぎゃあー!流青くんっ!汗っ!

ユニフォームがびちゃびちゃじゃないっ!

ちょっと!離れて!いやーっ!たっ、田尻さーん!」

「乾様」

「…………はい」

「もうっ、流青くん!私制服だよ……。

もうっ、汗っ!ほら、これで拭いて」

「もうばっかり。美久子が拭いて?」

「え?何で!?自分で拭けるよね……」

「無理。今日の練習かなりハードだからフラフラだ。

江川のヤツ、俺だけツーメン長めにしやがって」

「もー、仕方が無いなあ。はい、頭下げて……

あー、座ってちょっと休んで。

はい、スポドリこれね。飲んでね」

「ふふっ。はーい」



美久子にタオルで頭をワシャワシャと拭かれ、

タオルから顔を出した流青は、満面の笑みだった。

拭かれている間も、

流青は長い両腕で美久子を囲っていた。





あんな……あんな笑顔、するんだ。

子供みたいな、満面の笑顔。

あんな甘えた喋り方……。

甘える仕草や言葉。

どれだけ心を許しているのかが分かる。


彼女さん……ミクコさんって言うんだ……。

後ろ姿しかわからないけど、

やっぱり、可愛い。





「わあ!髪の毛ぐしゃぐしゃになっちゃったね!

ボサボサだね!あはは!」

「むー!!」

「………私のマネをしないでください」

「ふふっ」

「ピピーッ!はい、休憩終了1分前ー!」

「流青くん、休憩もう終わりだよ。はい、いってらっしゃい!」

「……休憩終わるの早い。早過ぎる」

「……練習、終わるのちゃんと待ってるから、ね?

そうだ!今日ね、帰りに平松さんが、美味しいハンバーグ屋さんに連れて行ってくれるんだって!楽しみだね!だから、がんばって!」

「……俺はハンバーグより美久子が良い」

「えー?」




ちゅっ




流青にぎゅっと引き寄せられた美久子は、

流青が頭に(かぶ)っているタオルで隠されながら、

不意打ちでキスされた。



「っ!?」

「よし。これで頑張れる。いってくる。

あと1時間で練習終わりだから、先に車で待ってて」

「もうっ!ここ、学校っ!いってらっしゃい!頑張って!!」



顔を真っ赤にして怒る美久子のえくぼを、スッと指でなぞった流青は、

1階のコートへ走って行った。



「……もう、ほんとに……困る……」



美久子はチラッと常盤SPの田尻の方を見て目が合うと、

更に赤くなり、がばっと下を向いて席に座った。

暫くその姿勢のまま動けなかった。




葉月はその様子を茫然(ぼうぜん)と見ていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ