【番外編】有沢 葉月の初恋(2)
「あの夢みたいだった学院祭から、もう半月だよ!早いよねー!
このままあっという間にクリスマス……。
あーあ、彼氏欲しいなあ」
「ふふっ。ちづはスゴいよ。いつも前向きだよね」
「スゴくないよー。私はフラれてばっかだもん!
……でさ、葉月はどうするの?乾先輩に告白……するの?」
「……どうしたらいいのか、わかんない。
絶対ムリだってわかってるけど、やっぱり好き。
時間が経って、もっと好きになってしまってるよ……。
でも告白するのは怖いよ。
断られて嫌われたらどうしよう。
ちづー、どうしよう……」
「うーん、そっか……。
あれだけ男嫌いだった葉月の初恋、叶えてあげたいなあ……。
でもさ、先輩、彼女いるよね……」
「……」
「噂じゃ、乾先輩と同クラだって」
「……うん。この前、遠くから、見た」
「うそっ!見たの!?いつよ!?どーだった!?」
「放課後、一緒に帰ってた。
少し遠くて、はっきりと顔はわかんなかったけど……可愛い感じ、だった」
「そっか………可愛い感じだったかー。
うーん……もしね、どーしても諦めきれないなら、
もう覚悟決めちゃって、告白してみたら?」
「っ!……」
「このまま、片思いでずっといられる?
葉月はさ、思ったらじっとしてられないっていうか、ね……。
……玉砕したら私が思いっ切り慰めてあげるからさ」
「……ちづ……」
「葉月はさ、見た目大人しそうなんだけど、
一度こうだ!と思ったら、
絶っ対曲げない超ガンコなところがあるからねー」
「………」
「……今のままじゃ、何となく、嫌なんでしょ?」
「………うん」
「………葉月のスマホの待ち受け、前はリクだけだったのに、
乾先輩にもらったぬいぐるみと一緒のに変えたよね。
……大切にしてるんだね」
「………うん。……あおくん」
「んん?あおくん?
あー、流青のあおね!あはは!捻ったねー!
もうさ、そこまで好きなら玉砕覚悟で、
葉月の得意なお菓子作って、
『ぬいぐるみのお礼をしたくてー』とか言って呼び出して、
告白しちゃいなよ!」
「!……」
「葉月は可愛いんだし、もしも!?な事があるかもしれないよ」
「!?………」
「ねっ!せっかく16歳で、ま、遅っいけど、
初めて好きな人が出来たんだよ!?
怖がりだけど、後悔するのが大っ嫌いなややこしい葉月さん!
スッキリ、しよ!ね?」
「…………うん」
「ついでに私の分もお菓子作って!
私、ナッツが入ったクッキーがいい!あれ美味しかったあ」
「……ふふっ!うん!」
葉月は親友の千鶴の応援を受けて、
思い切って流青に告白することにした。
ここ最近、胸の辺りがモヤモヤして、
気が付くと流青の事ばかり考えていた。
流青ともっとたくさん喋ってみたい。
流青のことをもっと知りたい。
学院祭の時みたいに、自分の事を見て欲しい。
流青の傍にいたい……と、強く思った。




