【番外編】有沢 葉月の初恋(1)
※学院祭で流青を好きになってしまった葉月のお話です。
ちょっぴり切ないですが、よろしければお楽しみください。
それでは始まります!
高校1年生の秋。
私は初めて、好きな人ができた。
その人は私より学年が一つ上で、
背が高くて、驚くほど顔が整っていて、
成績が良くて、優しくて、
バスケ部のレギュラーで、御曹司で………。
全てが完璧な、乾先輩。
私とは別次元の人。
人気があるのは学院内だけじゃなくて、
バスケ雑誌に載るくらいの有名人で、
ファンクラブまであるという噂を聞いた。
遠くから見たことはあったけど、
芸能人みたいな存在で。
まさかこんな私が、
乾先輩と喋ったり、
名前を呼んでもらえたり、
手首を掴まれながら歩いたり、
ぬいぐるみをプレゼントしてもらえるなんて、
思ってもみなかった。
小さな頃に苛められたトラウマで、
イケメンどころか今は軽音部の数人の男子以外は怖くて、
それ以外の男子と話したことは殆ど無かった。
乾先輩は、
私の心の中にいきなり入ってきた。
流星群みたいに、
ものすごいスピードで、キラキラで。
見ないようにしていたのに、
気が付いたら好きになっていた。
格好良すぎて、優しくて。
本当に……大好きになってしまった。
こんな手が届かない恋なんて、
叶うはずがないのはわかってるのに。
乾先輩の教室がある校舎や渡り廊下。
バスケ部の体育館、部室。
食堂や、乾先輩の靴箱の辺り。
その姿を探してしまう。
放課後、やっと久しぶりに姿を見つけた。
背が高い乾先輩はすぐに分かった。
もっと近くで見たいと思って、
もう少し近く寄ろうとしたら、
先輩の横に女子生徒がいた。
乾先輩は笑っていた。
遠目でも、横顔でもわかるくらい、
嬉しそうに笑っていた。




