閑話1 ティアの春
今回はティア(ファニエスタール王国第一王女、クリスティアーナ)目線です。
トアが知らない、ティアの気持ちや、国王との会話など...
ご覧下さい!(この話は、飛ばしても問題ありません。)
目線:クリスティアーナ
私は今日王妃様になるためのお勉強で、王都とアルバート領の間にある森に行きます。今回の勉強は、自分の国にはどんなところがあり、これからどうしていけばより良い国になるのかなどを学ぶためです。
馬車に乗って森に向かいます。一体どんなところなのでしょうか。魔物が出るそうなので、少し怖いです。奥にいかなければ強い魔物はでない。これを信じていくしかありません。
「クリスティアーナ様、目的地に到着いたしました。」
どうやら、目的地に着いたようです。
私は意を決して、森へと進みます。薄暗くて不気味な雰囲気です。
ガサ、ガサガサガサ.....
森を進みはじめてまもなく魔物が出てきました。
草を踏みつける音が聞こえた瞬間に、護衛が戦闘態勢に入ります。
私も、草の音や動きに警戒します。出てきた魔物は中級の魔物です。これは私でも倒すことができます。でも、強級になると、倒すのに時間がかかります。
中級が出れば、私も一緒に戦い、強級が出れば、護衛に任せる。というのを繰り返しているうちに、ずいぶんと奥まで来てしまったようです。
「そろそろ帰りましょうか。」
そう言おうとした瞬間、木の影から魔物が出てきました。私はとても驚き、そして怖くなりました。なぜなら『尾裂狐』がいたからです。私は助けを呼ぶために、「きゃぁぁぁああ!!」と、叫びました。以外と大きな声が出ました。
護衛が戦ってくれますが、怪我人が出てしまいました。体から血が噴き出すのを見た私は、ショックで座り込み、動けなくなりました。深呼吸をして、心を落ち着けます。主である私が冷静さをを失ってしまっては、護衛たちまで動けなくなります。
そんな私の努力は、一瞬で崩れます。死人が出てしまったのです。目の前で鈍い音と共に、倒れました。その後からは次々と、死人や怪我人が出て行き、30人ほどいた護衛が半分ほどになってしまいました。
そんな時、二人の女性と、私と同い年くらいの男の子が助けに来てくれました。
「「「加勢します!!」」」
私は女性の顔を見ると安心しました。なぜならAランクの冒険者様だからです。でも、男の子は?冒険者様がいるから大丈夫。そう言い聞かせます。
しかし、その男の子は動きが素早く動きが見えません。それにあの『尾裂狐』に、少しですがダメージを与えています。いくら魔法を放ってもふらつくことはありません。あのお方は何者なのでしょうか。
しばらくして、男の子はなにかに気づいたようです。そして、それを冒険者様に伝えます。すると直ぐに、私達の優位な状況になりました。
その直後に男の子の手から放たれた魔法に、私はとても驚きました。
『サンダーカッター』
この魔法は帝級魔法で、使える人が限られている攻撃魔法。似たような魔法には『ウォーターカッター』がありますがそれとはレア度が違います。雷の魔法はどれも威力が高いので、その分魔力の消費量が半端ない。それが、使える人が限られている理由なのです。
あの男の子は、『サンダーカッター』を使って、尾裂狐を倒したあとなのにも関わらず、こちらへ走って来て、同じく帝級魔法である『パーフェクトヒール』と、『メンタルヒール』をかけてくれました。すると、今までの震えや強ばっていた体が嘘のようにリラックスしました。
体の一部が欠損していた護衛も、元のかすり傷ひとつない体に戻っていました。むしろ、前よりもよくなった人もいるかもしれません。
優しい笑顔で微笑んだヒーローに、私はいつの間にか、恋をしていました。
私の名を名乗ると彼は、驚いていましたが、ここにきた理由と、道に迷った事を伝えると、すぐに道案内をしてくださいました。
案内をしてくださりながら、お話もしました。
「あの、クリスティアーナ王女様....」
「だめです!」
「え?」
「あの、えっと、その....ティアって呼んでくれないと嫌ですっ!」
「じゃあ....ティア(イケメンスマイル)」
トア様、それは反則です.....!
すると、思考停止して動かなくなった私に心配してくださったのか、手を繋いでくれました。
....トア様、鈍感すぎです!(赤面)
そんな楽しい(?)時間はあっという間に過ぎ去り、王都についてしまいました。
「着いたよ!じゃあね。ティア。」
「(まだ一緒に居たかったな。)はい。今日はありがとうございました!またね!(トア様!じゃなくて、)トアくん。」
そこからは馬車でお城へ戻りました。するとお母様がいました。
「ティア、森はどうだった?」
私は、『尾裂狐』や、トア様のことはもちろん、森でのことをすべて話しました。すると、
「.....遂にティアにも春がきたのね。」
と、嬉しそうな表情をしていました。
「お母様、私はあの方と、け、結婚をしたいのです。」
「まぁまぁティア、落ち着きなさい。まずは陛下にこの事をお話ししましょう。話はそれからよ。彼はまだ爵位をもらっていないから、今婚約をすると、周りからの反応は、きっと良いものではないわ。王女たるもの!いつも冷静で。ね?」
返す言葉がありません。
「はい。お母様。」
お父様にも同じように、お話をしました。お母様とは反対に、とてもおどろいていました。
「『尾裂狐』のこともおどろいたが、まさかティアが恋とはな。よし、決めた。明日トアには、徐爵して、屋敷と領地をやろう。」
「え?彼はまだ八歳なのよ?」
「これ以外に、今回の功績に見合う褒美などあるのか?」
「そ、それは...爵位はどうするの?」
「男爵だ、領地と屋敷については本人と相談し、その時に人柄を判断しよう。それによっては婚約は認めん。いいな?」
私は彼がどんなに良い方なのか、見に染みてわかっているので、不安などひとつもなかった。
「はい!!」
「そんなに自信があるのか。期待しておこう。」
────謁見後
「お父様!!」
「あぁ、ティア。トア男爵は面白くて良いやつだな。婚約者として認めよう。」
「やったー!有難うございます!」
「ただし、トア男爵の心を射止めること。それまでは、正式に婚約者としない。いいな?」
「はい!!がんばります!」
私はこの日から、王妃様の勉強に加え、花嫁修業も始めた。しかし、大事なことに、ティアは気付いていなかった。
第一王女であるティアの場合、他の家に嫁ぐことはできないため、トアと結婚するとなると、次期国王は、トアか、ティア(ティアの場合、女王)になることを....。
魔法の階級の紹介
上から
神話級→伝説級→帝級→上級→中級→低級
魔法の種類
聖魔法・・・神からの加護を五つ以上もらっている人や、神からの寵愛を受けている人しかできない魔法。『パーフェクトヒール』や、『状態鑑定』などがある。