見張られる教室
学校では、あの女とは離れた位置に席がある。さすがに、学校でまであの女と隣同士、なんてことはなくて安心した。
あいつは、クラスの中で人気者だけでなく、優等生だ。教師から目をかけられている。それが、芹澤 マリシャという女だ。
「はぁあ」
自慢の幼なじみ……そう言われれば聞こえはいいが、それが俺にとっては重荷だ。本来なら、それは誇らしい、のかもしれない。
だが、俺にとってあの女は憎らしさすら感じる相手だし、自慢だなんだと言われたとしても全然嬉しくない。それに、俺とあの女が幼なじみゆえに親密だと思われるのも、心外だ。
「どうしたの高城くん、ため息なんかついて」
毎日の悩み……ついため息が出てしまうが、そんな俺に話しかけてくれる心優しい女の子。安才 久美乃は俺なんかを気にかけてくれる、かわいらしい女の子だ。
あの女とは、また違ったタイプでクラスの人気者。そんな彼女は誰にも優しく、俺にこうして話してくれるのも、俺に特別な感情を持っているわけではないだろう。
だが、それでも俺の荒んだ心には、この笑顔は癒しになる……
「……」
「ぁ……いや、なんでも、ない」
その瞬間、視線を感じる。見えていたわけではない……だが、確かに背中に視線を、あの女の視線を感じる。
いくらクラスの人気者であり、休憩時間であっても俺に会いに来れないとはいえ……あいつの視線は、いつだって俺のところへと向いている。
他の女と、親しげに話していると……その視線が、語っている。
「……そっか」
俺の素っ気ない態度に、安才はどこか残念そうに、去っていった。