表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/22

二人きりの地獄



 こうして、今は高校生として学校に通っている。学校ではそれなりに人付き合いもうまくやれているし、自分でもわりとまともな生活を送っていると思う。



「やー、やっぱり二人きりのこの時間はいいわね!」



 ……こいつの存在を除けば、な。


 学校に近づけば、同じ学校の生徒も道中増える。しかし、家から出たばかりの空間は、この女と二人きりの登校になってしまう。


 家では、おばさんやおじさんがいる。共働きだが、俺らが帰るころにはおばさんは家にいるので、この女と二人きりになることは、こいつが部屋に乗り込んでこない限りない。俺からは絶対行かないし。


 学校では、言うまでもなくたくさんの人がいる。運悪く同じクラスであるこいつが絡んでくることはあるが、二人きりという空間はない。


 下校は、この女は帰宅部だが俺は陸上部に入っている。部活終わりを待ち合わせされることもあったが、部活の友人らと帰りたいから先に帰っててくれと言ってある。


 極力二人きりの空間は作らないようにしているが……この登校の時間だけは、どうしようもない。



「今日もいい天気ねー」


「あぁ」



 だから俺は、適当な相づちを打って過ごす。早く、他の生徒が現れる場所に行くまで、出来る限り気づかれないよう早足で。


 二人きりの空間は、地獄だからな。



「よーお二人さん!」



 そうやって、気づかれないように工夫しているうちに、こうして声をかけられる。いや、こちらから声をかけてもいい。その相手は、同じクラスの人間ならベストだ。


 それなら、同じクラスなので途中で別れるということはほぼない。



「いやあ、朝から見せつけてくれちゃって、うらやましいねえ」


「やだもう」



 こいつは、クラスの友人。癪だが、クラスの中では俺とこの女をカップルだとしているものが多く、それはこの友人も多い。


 赤くなるこの女を殴ってやりたい衝動を抑えつつ、俺は「そんなんじゃねえって」と冗談めかして返す。本来なら、「冗談じゃないふざけるな」と言いたいところだが、あまり真剣に返すと逆にマジっぽいのだ。


 だからこういうときは、冗談交じりに否定しておく方がいい。本気で否定したのを必死に抑えて。


 誰が、こんな女なんかと。俺の両親を殺した女だぞ……とはさすがに言えないが。俺がこの女になびく可能性は、微塵もない。それは、両親の仇である理由とは別にある。それは、俺には……



「あ、高城くん、おはよう」


「あ、あぁ、おはよう」



 俺には、好きな子がいるのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ