表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/22

両親を殺した女



 芹澤 マリシャ。俺の幼なじみであり、物心ついた頃にはいつも一緒だった。


 当時は、子供心ながらにこんなかわいい子と一緒にいれることに、周囲に対して若干の優越感のようなものはあった。あの女も、俺にはよく懐き、一緒にいた。



『れい、ずっといっしょにいてね!』



 そんなことを、ちょくちょく言うような奴だった。親同士もとても仲が良く、俺たちはお互いの家を行き来する仲であった。


 このまま、順調に大きくなり、家庭の付き合いが切れることはないのだろう……そう、思っていた。


 ……なのに……



『わたし、かんがえたの。ずぅっとれいといっしょにいる方法』



 それを聞いた瞬間は、なにを疑問に思うこともなかった。なにを当たり前のことを言っているのか……でも、そう思ってくれるのは嬉しい。


 その程度の、認識だった。その日の、夜までは。



『れーい、こんばんは』



 その日の、夜。ベッドで眠っていた俺を起こしたのは、ここにいるはずのないあの女だった。


 家は隣同士で、俺の部屋とあの女の部屋とは、窓伝いに行き来することができる。窓の鍵を閉めていなければ、そのまま部屋に入ることも。


 その日は、夏の暑い日だった。だからか、俺は窓の鍵を閉めておらず、網戸にしていたのみだ。



『……マリシャ、ちゃん?』


『ねえねえ、れい。これかられいは、わたしのお家でくらすのよ。パパとママなら、一人になったれいを放っておくはずがないもの』


『……ぇ?』



 7歳の子供に、寝起きの頭。なにを言っているか、理解できるはずもない。いや、10年経った今でも、なにを言っているか理解できない。理解できるはずがない。



『こっちだったわよね、おじさんとおばさんの部屋は』


『マリシャちゃん? なにを……?』



 お父さんとお母さんの部屋へと向かうあの女を、俺は眠たい目を擦りながら追った。女の手に、銀色に光るなにかが握られているのを俺は、気づけなかった。


 時刻は、よく覚えていない。とにかく夜中だったのは、覚えている。両親はぐっすり眠っていた。


 ……それが、俺が生きている両親を見た、最期の姿になった。



『えいっ』



 ザシュッ



『……え?』



 あの女の手に握られたなにかが、お父さんの首元へと振り下ろされる。それは、喉を狙っていたのだろう……寸分の狂いなく、喉を突き刺す。



 「うっ」という小さな声が聞こえた……が、それだけ。銀色にのナイフを引き抜き、呆然とする俺をよそに、そいつはお母さんの喉へと、振り下ろす。



『……は、ぇ……?』



 彼女がなにをしているのか、わからない。これは夢ではないのか。そう思いたくなるのと、そう思えないほどにリアルすぎる生々しい音が、光景が、目を耳を支配していく。


 ……何度も何度も何度も。突き刺し、そいつは俺に笑って……



『おじさんとおばさんがいなくなれば、れいは一人。一人じゃ生きられないから、きっとパパとママが引き取る。ううん、私がたのみこむ。そうしたら、れいと私はもっとずっと、いっしょにいられるよ』



 誰もが惚れ惚れするような表情で、意味のわからないことを、言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ひ、ひえええぇ……。タ、タイトルからこうなんだと思っていて読むとゾクッとする。 こ、こここ、こわっ!!!!! 
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ