両親を殺した女
芹澤 マリシャ。俺の幼なじみであり、物心ついた頃にはいつも一緒だった。
当時は、子供心ながらにこんなかわいい子と一緒にいれることに、周囲に対して若干の優越感のようなものはあった。あの女も、俺にはよく懐き、一緒にいた。
『れい、ずっといっしょにいてね!』
そんなことを、ちょくちょく言うような奴だった。親同士もとても仲が良く、俺たちはお互いの家を行き来する仲であった。
このまま、順調に大きくなり、家庭の付き合いが切れることはないのだろう……そう、思っていた。
……なのに……
『わたし、かんがえたの。ずぅっとれいといっしょにいる方法』
それを聞いた瞬間は、なにを疑問に思うこともなかった。なにを当たり前のことを言っているのか……でも、そう思ってくれるのは嬉しい。
その程度の、認識だった。その日の、夜までは。
『れーい、こんばんは』
その日の、夜。ベッドで眠っていた俺を起こしたのは、ここにいるはずのないあの女だった。
家は隣同士で、俺の部屋とあの女の部屋とは、窓伝いに行き来することができる。窓の鍵を閉めていなければ、そのまま部屋に入ることも。
その日は、夏の暑い日だった。だからか、俺は窓の鍵を閉めておらず、網戸にしていたのみだ。
『……マリシャ、ちゃん?』
『ねえねえ、れい。これかられいは、わたしのお家でくらすのよ。パパとママなら、一人になったれいを放っておくはずがないもの』
『……ぇ?』
7歳の子供に、寝起きの頭。なにを言っているか、理解できるはずもない。いや、10年経った今でも、なにを言っているか理解できない。理解できるはずがない。
『こっちだったわよね、おじさんとおばさんの部屋は』
『マリシャちゃん? なにを……?』
お父さんとお母さんの部屋へと向かうあの女を、俺は眠たい目を擦りながら追った。女の手に、銀色に光るなにかが握られているのを俺は、気づけなかった。
時刻は、よく覚えていない。とにかく夜中だったのは、覚えている。両親はぐっすり眠っていた。
……それが、俺が生きている両親を見た、最期の姿になった。
『えいっ』
ザシュッ
『……え?』
あの女の手に握られたなにかが、お父さんの首元へと振り下ろされる。それは、喉を狙っていたのだろう……寸分の狂いなく、喉を突き刺す。
「うっ」という小さな声が聞こえた……が、それだけ。銀色にのナイフを引き抜き、呆然とする俺をよそに、そいつはお母さんの喉へと、振り下ろす。
『……は、ぇ……?』
彼女がなにをしているのか、わからない。これは夢ではないのか。そう思いたくなるのと、そう思えないほどにリアルすぎる生々しい音が、光景が、目を耳を支配していく。
……何度も何度も何度も。突き刺し、そいつは俺に笑って……
『おじさんとおばさんがいなくなれば、れいは一人。一人じゃ生きられないから、きっとパパとママが引き取る。ううん、私がたのみこむ。そうしたら、れいと私はもっとずっと、いっしょにいられるよ』
誰もが惚れ惚れするような表情で、意味のわからないことを、言った。