表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/22

誰もが羨むような幼なじみの正体は



 コンコン、ガチャ



「怜ー、起きてる?」



 扉が、開く。ここは、俺の部屋だ……性格には、俺の部屋として割り当てられた部屋……ややこしいし、やっぱ俺の部屋でいいか。


 というのも、この部屋……いや家は、俺のものではない。所有者が、的な問題ではなく、俺は住まわせてもらっている形だ。



「ノックするなら、せめていきなりドア開けるのはやめてくれ」


「細かいことはいいじゃないの。それよりほら、もうそろそろ学校行く時間よ!」



 俺を起こしに来てくれたこの女は、芹澤 マリシャ。下の名前がカタカナなのは、俗に言うキラキラネームというわけではなく、こいつがハーフだからだ。お父さんが日本人、お母さんがアメリカ人だったか……


 その証拠に、こいつの髪は日本人にはまず見ない、美しい金髪だ。それを後ろで縛り、いわゆるポニーテールという髪型だ。瞳は海のように青く、まるで吸い込まれてしまいそう。


 スタイルも抜群で、出るとこは出て締まるとこは締まっている……絵に描いたような、完璧な見た目。両親が日本とアメリカの人間だから、日本語も英語もペラペラだ。


 才色兼備。さらには誰にでも優しく明るい。これで人気が出ないはずがない。運動神経はよくないが、そこがいいという声もある。嫌味のない性格から、異性だけでなく同性からも好かれる。


 まさに、完璧だ。そんな彼女と俺は、一つ屋根の下に暮らしている。部屋を一室、俺のものとして与えてくれて、芹澤一家に俺はお世話になっている。


 お世話になっている、と言うのは、俺が芹澤家の人間ではないからだ。俺は高城 怜。この女とは赤の他人であり、そんな俺がどうして、ここにこうしていられるかというと……



「いいじゃない、幼なじみなんだし。そりゃ、着替えてるとこにでも出くわしたら、謝るけど……」



 そう、俺とこいつとは幼なじみなのだ。そのよしみで……いや、芹澤両親の好意で、俺はここに住まわせてもらっている。


 頬を赤らめてもじもじしているこいつをチラリと見て、軽く手を振る。



「んじゃ、着替えるから出てってくれるか」


「あ、うんわかったわ。急がないと、朝ごはん冷めちゃうわよ」



 制服スカートを翻し、部屋を出ていくのを見送って……俺は、立ち上がる。着替えるため、クローゼットに向かう。


 幼なじみだから、という理由だけで、家に住まわせてもらえるはずもない。俺には、両親がいない。いないってのは、どっか海外に行ってる、なんてややこしい問題ではない。


 もう10年も前になるか……今年17歳になるから、両親を失ったのは7歳の時だ。



「……」



 失った、とは言っても……事故で死んだ、というわけではない。殺されたのだ……俺の、目の前で。


 そして俺は、その犯人を知っている。



「……よし」



 制服に着替え、部屋を出る。二階から階段を下り、一階へと降りる。


 一階が近づいてくる度に、食欲を刺激するいい香りが、鼻をくすぐる。



「おはよう、怜くん」


「おはようございます、おばさん」



 朝食を作っているのは、芹澤家の母親……お世話になっているおばさんだ。おじさんは、仕事に行ったのかいない。


 なんてことない、家庭の風景。なんてことない、幸せな時間。それは、俺は血の繋がった家族とは二度と味わえない……そして俺から、それを奪った人間は、ここにいる。



「寝癖すごいわねぇ、ふふ。改めておはよう、怜!」


「……あぁ、おはよう」



 ……芹澤 マリシャ。俺の隣で笑っている、誰もが羨み憧れ好意を寄せる女。この女が、俺の家族を奪った、犯人だ。

ここでは、マリシャのことを紹介以外、名前では呼んでいません。全部「こいつ」「この女」としています。

それは怜の心情であり、実際には名前を呼びますが、心の中では名前を呼ぶことはしません。誤字でそうならないよう気をつけます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 題名が気になり過ぎて読んでしまった!!! そしてもう続きが気になる!!!( ;∀;) 子供の力で、どう彼の両親を殺めてしまったのかがめっちゃ気になる。 あとあと、狂愛と言うタグも……。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ