09
「見つけたかー?」
「沢山見つかったわよ」
リューネがケール草を魔法で浮かしながら沢山持ってきた。
「多すぎだろ!?5枚くらいで良いはずだよ。確か」
クエストの紙を見て確認する。
うん。
5枚で良いみたい。
神のお告げから3日経った今日。
起きたらもう朝だったことにもビックリだったが、机にみかけないアイテム袋が置いてあった。
触った瞬間、頭にあの神様の声が聞こえた。
『渡すの忘れてた。ごめんねー。それ君のアイテム袋ね。神からのプレゼント。容量は無限で時間が停止してるから焼きたてのパンとか入れたら熱いままだよ。因みに生物は入りません!』
まさかの神からのプレゼント。
使わない訳にはいかないなこんな便利なアイテム袋。
で、部屋を出たら丁度リューネ達がいた。
神からのお告げは言わなかったがとりあえず1ヶ月くらいはこの国にいるとは伝えた。
特に反対も無かったし、ギルドに行ってクエストをこなそうと話し合った。
で、3日の間、Eクエストを淡々とこなしてる。
Eクエストは基本的に薬草探したり、動物探しとか簡単なクエストばっかり。
動物はリューネの探知魔法であっさり見つかるし薬草も魔法で簡単に見つかる。
俺?
地道に足を使って頑張ってますよ!
動物には引っかかれるし薬草見つけたと思ったら毒草だし。
ブラック?
あいつは草の上で寝てるよ。で、今は体力を回復してくれる薬草のケール草を探してた。
リューネが沢山持ってきたけど何処から調達したんだろうか。
「まあ、とりあえず帰るか…」
ブラックを起こし街に戻る。
薬草は俺の新しいアイテム袋に入れた。
リューネはアイテム袋を見てすぐ「見させて」と真剣な顔で言われたから見させたら「これ…あり得ない魔法が何重にもかかってる」
とか言い出したから、そのまま聞き流した。
時には分からないことが良いことがある。
「後、4日か…」
ギルドに行きクエスト終了の報告をしてお金をもらう。
リューネ達にもお金を渡してあるからブラックはそのまま屋台に向かって行った。
俺は宿に戻りベットで寝転んでる。
「緊急イベントとか言ってたけど…ぶっちゃけリューネとブラックがいたらなんか普通に解決しそうだよな」
あの、2人常識から外れた生物だからな。
それに、もう1つ気になるのは赤い騎士。
それとなくギルドにいる時に赤い騎士の事を聞いたら
「赤い騎士?ああケール団長の事かしら」
カウンターの女性に聞いたら答えが分かった。
詳しく聞くと王宮の騎士団長みたい。
レベルも高くギルドのSランク相当に値するらしい。
何その化け物。
しかも、若く誰にでも優しく接するもんだから子供から老人まで大人気らしい。
神様よ。
赤い騎士を仲間にしろってさ…ケール団長の事じゃないよな?
もし、そうなら無理です。
もう、無理ゲーの匂いしかしないわ。
☆☆☆☆☆☆
緊急イベントが明日に迫った今日。
いつも通りクエストをこなし、報告をカウンターの女性にしていた時
「あ…」
カウンターの女性が一言呟いた瞬間今までにないくらい周りがうるさくなった。
女性の目線は俺の後ろ。
つまり、入り口に向けられている。
振り返るとそこには全身赤い格好をした人がいた。
鎧も小手も兜も全部赤。
趣味悪いわ~とか思ってたらこっちに歩いてきた。
「元気だったかいソフィー?」
「はい、毎日元気です!ケール団長もお元気そうで!」
なんと、この赤い格好をした趣味の悪いやつがケール団長だと?
後、カウンターの女性の名前初めて知った。
「おや?見かけない顔だね」
カウンターの女性と話をしてたら急にこっちを見た。
「来たばっかりの冒険者です」
ケール団長を真正面から見たが…
何この中性的な顔。
整いすぎでしょ。
髪は兜に入ってるから分からないが鎧と同じく瞳も紅い。
後、身長も高い。
「成る程…私は王宮で騎士団長をやっているケールと言う者です。よろしく」
高くもなく低くもなく本当に中性的な声をしているケール団長が手を伸ばした。
「よろしくお願いします」
俺も手を伸ばし握手をする。
…このイケメンめ。
俺が女だったら一目惚れだったわ!
「…おや、これは中々」
「ん?」
握手をしてるが目線は俺じゃなく2人に向けられてる。
「彼女達は君の仲間かい?」
「そうです。メイド服がブラックでもう1人がリューネです。因みに俺はマサキです」
手を離し2人を紹介する。
「リューネさんとブラックさんか…」
おや?
なんか2人を見て考え始めたぞ。
まさか、バレたのか?
「おっと、私はギルドマスターに用があるんだった」
考えをやめ本来の目的を思い出したらしい。
というかギルドマスターなんていたんだ。
「マサキ。君は良い仲間を持ってるようだね。仲間を大切にね」
そう言うと奥に入っていった。
あ、バレたんじゃなく狙ってたな。
あのイケメンめ。
「リューネ、ブラック気をつけなよ。あのイケメンどうやら2人を狙ってるみたいだから」
そう言うと2人は顔を合わせ
笑った。
「ふふ。大丈夫よマサキ。それにしてもマサキは面白いわね」
「我が主人は凄いのかバカなのかよく分からんわい」
え?
俺なんか変な事言った?
心配したのにまさか笑われるとは。
後、ブラック。
バカは余計だバカは。
「は?何で笑うんだよ?意味わからん。もう帰る」
いや、いじけたわけじゃないよ?
報告も済んだし帰るだけだったから。
いや、本当。
「あのケールという人間。薄々気づいておったな」
帰り道ブラックが屋台で買った肉串を食べながら言った。
ブラックよ。お前毎日食べてて飽きないのかよ。
見てるだけで腹いっぱいになるわ。
「そうね。恐らく魔力探知が人間にしては高いみたいね」
「ま、バレたところで我はどうでも良いがな」
「良くありません!俺はバレたくない!なのでケール団長には近づかない事」
神様。
どうやら仲間には出来ないぞ。
俺がなんかあの人苦手だから。
宿に戻り明日のために色々準備をしようと思ったが素人冒険者故に何を準備して良いか分からず結局何もせずに寝た。
「朝か…」
神様に言われた当日。
ベットから出て大きく背伸びをする。
「特に何も起きないな…」
ま、朝一から起きるなんて言ってなかったからな。
しかし、何が起きるんだ?
部屋を出ようとした瞬間
《緊急事態発生!緊急事態発生!》
外からスピーカーを大にしたうるさい声が聞こえた。
俺は部屋を出てリューネ達がもう部屋の外で待っていたので合流して外に出た。
出たら逃げ惑う人達と城壁の外で戦ってる音が聞こえる。
「一体何が起きたんだ?」
その問いに
「…どうやら壁の外に魔物が大量に来てるわね」
リューネが恐らく魔力探知で探ったみたいで答えてくれた。
「魔物?何故?」
「さあ?知らないわ」
どうする。
正直、リューネ達がいる限り大丈夫なんだけどさ。
「とりあえずギルドに行ってみよう」
混乱してる 人達の間をなんとか潜り抜けギルドに着いた。
ギルド内は冒険者が武器を担ぎ話し合ってる。
俺はカウンターにいるソフィーさんに話を聞きに行った。
「マサキ様!良かった。今、起こってる事は知ってますか?」
「魔物が大量に来た…と」
「はい。それでマサキ様達にも討伐してもらいたいのです」
「大丈夫ですよ」
「良かった。正面側の魔物は弱いのでランクの低い冒険者達が戦ってます。マサキ様達は裏口の方に行ってもらいたいのです」
正面側とは俺達が最初に入った入り口で、裏口は正面側の反対側の入り口だ。
「裏口の先に広がる大地にはBランクの魔物もいまして王宮の騎士団達やCランク以上の冒険者様達にはそちらに向かっていただいてます」
「でも俺達Eランクですけど…」
と、言って自分で気付いた。
「リューネとブラックか」
「はい。Eランクですがレベル的にはSランクでもおかしくはないので頼みたいのです。お願いします」
ソフィーさんが深々と頭を下げる。
「リューネとブラック、お願いして良いか?」
「良いわよ。特に運動にもならないと思うけど」
リューネは快く受けてくれた。
「そうじゃのぅ。久しぶりに動くかのぅ」
うん。ブラックも良さそうだ。
「という事で2人は大丈夫みたいなんで」
「ありがとうございます!では、直ちに現場に向かってください」
ギルドから出る。
まだ、戦闘してる音が聞こえる。
「じゃ、リューネ達は裏口頼んだぞ!俺は入り口に行く!」
クルッと反転し入り口に向かおうとしたが止められた。2人に。
「何言ってるのマサキ。マサキもこっちよ」
「そうじゃ。お主もこっちに来るのじゃ」
「お二人さん聞いてましたソフィーさんの話を?Bランクの魔物とかもいるって言ってたし俺には早い。だから、入り口の魔物を倒してくる。じゃ!」
入り口に向かおうと力を入れたが2人から逃げれず。
結局2人によって裏口に連行されました。
強制連行で裏口に来てみたら
扉から怪我人が次々と現れる。
「…なあ俺は」
入り口に行った方が良い、って言おうとしたらリューネ達は御構い無しに外に連れてく。
こいつら鬼や。
「うわ~何この化け物達」
うじゃうじゃと見渡す限りの魔物がいた。
空にも飛んでいる魔物もたくさんといる。
冒険者達や騎士団達はなんとか戦ってるが数が数だけに減らせてない。
「良し、これくらいならマサキだけでも大丈夫ね」
リューネはこちらをみてありえない発言をした。
「あの、俺の聞き間違いじゃなければこいつらを俺1人で倒せるみたいな事言った?」
「ええそうよ。マサキだけでも大丈夫だわ」
「大丈夫じゃねーよ!!何、ニコッとして言ってるんだよ!この魔物達はリューネ達が倒すんだろ!?」
俺は絶対嫌だぞ。
こんなもん死にに行くだけだからな。
「もう根性なしね」
根性なんていりません。
自分の命第一ですから。
「でも戦いには参加してもらうからね」
「お前はまだ…」
「戦うんじゃなくてマサキはアレをやってほしいのよ」
「あれ?」
「そう。ブラックを有無言わず地面に叩きつけた技を」
あ、あれか。
「でもさ効くのかな?」
「間違いなく効く。我がそうだったようにこんな虫けらみたい魔物にも効くのじゃ」
ブラックが言うとなんか重みが違うな。
「はぁ。ならやってみるけど戦いはリューネ達に任せたよ。俺絶対に嫌だからな」
「はいはい。分かったわ。本当、マサキは心配性なんだから」
お前らバケモノと一緒にするな。
ったく。
このスキルはどうすれば良いんだ?
う~ん。
「分からんから…とりあえず“おすわり”!」
ドドドド
ドドドドドドドド
ドドドドドドドドドドドド
うわぁ。
見渡す限りの魔物達が一斉に地面に叩きつけられた。
空にいた魔物も全部地面に叩きつけられてる。
「は~詠唱のフリなんてめんどくさいわね。今なら誰も見てないし良いか。えい」
リューネが指先から何本かの火を出した。
その火は狼みたいな格好をした炎になった。
その炎は魔物達を次々と焼き殺してる。
触れたら最後一瞬で灰になってる。
「そりゃ!」
ブラックは両手に黒いモヤ?みたいなのを纏い魔物を殴ってる。
モヤに触れた魔物は一瞬にしてドロドロになって、そのドロドロに触れた魔物もドロドロになっていき次々と感染していってる。
ちゃんと冒険者や騎士団達には当たらないようにしてるのは流石だ。
ものの数分でここら辺の魔物は全滅した。
「話にならないわね。やっぱり」
「確かにそうじゃの。暇つぶしにもならんわ」
君達は一回常識を覚えた方が良いね。
「さて、こっち側は見る感じ終わったし入り口に向かうか」
ドロップ回収とか沢山ありすぎて後からでも大丈夫だろ。
「おい、あんたら何もんだ?」
1人の騎士団らしき人物が警戒しながら近づいて来た。後ろには冒険者達や騎士団達がいる。
「しがない冒険者ですよ。それよりも入り口にも魔物もいるようだし早く行きましょう」
絡まれるとめんどくさい事が起きるのでさっさと離れよう。
「マサキ待って。まだいるわ。遠くの方に。1つは昨日会ったケールとかいう団長と…」
リューネがある方向を向いて話す。
「そんなの分かるのか!?ならお願いしたい事がある。この先真っ直ぐ行ったところに洞窟がある。ケール団長はそこに向かっていかれた。そこにはとてつもない魔力を持った何者かがいるらしく団長1人で向かって行った」
「そうね。確かにもう1つの魔力は団長さんの数倍は魔力はあるわね」
それを聞き騎士団達はザワザワしてる。
「頼む!あの人を助けてくれないか?お願いする!」
騎士団達だけではなく冒険者達も頭を下げる。
凄いな。ここまで信頼されてるなんてパナイわ。
「リューネ、ブラック…」
「ええ良いわよ。マサキの願いなら仕方ないわね」
「めんどくさいのぅ。ま、主人の命令じゃ仕方ないか」
「という事です。真っ直ぐ行ったところにあるんですよね?」
「助かる!ああ、真っ直ぐ行ったところだ」
「なら行くわよ」
突如俺の体は浮きあがる。
そして指定された洞窟に向かって物凄い速さで移動し始めた。
「ちょ、ちょ。早い早い!」
「しかし珍しいわね」
「何がだ?というか早すぎだ!!」
俺の言葉を無視するように早さはあがる。
「こんな所に“魔族”がいるなんて」