06
「ここは何処なんだ?」
リューネの森から抜け草原に出た。
「ここは【サイハル草原】よ」
サイハル草原か…。
うん。聞いたことないね。
「とりあえずイースル国に向かうには何処へ行けば良いのかな?」
「そうね、このまま真っ直ぐ行けば着くわね」
「真っ直ぐか。どれくらいで着く?」
「歩いて1週間くらいかな?」
「遠っ!!」
1週間って…。
やべえ、もう心折れる。
「魔法使っていけばすぐ着くわよ。でも、マサキは自分の足で色々行きたいんじゃないの?」
「いや、そうなんだけどさ」
「ふふ。ならゆっくり行きましょ。慌てて行ってもゆっくり行っても国は無くならないわ」
「は~。歩くしかないか…」
荷物はアイテム袋しか無いとはいえ歩きで1週間ってキツイ。
ただでさえ日本にいる時は体を動かすの嫌だったのに…。
だから、車とか便利な移動手段は助かってたよ。
「真っ直ぐ行けば着くのか。ここで止まっていても仕方ないか」
イースル国に向けて草原を歩き始める。
因みに服とかはリューネに作ってもらった服を着てる。
リューネは精霊とはいえない…そうだな旅人の服を着てる。動きやすい服装ね。
で、ブラックはメイド服。
「しっかし…」
見事に誰一人いないな。
歩き続けてるんだが建物どころか人間一人いない。
空には鳥とか飛んでるしウサギみたいな動物はいる。
「む?」
急にブラックが変な反応をした。
「どうした?」
「いや、あと少ししたら魔物がいる」
「ま、魔物!?」
見渡した感じじゃ見当たらない。
だが、やはりいたか。
ドラゴンのブラックがいるんだからいるとは思ったが…
「何、気にする必要もない雑魚だ。今のマサキでも軽々倒せる魔物さ」
「だと良いんだが…」
冷や汗をかきながら歩いていると魔物がいた。
「あれって…スライムか?」
そう、目の前にはよく見かける魔物がいた。
序盤で一番戦う魔物…スライムがいた。
まあ、ゲームと違って目とか口とかないが、ブルブル震えてるスライムがいた。
「む?知ってるのか?」
「いや、まあ」
「まあ、知ってるのなら手間が省ける。あれは雑魚中の雑魚だ。我は戦うのは強い奴だけだからアレはマサキに任せた」
「そうね、私も倒したところで経験値も入らないしマサキ倒しちゃいなよ。リーダーはソロで倒したらリーダーにだけ経験値入るし丁度良いじゃない」
「そ、そうなんだ。良しやってみよう!」
俺はスライムの前に立った。
スライムは一匹。
……
「リューネ…俺武器持ってないや!!」
そう、丸腰なのだ。
武器とか完全に頭に無かったよ。
「スライムぐらいなら武器はいらないわよ」
リューネが暇そうに言う。
いや、君達は強者だからいらないかもしれないが俺ただの一般人。村人Bくらいなんだよ!
「って言っても…!?」
スライムは飛びかかってきた。
思わず手を前でクロスして防御の体勢に入る。
ぽよよ~~ん
「……あれ?」
全くダメージが無い。
スライムは未だに体当たりを繰り返してるが痛みどころか当たった感触が無い。
「ね?言ったでしょ。スライムに武器はいらないわよ」
確かにそうだな。
まさか、ノーダメージだとは思わなかった。
「なら…!」
スライムが体当たりをしてくるのに対して右手でカウンターしてみた。
スライムは右手に当たり地面に液体をばら撒いて死んだ。
液体はすぐ消え、消えた所から銅貨が現れた。
「これは?」
銅貨を手に取りじっくりとみる。
う~ん。日本の10円玉じゃないな。
「魔物を倒すとお金が落ちるのよ。お金以外にもアイテムとかも落ちるわよ。ただ、なんで落ちるのかは分からないわ」
へ~なるほど。
なら、ゲームや小説みたいなんだなこの世界は。
「なあ、この銅貨みたいなのってどれくらいの価値なんだ?」
「…それは冗談で言ってるの?」
「マジです…」
久々にリューネが疑いの目で見てくる。
知らないもんは知らないんだよ。
「銅貨はこの世界で一番安いお金よ。一枚で100ルンよ。次に銀貨、金貨、白金貨、大白金貨よ」
「なるほど…白金貨と大白金貨はそんなに使わない感じか?」
「まあ、そうね。だいたいは金貨までかしら」
「そっか」
この銅貨は一番安いお金か…。
ま、スライムだし仕方ないか。
しかし、ここでは円じゃなくルンって言うんだな。
「良し、暫くは魔物を倒しながらお金を稼ごう。というかリューネ達はお金持ってるの?」
「私は持ってるけどそこまで多くないわ。必要なかったからね」
まあ、精霊だしね。
「ブラックは?」
「我は持ってない。腹が減った時は勝手に食ってるし寝るところはどこでも良いからな」
さすがドラゴン。
考え方が魔物ですわ。
「ん?でもさブラックって魔物だろ?同じ魔物同士襲われるとかあるのか?」
「我は魔物じゃない。ドラゴン族だ。魔族の獣と一緒にするでない」
んん?
どいこと?
「ドラゴン族?魔族?」
「え~っと、この世界には色々な種族がいるの」
リューネが説明してくれる。
「人族に魔族、ドラゴン族、精霊族といるの。で、ブラックはドラゴン族でマサキが倒したのは魔族のスライムって事よ」
なるほどなるほど。
つまりだ…
「人間からしたらドラゴンだろうがスライムは魔物と思ってる事かな?」
「そうね。人間からしたらどっちもモンスターとして考えてるわね」
そりゃあそうだわな。
どっちも人間からしたら有害な生命物だからな。
「うん。なんとなくこの世界の形態はわかった。けど深く考えず自分にとって敵だと思ったら倒すようにするよ」
「ええ、それで良いわ。レベルアップするには倒すしかないからね」
良し、なら今はスライム狩りをしよう。
後お金も欲しいしね。
あれから、歩き続けるとスライムばっかり現れる。
勿論倒しまくってます。
で、今目の前にいるスライムで100匹目だ。
「えい!」
戦闘は多少ましにはなったと思うがだいたいは一撃で死んでいくから技術は磨かれてはいない。
今も体当たりしてくるスライムを避け地面に着いた所を右足で蹴り上げる。
グチャ
スライムのこの感触は嫌なもんだ。
スライムは蹴りで液体が飛散し少し経った後消えた。
「良し、これでお金もちょっとは溜まったぞ」
今、銅貨が120枚ある。
スライム1匹に銅貨1枚だと思ってたのだが2枚3枚持ってるスライムもいた。
「後はレベルアップしてくれれば良いんだがな…」
そう、言った直後
《レベルアップしました》
お?
「リューネ。どうやらレベルアップしたみたいだ」
「あらそう?なら、ステータス見てみたら?」
リューネに言われステータスを見てみると、確かに1あがってレベルが2になってた。
その他は…うん。変わってないな。
「というか、スライムだけじゃやっぱりレベルアップは遅いのか…」
「まあスライムだからあまり経験値は貰えないわね」
だよね~。
だからと言って強い魔物に挑むほど無茶はしない。
何事もコツコツやる事が大切なんだよ。
「仕方ない。暫くはスライム倒しまくろう」
焦ってはダメだからね。
「ふ~」
あれからスライム以外にもウサギに角がついた魔物や一つ目の犬の魔物が出てきた。
ウサギの魔物はスライム同様体当たりしかしないんだが角を武器にしてるぶん厄介だった。
ただ、やっぱり攻撃は効かなく一撃で倒した。
スライムよりはお金も落ちたまに角がドロップする。
で、犬の魔物は噛み付いてくる。
ええ、最初噛み付かれた時はビビリまくりましたよ。
日本にいる時小さい頃犬に噛まれてから苦手なんだよ。
この犬の魔物も一撃で倒せた。
というかだよ?
このリューネからもらった服の防御力が半端ない。
で、ブラックやリューネはと言うと何もしてない。
全部俺が倒した。
あいつら興味がないのか一緒に戦ってくれないんだよ。
これだから、レベルが高いやつは…。
後、レベルアップしてからスライムから攻撃されないようになった。
見つけても逃げていく。
リューネ曰く魔物も勝てない勝負はしないよう本能に植え付けられてるらしい。
確かにスライムが攻撃してきたのは俺だけだった。
チクショウ!
でも、俺もスライムから攻撃されなくなったし!
…とりあえず進みながら戦ってたんだがレベルアップは一切しなくなった。
で、辺りは暗くなったし一旦歩くのやめてキャンプする事にしたんだよ。
「しっかし便利だよなーリューネの結界は」
今、テントを張り中で話してる。
夕飯はリューネの手作りを食べた。
美味かった。
食材とかはなんかアイテム袋に入れててパパッと作ってくれた。
で、夕飯食べた後特にすることもなくテントの中で独り言を言ったわけだ。
流石に一つのテントにブラックとリューネと一緒に寝るわけにはいかない。
リューネ達は気にしてなかったが、俺の精神がもたないから別々にしてもらった。
リューネとブラックは隣のテントにいる。
しかも、このテント。
何がすごいかって、魔物避けの結界が張られているらしい。
だから、安全に寝れるとか。
勿論テントはリューネから借りた。
リューネは暇潰しに作ったみたいなことを言ってたが…やっぱり只者じゃないよリューネは。
「マサキいるか?」
ブラックがテントに入ってきた。
「どした?なんかあったか?」
「いや、何もないがちょっとな…」
何か言いづらそうな感じだな。
ブラックがこういう感じになるのは決まってる。
「また、リューネと何かあったのか?」
リューネの家に居た時からブラックはリューネの付き合いにちょっと嫌がってた。
でも、リューネも本当に嫌なことはしてないし単純にブラックがそういうの苦手なんだろ。
「アヤツ、急に胸を揉んできてな。こんなもんどうやって大きくするのよ。とか言いながら真剣にな。我は知らない、と言ったがずっと揉んでくるもんで逃げ出してきた」
羨ましいじゃねーか!
何、リューネは男からしたら羨ましい事してんだよ。
混ぜてくれよ!
「そ、そっか。で、こっちに逃げてきたわけか。ブラックの力なら無理矢理止めれそうだが…」
「あの時のアヤツは間違いなく我より強い…。ふ~。暫くはここにいさせてもらうぞ。というかだ、我はマサキの僕だ。本来ならマサキと近くにいないといけないわけだ」
「いや、流石にさ一緒のテントにいるのはどうかと…」
ドラゴンとはいえ今は普通の美人な人間だしね。
「マサキもおかしな奴よのう。今は人間になってるが元々はドラゴンだ。欲情することは無かろうが」
「ドラゴンはドラゴンだけど今は人間だから困るんだよ!!」
「めんどくさいのう。ま、暫くは…というかこの旅で寝るときはマサキのテントで寝るからのう。リューネとはゴメンだ」
そう言って寝っ転がった。
は~。ダメだ。でてくつもりはなさそうだ。
まあ、二人並んで寝てもまだ余裕はあるから良いんだが。
「とりあえず、今日は良いけど明日からはまたリューネと寝てくれよ」
あまり希望は出来ないが注意をしておく。
俺だってさ男なんだから我慢は辛いんだよ。
ドラゴンだろうが美人には変わらないし。
でも手を出した瞬間殺されそうだな…。
うん。寝よう。
「よいしょ~」
突っ込んでくる犬の魔物を避けながら右足で蹴り上げる。
犬の魔物はギャウンとか言いながら地面に倒れこむ。
少し経って消えた。
「マサキ、だいぶ動きがスムーズになってきたわね」
「そりゃあ毎日一人で必死こいて戦っていれば自然と戦い方を学ぶわ!」
リューネの家から出発して1週間が過ぎた。
あれから特にイベントとか起きずに順調に進んでいる。
毎日毎日犬の魔物とウサギの魔物を倒してたらどう避けるとか勝手に動けるようになった。
いや、村人Bから初心冒険者並みに上がったくらいかな。
「って、あれ?あこに見えるのって…」
ずーっと先に壁が見える。
「あら、見えたわねイースル国が」
「マジか!?」
長かった。
普段車ばっかり使う俺にとって歩き続けることは本当に地獄だった。
二日目あたりはもう筋肉痛がやばいのなんの。
そんな中魔物と戦った自分を褒めたい。
テントで休もうにもブラックとリューネのやりとりで精神的に疲れるし。
リューネは見た目に反して中身は子供みたいだ。
「これで、宿で休める!」
「ふふ。確かにテントじゃ体が疲れるわね」
「そーなんだよな。贅沢言うわけじゃないがベットで寝たい気分だよ」
慣れたとはいえテントで寝るのは身体が辛いんだよ。
おじさんの身体を舐めちゃいけないぜ!
暫く歩いているとイースル国に近づくにつれて草原から剥き出しの大地へと変わっていった。
「なあ、ここら辺木とか無いけど」
「恐らく魔物とか攻めてきた時に分かりやすいように全部刈ったんじゃないかな?」
なるほど。
国を守るためか。
仕方ないことだな。
命あっての話だからな。
しかし、何か忘れてる。
大事なことを見逃してるような…
「あっ!!」
「マサキどうしたのいきなり声出して」
そーだよ。
壁があるって事は門番兵もいてもおかしくはない。
ゲームや小説だと入る時に身分証明書を見せなきゃ行けないはずだ。
「あのさ、今から行くイースル国には門番兵がいるんだよな?」
「そうね、いるわね」
「入る時って何か必要なのか?」
「ん~ギルドカードがあれば入れるはずよ。無かった時はステータスを見られるんじゃないかしら?」
やっぱり。
それはマズイ。
「ッチ!やっぱりか。どーしよ。ギルドカード無いからステータス見せなきゃだけど…」
二人を見る。
「俺もだけど二人のステータス見られたらそれこそ大騒ぎなるよな~」
「我はかまわん」
「ブラックはちょっと黙って!…どうしたもんか…」
「別に私もステータス見られたってどうでも良いわね。でも、そうだな…マサキとブラック一回ステータス出して」
「何するんだよ?」
「良いから」
リューネに言われた通りステータスを出す。
「はい」
リューネが俺とブラックのステータスの上で右手でふわっと右から左に移動させた。
すると…
「え?文字が変わってく?」
「何したんだ?」
文字が変わりステータスが完成した。
ブラックのステータスで変化したのは
Lvが990から50になっている。
HPも700になってるしMPは40とか激減してる。
スキルも無くなってる。
俺との関係も召使いになってる。
で、ブラックの名前の横に【拳闘士】とついてる。
俺も似たようなステータスの変化がある。
Lvは18になっており
HPとMPはお互いに150になってる。
スキルはブラック同様無く
ブラックとの関係は絆とか無くなり単純に主人となってる。
で、名前はフルじゃなくマサキだけで横には【冒険者】となっている。
「ステータスの上書きよ。幻術魔法でのね。そうそう見破る人間はいないわ」
「マジかよ…そんな事出来るのかよ。リューネのステータスも見せてよ」
「良いわよ」
リューネに断りを入れて見せてもらった。
リューネの精霊王は無くなっており【魔術師】となっており
Lvは60となっており
HPは200と低いがMPが1000と高くなっている。
スキルはもちろん無い。
「これでなんとかなるでしょ」
「う~ん…まあさっきよりは幾らかはマシだが…仕方ないこれで行ってみよう。ダメだったら…次の国か村か探そう」
とりあえず、今はこれで行ってみよう。
そう、決心しイースル国に歩き始めた。