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団長目線です。
「どういう事でしょうかこれは」
私達が通ってきた道が無くなったのだ。
一番最初にマークス殿が走っていき殿を私が走っていたのだが、通路先にある部屋に私が入ると同時に通路が消えた。通路があった場所にはただの壁が現れた。
「ん~、魔力が完全に捉えられないね」
リューネ殿がそう言う。
……。確かにマサキ殿と勇者の魔力が無くなった。
いや、無くなったのではなく
「マサキ殿達は魔力を感じ捉えれない違う空間に隔離された、とみて良いでしょうか」
「そうね。その可能性が一番高いわね」
「勇者の仕業か?」
「多分違うわブラック。勇者にそんな事出来ない。そもそもマサキだけを別にしてなんの意味がある?恐らくだけど勇者はマサキに巻き込まれた、と思った方が良いわね」
リューネ殿の言ってる通りだと私は思う。
勇者の力は確かに恐る存在だ。だが、こういう風に別々の空間に飛ばす力は無い。
「ふむ。なら、先に進むか。我が主人は大丈夫だろう」
「まあ、確かにマサキの事だから何かあっても大丈夫でしょう。マサキだし」
「確かにマサキ殿ですしね」
マサキ殿は理由をつけては動こうとしないダラシない人ですが、肝心な時には全てを解決する人だからきっと大丈夫。だから
「先に進みましょう。先に行けばマサキ殿と会うかもですね」
皆んな頷き部屋の中を進む。
出た部屋は大きい部屋だが特に何も無い。
本当に何もない。真っ白な部屋。
「しかしこの部屋は本当になんなのかね?前も来た時も何にもなかったんだよね」
マークス殿が部屋の中を歩きながらそう言う。
「確かに何も無い真っ白な部屋ですよね~」
スレイル殿が辺りを見渡しつまらなさそうに話す。
「下のこの真っ直ぐ次の扉までの続いている黒い道が無ければ方向感覚が狂いそうですね」
「確かに。しかし、一体なんの目的でこういう部屋を昔の人は作ったのかね」
その意見に誰も答えない。それはそうだ。作った人達以外は真実を知るわけないのだから。
マサキ殿がこういう話をすると決まって“考えても分からないモノは考えない事だ!”
って言うのが目に見えて分かる。
「さあ、次の部屋に行こう」
扉まで行きマークス殿はクルッとこっちを見た。
「次の部屋は前に来た時と同じ部屋だったら罠が沢山ある。団長さんはお嬢さんを担いで罠に引っかからないようにして欲しい。魔力探知が長けてる者が多いから引っかかるとは思わないが注意してくれ」
その言葉に皆んな頷く。
「マサキがいたら恐らく罠にワザと引っかかりながら進むと思うけど、あくまでマサキだからできる事だから。本来は即死級の罠だらけだから気を引き締めてね」
「マサキと同じにされるのは癪。アレと同じにしたらダメ!」
エミリア様がプクーとしながら私の背中に乗った。
「マークス殿。確かにマサキ殿と一緒にされては私たちの体が持ちません」
私も苦笑いしながらそう答える。
「……仲が良いんだね。良い事だ」
マークス殿は私達を見てそう言う。
「さあ、行きましょう。ここからでも分かるくらい罠が沢山仕掛けてあるわ。さっさと通り抜けましょう」
「分かるのかい?流石だね。私や団長さんは全く分からない。リーティやスレイルはどうだい?」
「分からないです~」
「分からない」
流石はリューネ殿。私にはまだ感じられない。恐らくだがこの部屋が一種の魔力妨害の罠だと思われる。
大概罠と言うのは設置するときに少なからず魔力を使う。この魔力を感じられない程までに少なく設置出来る者は一流として重宝される。
だから、私達は目に見えない罠を魔力探知で探りながら避けて進む。
「伊達に精霊王ではないということか……」
「おぬしら何をゴチャゴチャと話してるんだ?我は先に行くからな」
ブラック殿はそう言って扉を開けてさっさと歩いて行った。ブラック殿は罠などものとせず歩いている。色々罠を踏み歩いているせいか矢やら魔法やら毒煙やら出ているが全く効いてない。
「ブラック殿はマサキ殿に似ていますね。やはり従僕関係は伊達じゃないですね」
「と言うかだよ。罠をほとんど踏んでいるお陰で私達が通れる道が出来てるよ」
マークス殿の言う通り歩ける分の道が出来ている。
「流石はドラゴンな訳かい」
マークス殿がブラック殿を見て呟く。
そうなのだ。今は可愛らしい姿であるがブラック殿はドラゴンなのだ。しかも、ドラゴンの中の王。
ドラゴンとは本来人類と仲良くはなれない。
それはそうだ。ドラゴンの方が圧倒的強者なのだ。
だが、何故ドラゴンが世界を制覇していないかと言うとただただ単純な話。人類の方が数が多い。
まあ、だからと言って殲滅できるかと言えば出来ない。ドラゴンとは基本Sランクの人間が倒せる生物なのだ。Aランクの人間が数チーム組んで倒せるかどうか、なのだ。
固い鱗。岩を簡単に切り裂く爪。吐き出せば燃やし続けるまで止まらない炎。
個体でそれなのだから複数現れたらもう天に祈るしかない。
そんなドラゴンの王。ブラック殿。
柔な罠じゃ効き目は無い。改めて考えると仲間で良かった。
「ん?なんじゃ?我の顔になんかついているか?」
ブラック殿が壊した安全な道を歩きブラック殿の顔を見ていたら、頭を傾げそう言ってきた。
「いえ、流石だなぁ、と思いまして」
「ふむ。普通じゃぞ。さっさと行くぞ」
罠が設置している通路を安全に通り次の部屋へ移る。
「全く。ここも変わらないね」
マークス殿がウンザリする様に溜息をつく。
その部屋は明らかにおかしい。幾つもの扉に幾つかの階段。数は分からない。何せ上や左右見る限りある。
「ここは……“迷道の扉”ですか。噂には聞いていましたが実際見たのは初めてです」
「団長さんはしっているみたいだね。そう、ここは正解の扉を開かなければ次に進めない迷惑極まり無い罠の部屋。しかも、毎回正解の扉は違う」
扉の形はそれぞれ違う。また、階段も段数が違う。
それだけじゃない。
「魔力で探知しようにも出来ないんだよね。私達も前来た時は本当に困ったもんだよ。まさか、魔力で造られた扉じゃないんだからさ」
マークス殿が言った通り。扉だけじゃなく階段まで一切魔力を感じない。つまり、魔力を含まない何かでこれ達は造られている。
部屋自体は魔力を微妙ながら感じるのだが……。
ただ、部屋自体も特殊な……今の時代では造れない何かで造られている。
こうも分からない事だらけだと興味が湧く。
これだから遺跡やダンジョンは面白い。
「なかなか面白いわねここ。罠は罠だけど魔法じゃない古代造りか。私も久し振りに見たわ」
「壊したらダメなのか?」
ブラック殿が腕を振り回す。壊す気満々ですか。
「ブラック止めておいた方が良いわ。単純な力で壊そうものならこの部屋自体が壊れるわ。扉や階段自体が部屋と同化してる。つまり、力で壊す事を完全に出来ない様にしている」
「ふむ。なら仕方ない。つまらんのぉ」
「あの……」
ここでエミリア様が手を挙げる。
「どうしたお嬢ちゃん?」
マークス殿が答える。
「前来た時はどうやって正解の扉を見つけたのですか?後、間違えたらどうなるんですか?」
「まあ、そうだよね。疑問に思うのは当たり前だよね。そうさね、前来た時は勘で当てたのさ。私じゃなくエルフの仲間がねこれって決めたのさ。なんか感じたらしくそれに従って扉を開けたら進めたのさ」
「へ~」
エミリア様がエルフのお二人を見る。二人とも目をそらす。
スレイル殿とリーティ殿はエミリア様と目を合わさない。
「わ、私達はそんな奇跡みたいな力は無い!その、マークスさんと一緒にいた人はちょっと特殊な人で……簡単に言えば勘が良すぎるんだよ。魔法じゃなく特別な力で……」
「そうなのよ~。だから隠し事とか出来ないから困ったのよね~。いつも嘘ついたらバレちゃうから」
ふむ。魔法じゃなく特別な力か。人間で言えば勇者みたいな存在かな?魔力探知で捉えれない力となると厄介極まりない。まあ、そんな力を持っているのは数に限りはあるだろうけど。
「はいはい、話を戻すよ。えーっと間違えた場合だっけな?間違えた扉に入ると死ぬわけじゃない。ただ、今いるこの場所に強制的に戻る」
「それなら……」
「ただし。正解の扉はまた変わる。だから、厄介なのさ」
「え?変わるの?」
「どういう原理か分からないが変わる。ここに来た昔の人が何を思ったのか実験したらしい。その結果扉は変わるという結果が出たのさ」
「そうなると当てるのは中々難しいですね」
「団長さんもそう思うよね。私もね勇者と彼がいたら恐らく通れたんじゃないのかなぁと思うのよ」
マークス殿が腕を組み考える。
確かに。勇者殿とマサキ殿。彼らは特殊の中でも特殊。だからこういう場面ではとても助かる。
「魔力で探知してるけど本当に全て魔力が無いわね。造った奴は優秀なのかオカシイ奴なのか。魔力で調べれれないとなると私は無理かな。というか興味が無くなっちゃったからどうでも良いかな」
リューネ殿が欠伸をしながらつまらなさそうに話す。私達からしたら神秘にすら感じる古代罠は興味が無いらしい。
「我も壊せないならどうでも良いかのぉ」
ブラック殿もその場で寝る始末。
「ははは。全く自由な人達だ。普通なら頑張って探すか絶望を感じてあき……」
その時全員がある扉に目を向ける。
圧倒的な魔力が扉の先から放たれている。それは扉を通じて遮断されているはずなのに感じるのだ。
「ね、ねえ。この禍々しい圧は何?」
エミリア様も感じている。
「そーいえば言ってなかったね」
マークス殿が冷や汗をかきながら言った。
「次の部屋にあの怪物がいたんだよ」




