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魔族の少女……いや、今は立派な大人になっていて服装は少女の時の大人バージョンだ。


少女の時の面影は残っているがもう体が全然違う。


ブラックよりは控えめだがリューネよりは出ている。


《あの、痛いんで離してくれますか?いや、離してくださいお願いします!!》


魔族の少女……少女じゃないから魔族で良いか。


頭にアイアンクローされて涙目になっている。


「仕方ない。離してやるから事情を説明しろよ?」


《分かりました!!分かりましたから……痛い痛い!!何でキリキリ強く締め付けるんですか!?》


「なんとなく?」


《酷い!!》


うるさいから仕方なしに離してやった。


魔族は俺の上から速攻で退いて頭を抱えてる。


ゆっくりと立ち上がり辺りを見渡す。


うん。この魔族の声だけ聞いた空間だな。


「で、どうしてあの“記憶”を見せた?しかも死にそうだったんだが?納得出来る理由を話さなかったら……」


《話します!話しますから指を細かく動かさないで!?》


これじゃあ話が進まないな。


とりあえず座る。


《全く……記憶を護る“守護観”に手を出せるなんて聞いたことないですよ。もう》


魔族はブツブツ言いながら俺の前まで来て座った。


「それじゃあ俺から質問するからちゃんと答えてくれよ?」


《あ、はい。……私なんでこんなことになってるんだろう。私、神に近い存在……》


「あ?」


《何もないです!!さあ、質問してください!!》


魔族はブツブツ文句言ってたが直ぐに正座した。


「先ずはお前はあの記憶で見た魔族の少女で合ってるな?」


《はい。合ってます》


「次に今お前と話しているのに何で直接頭に声が聞こえてるんだ?」


これはずっと思っていた疑問。


話しかけられてはいるが声が頭に直接来る。


どういうことかと言うと口が一切動いてない。いや、動かせないんだよ。縫われているから。


《その話は詳しく話すと難しくなりますが、簡単に言えば魔力に言葉を含ませて直接聞こえるようにしてます》


「なるほど。よく分からないがとりあえずは魔力を使って話してるって事は分かった」


《見た目通りでしたかやはり》


こいつ……。


《つ、次の質問に行きましょう!!》


「全く。それ痛くないのか?」


口を指して言う。


見た感じ只の糸じゃない。


《今は痛くありません。心配してくれるんですか?》


「目の前に口を“呪いがかかった糸”で縫われてたら、そりょあ心配するさ。呪いがかかってなくても普通に心配する」


《ビックリです。気付いてたんですねこの糸が普通じゃないって事を》


「まあな」


《この糸は“永久に縛り付ける糸”です。その名の通りに死んでもこの場所から逃げれないようにする糸……だったんですが、つい最近急激に弱まったのです》


「それはいつからだ?」


《そうですね……。ここから離れた所にある神秘の森という場所に異質な魔力を持った“何か”が現れた時からですかね。そう、貴方みたいな魔力を持った何かが》


完全に俺じゃないか。つか、こいつは気付いてるな。


「隠すことじゃないか。まあ、多分俺じゃないかな?神秘の森に現れたのは俺だけだし」


《そうだと思いました。本当に異質な魔力なので。だからこそ生き残れたんだと思います。まあ、私の呪いが弱くなって消える前に記憶を継承出来る“勇者”が現れなかったので焦りましたが、結果オーライです》


魔族はニコっと笑い親指と人差し指を丸くしてOKの形にする。


「とりあえず、お前の事はこれで聞かない。色々ありそうだがあと少しで消えるだろ?」


《……どこまでもお見通しですか。流石です》


魔力感知でこいつの魔力はほぼほぼ無い。


つまり、本当にあと少しで尽きる。尽きるという事は死ぬという事だ。


恐らくだが呪いにより魔力を抑えられてたのだろう。それが結果的には良かったんだ。


「色々と質問したいが一つだけ聞く。記憶を継承する事で“あいつ”に勝てるか?」


《勝てます。ただ、まだ勝てません。それだけしか今は言えません》


「充分だ!勝機があるならそれだけで充分だ。どうやら俺は負けっぱなしは嫌なようだ」


あの圧倒的な力に恐怖を覚えた。そして怒りも覚えた。勝てないなら勝てるようになれば良いだけだ!


《では良いんですね任せても?》


「嫌だ……って言ってもどうせ強制だろ?なら、アイツに勝つために乗ってやるよ!」


《良かった……貴方みたいな人が……》


魔族はニコって笑い涙を流す。


そして、指を俺のおでこにつける。


その瞬間あり得ないくらいの記憶が流れてくる。


気付くと俺は寝ていた。


最初の入ってきた部屋に。


記憶が入り込んできて意識を失った。


触られた瞬間死にたくなるくらいの痛みが襲い耐えれなく意識が切れたんだと思う。


起き上がり周りを見渡す。


うん。これは夢じゃなく現実の世界だ。


「さて、どうしたものか……ん?」


入り口はまた扉が復活しており切らなきゃ恐らくリューネ達の元に行けない。


扉を触っていて自分の右腕に何かが刻まれているのを気付いた。


手首から肘にかけて刻まれているそれはまるで鎖だ。


「痛くはない。つか、なんだこれ。絶対バカにされるぞこんな腕にしてたら」


どこぞの王女様とは言わないが絶対言ってくる。


『マサキ……ぷ』


ってな。


あ、想像するだけでデコピンしたくなる。


俺がアレコレ考えていると、触れていた扉が光り出した。


《勇者の方へ行きますか?仲間の方へ行きますか?》


機械音が頭に流れてくる。


え?


なんだ急に。


目の前には矢印が二つ出ており左が勇者。右がリューネ達の方へ行けるようになっている。


腕を見る。さっきまでなんともなかったのに今は青く光ってる。


あ、なるほど。つまりこいつのお陰で開けたわけか。


ただ、なんでこの刺青は刻まれた?


まあ、考えれば一つしかないよな。


あの記憶を渡されたからだろう。つまりは継承者的な?


「使えるもんはとことん使わせていただきます!」


俺は腕から視線を外し左の矢印を見る。


「リューネ達には会いたいが、流石に一人で残して死んでしまわれても後味が悪い」


俺は勇者の方へ行くことにした。


左矢印が光り俺を包み込んだ。


光が薄まり勇者といた草原に来た。


うん。見渡す限り見えないけど勇者の魔力は感じる。何でか動いていないな。まあ、いいか。


《勇者の元へ移動しますか?》


また、聞こえた。


移動しているにはしているのだが、これは……


「まさか勇者のいる場所に一瞬で移動出来るのか?」


《承諾しました》


そう聞こえたと思ったら俺は勇者の目の前に移動していた。


「……君はどうやって現れたのかい?」


「え?瞬間移動」


「そういうことじゃなくて……」


「言いたいことは分かる。だが、事実瞬間移動したんだよ。後、その後ろにいるのは何だ?」


勇者の目の前に移動して、気付いた。


白い女性の形をした何かがいる。全て白く目も鼻も無い。だが、いる。


「……君は本当に何者だい?」


勇者は警戒丸出しで聞いてくる。それこそ俺を殺すつもりの魔力をただ流しにして。


「先程までいた怪物が君と一緒に消えたと思ったら目の前に急に君が現れて、今まで見えてなかった“神の使い”まで見えるようになってる。説明して貰えるかな?」


なるほどね。勇者にはそう見えたのか。


しかし……


「“これ”が神の使いか?」


「神の使いに“これ”とは……」


あ、勇者が完全に攻撃してこようとしてる。


《マスターに対して攻撃意思を感じられる生物を発見しました。対処します》


「え?」


頭の中の機械声がそう言うと勇者は急に倒れた。


急に倒れた勇者。


殺意が無くなり本当に気絶したみたいだ。


《対象目標が意識を失ったのを確認しました。消滅しますか?》


「いや、殺さないでくれる?」


《了解しました。もう一体の“意思がある存在”を消滅しますか?》


意思がある存在?


ああ、この白い何かか。


俺はそれを見つめる。


それも俺を見てくる。


「なあ、お前って昔々少年に召喚されたか?」


白い何かはゆっくりと頭を上下に振る。


やっぱりか。いや、分かっていなかったけどさ。


勇者を守るように俺の目の前にいるそいつはあの記憶に見た召喚されたヤツと重なって見えた。


「そうか。なら、そいつが少年の生まれ変わりか」


また、頷く。


「うん。分かった。ということで消滅は無し。というかさ知ってたろお前」


《……》


こいつ……。


「ん……」


どうやら勇者は目を覚めたらしい。めんどくさいな。どう説明しようか。


「はっ!?」


一瞬で立ち上がりまた俺を警戒する。


「え?何で?嫌だ!」


勇者が急に白い何かから聞き驚き拒否する。


表情豊かだなこいつ。


まだ、二人で話してる。


一応勇者が俺に対して攻撃した時に対応するために足に力を入れてる。


攻撃する為にじゃなく逃げる為に。


だって相手は勇者だぞ?逃げるに決まってるだろうが。


「……分かった」


お?


どうやら勇者が話を終えたらしい。


良し。逃げる準備を……。


足に力を入れ勇者が来たら逃げようとした時、勇者が俺の顔を見て膝をついて頭を下げた。


「……納得は出来ないが無視も出来ないからな。私、勇者はマサキに一生ついて行く事をここに誓う」


「馬鹿じゃないの?」


「な!?馬鹿とは……」


「馬鹿だろ!!何故そうなったんだよ!?つか、白いやつ!何を話してこうなったんだよ!?」


「私だって納得していない。だが、神の使いがマサキに一生ついて行きなさいってずっと一方的に言ってくる。今までこんな事なかったのに」


「いや、本当に意味がわからないんだが。つか、白いやつが薄くなってないか?」


「え?」


白いやつは先程より薄くなっている。


まるで、自分の役目は終わったと言わんばかりに。


「神の使い!!」


勇者が白いやつに声をかけた瞬間、白いやつは消えた。


白いヤツが消えた。


存在を消して隠れているわけでもなく、消えたのだ。


「……」


勇者は白いヤツが消えた場所をずっと見てる。


多分、消えた理由を考えてるのかな?


俺だって今の現状を無い頭を使って考えているけど全く分からない。


「神の使いが消えた……私は一体どうすれば……」


膝をつき頭を抱える。


「まあ、なんだ。俺が言えた義理じゃないが好きにすれば良いんじゃ無いかな?」


「好きにすればだと?神の使いのお陰で私は色々助けてもらったりしたんだ。それを今更好きにしろだと?」


「でもよ。その神の使いが消えたお前は何をするかこれから自分で考えなきゃいけないんだぞ?神の使いの助けを求めるなら神の使いが言った言葉通りにしなきゃいけない。それこそ俺についてくる羽目になるぞ?まあ、着いてきたってロクなことは無いから辞めた方が良いけどな」


「ッ……」


勇者は唇を噛み締め下を向く。


俺的には着いてきてほしく無い。勇者だぜ?俺たちみたいなトラブルしか起こさないパーティにいるくらいなら国のために戦った方が良いだろうよ。


後、イケメンだから余り隣に並んでほしく無い。


「つーことで考えとけよ。俺はリューネ達に会いに行かなきゃならない。あいつら絶対トラブル起こしてるから止めなきゃな」


ったく。唯一まともなのが俺だけだから大変だよ。全く。


俺がリューネ達の魔力を探ろうと鎖にお願いしようとした時服を引っ張られた。


「なんでしょうか勇者様?」


勇者は下を向きながら俺の服を引っ張る。


「ひ、ひとつ約束してもらっても良いか?それを守ってくれるなら私はマサキ達に着いて行く」


「……内容によるかな。無理な約束は出来ない」


「私が今から見せる事を誰にも言わないで欲しい。それこそマサキの仲間にでもだ」


リューネ達にも言えないものか。


どうしたもんかね。


「リューネ達に言ってはいけない理由は?」


「私が勇者だからだ」


「意味が分からん。じゃあなんで俺は良いんだよ?」


「神の使いに認められたからだ」


「なるほどね。んー……仲間になるならやっぱりリューネ達にも知ってほしいかな。あいつらはああ見えて信用出来る。それこそ俺よりもだ」


「……。分かった。私の見せるものを見て判断してくれ」

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