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殴った感触がした。


この世界に来て初めての感触。


硬い。


少年は全力で殴ったせいかだいぶ吹き飛んだ。


日本にいた時に比べてだいぶ力をつけたからその威力は圧倒的なんだよ。


その力でもあの真っ白な“仮面”は壊れるどころかヒビすら入らなかった。


少年が言葉を放った時、顔を見せた。その顔には真っ白な仮面を被っていた。


いや、仮面なのか?


仮面であって欲しい。


『酷いないきなり殴るなんて』


「うぐっ!?」


後ろから少年の声が聞こえたと思ったら右腹に強い衝撃が走る。


威力のまま俺は十数メートル吹き飛ばされた。幸い全て触れれないお陰で家とかは壊さず俺だけ吹き飛んだだけで済んだ。


『この記憶の世界に何故神の使いであるお前がここにいる?』


真上からこちらを睨んでくる。


いや、目や口が無いから実際は睨んでいるかは分からないが感じ取れる。


怒りの感情を。


「き、記憶の世界?」


息を整えながら相手の話に合わす。


『なるほど。あの子供の仕業か。流石というか呆れというか』


腕を組み少年は考える。


良し、呼吸は整えれた。


足に力をいれ『甘い』


俺が力を入れようとしたその時少年はかかと落としで頭を蹴り抜いた。


地面に当たる感触は無いがとてつもない力が頭に加わり意識が飛びそうだ……。


『ほぅ。神の使いだけある。これだけ攻撃して死なぬどころか意識を保てるとは』


少年は倒れている俺の髪を掴みそのまま宙に投げた。


俺は宙に浮き“固まる”


「お、落ちないだと?……そうかお前が」


『まだ話す余裕があるようだな。まあ良い。貴様は運が悪い。俺と出会うなんてな。良いや違うな。運が良いな。俺に殺されるなんて』


少年は右手に禍々しい魔力を集め、そのまま俺の心臓に突き刺した。


「はっ!?」


気がつくと俺はあの草原で寝ていた。


「なんでここに?いや、死んだ……!?」


確かあの少年に心臓を突き刺されて死んだはず。


慌てて心臓付近を触ると何ともない。


肌が破けているどころか服すら破けていない。


「どういう事だ?心臓を刺されていない。夢オチとかか?いや、そんな馬鹿な。あの痛みは本物だった」


圧倒的な暴力。


この世界に来て初めて思いされた“勝てない”という感情。


「お、落ち着け。震えるな震えるな!」


身体が震える。


恐怖。


だが、何故俺は生きているんだ?


辺りを見渡しても特にこれといった……。


「何でお前が死んでいるんだよ!?」


俺の背後に少年が倒れていた。


あれだけ圧倒的な魔力を感じていたのに今は一切感じられない。


それに全身に穴が空いている。


恐らく人間ではないのであろう。血が流れていない。穴の部分は人肌では無く素材的には木に近い。


「誰だこいつをこんな一方的にこんな事が出来るのは?」


分からない。


ただ、分かることはある。俺が意識を失って誰かが助けてくれた事だけは分かる。


リューネか?ブラックか?


いや、無理だな。あいつらじゃあ倒せない。


そもそもこの世界にいないだろう。


なら、勇者か?


いや、無理だな。あいつじゃ倒せる可能性があっても“戦い方”が恐らく違う。感だが。


なら、誰だ?


「むむむ。分からん。だが、助かったのは事実だ。今はそれを全力で喜ぼう」


死んでいる少年を少し見た後、辺りを見渡す。


どうやら近くに魔力の塊がある。


つまり、村の近くにいるわけか。


「行ってみるか。ああいう痛い目にあうのは嫌だが何もしないでここで終わるのはもっと嫌だ」


村の入り口に入る所まで普通に歩いてきていざ入ろうとした時嫌な予感がした。


「まるで入ったら嫌な出来事が起きるみたいな。いや、違うなもう“起きてる”だな。この感覚は馬鹿には出来ない。説明出来ない何かは必ずある。だが行くしかないから困る!」


右手を魔力の塊に触れさせると体ごと吸い込まれた。


「馬鹿な!?」


目の前に広がる景色に驚愕する。


辺り一面火に包まれている。


草原にいた時は明るかったんだがこちらへ来ると夜になっていた。だが、火の明るさで辺りが明るい。


何故だ?あの家は早々に破らられはしないと思っていた。だが現実に今全て燃えている。


「誰が?いや、ちょっと待ておかしいぞ。おかしい。何かがおかしい!考えろ俺!」


目の前に広がる火の海に意識を取られていたが感じな大事なことを見逃してはいないか?


なんだ?


なんだ?


「……人一人いない?そうだそれだ!人間や魔族が誰一人いない!まるで全員家の中で死んでいるみたいに……」


嘘だろ?


俺は魔力探知した。


いる。


いるが……全員家の中じゃなく今まで行ったことがない村の向こうに集まっている。


「とりあえず死んでいない。良かった」


心からホットする。知らない人達だがやはり火事で死んだら後味が悪い。


生きてると分かったら少し余裕が出来た。


辺りを見渡す。本来なら火の熱さで息すら出来ないだろうが全く熱さを感じない。実際に火が俺に向かって風のせいなのか当たったりしてるがすり抜ける。


中を見ようにも触れないし、仕方ないから集まっている場所に行くしかない。


「いったい誰が……と言いたいところだが恐らくあいつだろうな」


俺に話しかけてきた白い仮面の少年。


アイツがこの騒動を起こしたのだろう。


じゃなきゃアイツは俺の目の前に現れないだろう。


村を抜け森の中へ入る。


火が森の木々に移り燃え広がる。


まあ、明るくなったとしか思わない。火傷すらしないんだから逆に探しやすくなったと思おう。


村から出て30分ぐらいは歩いただろうか。


火はある一定の場所で燃え移らなくなった。まるでシールド張っているみたいにそこからは火が広がらない。


そして、目的地に着いた。


俺達が来た遺跡があった。


「へ?なんでこの遺跡が?」


確かに俺達が来た遺跡だ。


しかし、何処か雰囲気が違う。


何だろうか……うん。分からないし今はどうでも良いや。


全員遺跡の中の最初の部屋にいた。


目には見えないけど魔力探知で全員そこにいるのが分かった。


遺跡の入り口に立ち気付いた。


俺、触れないから開けないんじゃ?


試しに入り口の扉を触ろうとしたらすり抜けた。


やっぱり。ん?すり抜ける?


あ、そっか。別に開く必要無いんだ。すり抜けるならそのまますり抜ければ良いや。


俺は扉に向かい歩き始める。


案の定、扉を抜けて最初の部屋に入れた。


そこには異様な光景だった。


魔族の少女と人間の少年。


その二人に全員が手を組み膝まついて、魔族は魔族の少女に。人間は人間の少年に魔力を与えていた。


それだけじゃ無い。魔力とは別の違う力も少女と少年に渡していた。


少女は涙を流し、少年は目を瞑っているが口を一文字にして我慢している。


魔力と違う力を渡して全て無くなった魔族や人間はにこやかに笑いながら真っ白になり砂つぶへと変わり果てていった。


それをただただ俺は見ているしか無かった。少女が砂つぶになっていく魔族達に何かを言ってる。だが、俺には聞こえない。


言えることはただ一つ。力を渡していった全員が晴れやかな顔をしている。老人から子供まで全員だ。


そして、少女と少年以外砂つぶになって消えた。


二人になり少女は泣き続けている。


少年は目を瞑り顔を上に向ける。


その時、遺跡の外から圧倒的な魔力を持った何者かが現れた。アイツだ。例の白い仮面の少年だ。


まだ、外にいるが二人とも気づいたみたいだ。


二人はお互いの顔を見ると何かを決意した顔をした。


扉が圧力により内側へ内側へと圧縮していく。そして拳ぐらいの大きさの塊になって地面に落ちた。


その行為をした奴はゆっくりと歩いて中に入ってきた。


白い仮面はそのままなのだが体は大人の状態でスーツを着ている。


いや、何でスーツ着てるのこいつ?


そいつは何かを話しかけている。


二人に対して、だ。


二人はそいつに怒りの目を向ける。


そいつは頭をふり消えた。


現れたのは少年の後ろに現れた。


「マズイ!殺される!!」


触れない話せない。分かってる。


だけど、無視なんて出来ない。


無駄だと無理だと無茶だと分かっているさ。


でも、助けないという選択は一切無い。


だが、やはり少年はそいつに心臓を刺され殺された。俺が走って少年に触ろうとした時のことだ。


真っ赤な血が辺りに溢れる。


少年はそれを待っていたみたいだ。


血は集まり人型になった。


そして、消えた。


消えたと同時に白い仮面のやつも消えた。


白い仮面が放っていた圧倒的な魔力が今は感じられない。本当にこの空間から消えたんだ。


少女が少年に詰め寄るが少年は生き絶えてる。


少女は少年を抱きしめ泣き続ける。


だが、俺は気付いてる。


少年の横に“何か”がいる。


見えないが、少年を守ろうとしているのは分かる。


でも見えない。少女も見えてない。


少年は村の人達同様砂になっていった。


残されたのは少女一人だ。


少年を見守っていた何かは少年が消えるのと同時に消え去った。


不意に少女はこちらを向いた。


目線があう。


いや、見えていない筈なのに目線が俺と交差する。


少女が何か言った。


それと同時に俺は意識を失った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


《ーーーー!》


誰かが俺に対して声をかけてるのに気付いて意識を取り戻した。


《ーーーー!》


誰かが俺に馬乗りになりグワングワン揺らしながら話しかけてきてる。


正直、酔いそう。


《死んでますかー?死んでいるなら返事してくださーい!》


「死んでいたら返事なんて出来ないだろうが!!」


馬乗りになって話しかけている誰かの頭を掴みキリキリと力を入れる。


《痛い痛い!というか何故触れるの!?ああ、痛い痛いっす!》


目の前に泣きながら頑張って俺の手を解こうとしている女性がいた。というか声はあの女性の声だ。


「ああ、納得。あの空間ーーいや、記憶か。おまえの記憶だったのか魔族の少女よ」


目の前にいる女性はあの少女本人だ。

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