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「んー……」


重たい瞼をゆっくりと開ける。


目の前に広がるは白い世界。


あれ?俺草原にいたんじゃ?


寝転んでいた体を立たせ辺りを見渡す。


草原にいたはずだが今は全部が白い。


似てるな。あの神様と会うときと。


「って、勇者は?」


この白い世界に俺一人しかいない。


《ーーーーか?》


ふと、何処からか声が聞こえた。


《ーーどうやら、ちゃんと繋がれたみたいですね》


その声は女性の声だった。


《やっと、条件に合う人間が現れましたか。長かった。私の“記憶”も渡せないと思うと残念でしたから良かった》


なんか、勝手に話を続けてる。


「おい、誰だか分からないが初めて会うのに挨拶が無いのはどうなんだ?俺はマサキ。早く帰らしてもらえます?」


《驚いた。その“記憶の空間”で話せる人間がいるなんて……いや、そういう特殊な人間じゃないとそもそも……》


あ、勝手にぶつぶつ考え始めやがった。


仕方ない。暇だから辺りを探すか。なんもないけど。


下も上も全部が白い。歩いた音が聞こえない。


というかちゃんと立ててるのかも不思議だ。


酔いそう。


《おっと、すいません。考え始めると集中してしまう為周りが見えなくなるんです》


「いや、知らんがな」


《受け答えが出来る。やはり、そうか。貴方が勇者でしたか》


「え?違うけど?」


《え?》


「俺と一緒にいたあのイケメン野郎が勇者だ。俺はただの冒険者だ。だから、早く戻してくれ。こういうイベントはあの勇者に任せる。めんどくさいからな」


《ゆ、勇者じゃない人間がこの空間に来て勇者は来てない!?なんで!?》


知らん。


《勇者じゃない冒険者がこの空間に来れるはずありません。ギーガラムのエネルギー弾を受け、この空間に繋がる石を破壊しないと来れないようにしてあるのですよ!?》


「いや、知らんがな」


なるほどな。俺が来た理由は分かった。


あの石がここに繋がっていたのか。しまったな。好奇心でなんでもやるもんじゃないな。反省。


「ま、分かってくれたなら戻してくれる?勇者と交代してイベント進めてくれ」


そう言ったが


《無理です。この記憶の空間は一人来ると消滅する様に仕掛けてあります。万が一、アイツらにこの記憶が渡ると世界が滅びかねません》


「うん。言っている意味は分かるが言ってる内容が分からん!」


なんだよ世界滅亡って。


《まあ、良いでしょう。見た感じ悪い力は感じませんし、ここに来るっていうことは力があり理性があるという事。万が一に備えてある罠を仕掛けましたがそれも発動しないということは話しても良い人族という事ですね》


いや、石を壊したのはたまたまなんだけどな。


というか……


「あの声あんたか。裏に入るどうのこうのって言ってたのは?」


《その通り!その声が聞こえたのなら大丈夫。あの声に実は罠を仕掛けていて、悪い気を感じたら爆発するようにしてました!良かったですね!》


「良かねぇわ!!なんで、声聞いただけで俺死なないといけないんだよ!?」


《まあまあ、落ち着いて。実際今は死んでませんし良いじゃないですか!》


あ、この感じ神様と似たような感じがする。


一発尻たたきたい。


「つまりだ、俺は今死んでないと?じゃあこの空間に来てるのはどういうこった?」


《体ごとワープさせました。まあ、詳しい説明は置いておきましょう。因みにこの空間と貴方がいた空間との時間の流れは違います。この空間に長時間いてもあちらの空間では……まあ、10秒くらいしか経ってません》


「精神と時の部屋みたいなカラクリか」


《?良く分かりませんが理解はしていただいたみたいですね》


「なんとなくな。つか、あんた誰だ?さっき聞いたのに答えてくれないし、この空間も何故あるのか詳しく教えてもらおうか。どうせ、帰してくれないならとことん話聞くよ!」


帰れないし勇者と間違われるし足臭いし……。


もうヤケクソや!


《そうですね。私を説明するにあたって見てもらいたい記憶があります。その空間で対話出来るなんて思っていませんでしたから用意した記憶が無駄になるところでした》


なんか、ジト目で見てきて言ってそうな雰囲気が出てる。いや、俺のせいじゃないし!


《では、また後ほど。……生きて帰ってくださいね》


「おい、今何て言っ……」


俺の言葉は意識が飛ぶのと同時に切れた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ん~……エビフライ!」


目を覚ますと元いた草原に戻っていた。


あの、声の女性。絶対に会ったら海老固めしてやる。


「って、ここ草原だけど勇者いないな」


ボッチである。


仕方ないから適当に歩くか。


辺り一面草しかない。ん~何もないな。


歩き始めてだいぶ時間が経った。


そして、気付いた。この草原おかしい。いや、この空間というか世界がおかしい。


歩いていて草を踏んでいるのに草が潰れない。触ろうとしても触れない。


魔物もいたのだが全く気づかない。近くに寄っても気付かない。


そして、魔物同士戦っているところに敢えて近づいた。そしたら魔物が俺の体を“すり抜けた”。


おかしい。立ってる感じはするのに歩くと地面の感触が無く、かと言って地面をすり抜けるわけでもない。


どういうこった?


「うん。分からん。考えるのはやめよう。事が起きれば何かしらのアクションが起きるだろう」


無い頭で考えても無駄である。アクション起きた時に冷静に対応すれば良いだけだ!


今まで冷静に対応出来たことはないが。


「にしても、人一人いないな。魔物が争っているのはよく見るが」


考えている間も歩いていた。


草原には魔物しかいなくよく戦っている。


縄張り争いだろうか?


「困った。人一人いないんじゃ何も起こらない……っと。アレはなんだ?」


暇だからムーンウォークをして魔力の察知の練習をしていたら背中側……つまり進む側に歪な魔力の塊が感じ取れた。


ムーンウォークをやめその場所に歩いていく。


目で見える景色では見えない魔力の塊。


歪な、というよりかは故意に魔力を固めて“見せない”様にしている。と言ったほうが正しい気がする。感だけど。


「ん~、触ってみるか?しかし、この世界じゃ触っても触れれないからなぁ。うん。触ってああああ!!」


歪な魔力の塊に右手を突っ込もうとしたら右手が魔力の塊に吸い込まれていった。つまり、俺自身も吸い込まれていった。


「うげ、何ここ」


吸い込まれた後直ぐに違う景色が目に入った。


そこは草原ではなく村だった。


ただの村じゃない。


人間もいれば魔族も一緒にいた。


「魔族と人間は戦ってたんじゃないのか?」


目の前で年老いた男性と魔族がお茶を啜りながら笑顔で話している。


違うところでは太ったおっかさんみたいな人に尻を叩かれながら一緒に働いている魔族もいる。


なんだ、ここは。


前から小さい女の子と魔族の子供がこちらに走ってくる。全くこちらに気付いていない。ゆっくり避けたのだが、避けた先に魔族がいた。


「あ、すいま……ってまた触れないのかよ!?」


魔族をすり抜けてしまった。


魔族もこちらに気付いていない。


手を頭に突っ込んだりケンタロウスの真似をしたりしたが触れれないし気付かれない。


「参ったな。やっとアクションが起きるのかと期待したんだが」


それにしてもこの村は凄いな。


家の作りは恐らく人間が作ったんだろう。今まで行っことある街や村よりは作りが“古い”が、今まで見た中で一番頑丈である。


何故かって?


家に薄い魔力が張られているんだよ。


アレはリューネやブラックとかの魔法には耐えれないだろうが普通の魔法使えるやつの魔法なんか簡単に弾き飛ばすぞあれ。


恐らく魔力は魔族が張ったのだろう。


魔力の探知練習していなきゃ感じなかった。


それくらい“存在が無い”のだ。


団長は……気付くかな?リューネは気付く。


そして、次に食べ物だ。


見たことある食べ物から、これ食べれるの?っていう食材まである。


それは正直どうでもいい。何が言いたいかって言うとあり得ないくらい魔力が含まれてんだよ。


俺達が食べてた料理や食材には魔力は含んでいる。それを教えてくれたのはリューネだけど。


魔力が少ない食べ物は栄養があまりない。


逆にあり過ぎると人間にとっては“有害な食べ物”になるらしい。


前、一回見せてもらったのは紫色をしたリンゴらしき食べ物。見た目は気持ち悪いが魔力が相当含まれてるらしい。


勿論そのまま食べれるわけないから摩り下ろして薄めたりするらしい。


リューネはそれを俺が全部食べてから言ってきた。


先に言いやがれ!ってなったが普通に美味かったから許す。


話は戻すが要は全て魔力が高い食べ物しか無いんだよ。それを普通に食べてるんだよ。人間が。


魔族は元々魔力が高いせいか普通に食べるらしい。リューネ情報な。


つまり、俺が言いたいのはここにいる人間


異常だ。


異常と言えば後二つある。


村人達の声が聞こえないんだよ。


正確には魔物の叫びや人間の発する声が聞こえない。歩く音や戦う音は聞こえる。つまり、自然の音は聞こえて自ら放つ音は聞こえない。


まあ、触れないし気付かないしこれは正直どうでも良い。ビックリはするけど。


最後に。


この村は山に囲まれている。


つまり、草原じゃないんだよ。


山の向こうはまだ見ていないが、恐らく草原じゃなく果てしなく山が続いてるんだろうな。


何が言いたいかと言うと、草原からここまで“零距離”なんだよ。


テレポート。正しくそれだ。


しかも誰かが魔力を使ったわけじゃなく“固定”されてるんだよ。


戻ってみたんだよ。村を歩き回って元の場所に戻って魔力の塊に手を入れたら体ごと引き込まれ、草原に出た。


「つまりは今まで見た人達より……それこそリューネとかより遥かに魔力と知識を持ってる誰かが作ったんだよな」


寒気がする。


そんな奴がいるのが“分からないように工夫”されてる。


魔力感知が苦手な奴にはそもそも見つけれない。


魔力感知が得意な奴でも見つけづらい魔法を使われている。


魔力を媒体とした精霊達にはバレるかもだけど気付くだろうな。“触ってはいけない”と。


なんなんだこの村は。


なんなんだこの人間達は。


なんなんだこの魔族達は。


村に戻りもう一度辺りを回ることにした。


しかし、村は至って普通の村である。


普通すぎて普通じゃない。


と、その時何処からか視線を感じた。


気のせいかと思い辺りを見渡すといた。


俺を確実に見てる少年が。


「まさかな。今まで気付かれてないのにそんな事は無い無い」


だが、俺の嫌な予感は当たる。


少年はゆっくりとこちらに歩いてくる。


少年は顔をいつのまにか下に向け、そのまま器用に俺の前まで来た。











『何でいるの?』







「うおおおおおおおお!!!!」


その少年の言葉と顔を見て思いっきり殴った。


この世界に来て初めて感じたこの気持ち。


ゾクゾクと嫌な感じがずっとする。


最大警報。


奴はなんだ?

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