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勇者ーー


小説やゲームに出てくる誰もが憧れて誰もが諦めた存在。


色々チートな能力を用いて悪者を倒し美人なお姫様と結婚するなど良いことずくめな存在。


やはり、この世界にも勇者はいたのか。


まあ、魔物とかいる時点でいるとは思っていたさ。


俺が勇者、なんて一回も考えたことは無かった。


なにせ勇者とは程遠い性格だし、勇者と名乗る程自分が勇者じゃないってことを理解してる。


「勇者か……。アイツが勇者に見えないけどな」


そいつは見た目は勇者に当てはまる要素はある。


イケメンだし。勇者ってなんでかイケメンなんだよ。不細工な勇者とかあんまりいない。いても不遇な不幸な不運の勇者で性格がねじ曲がってる。


だが、アイツはイケメンだが勇者にしては何かが違う。……いや、ただただ俺が勇者に求めてる要素を持っていないと勝手に思ってるだけかもしれない。


「まあ彼も勇者とかはどうでも良いみたいだからね」


「そんな勇者がいて良いのかよ……というか、アイツ名前なんなんだ?結局教えてくれてないし」


遺跡の入り口で俺たちを待つ勇者はあくびをして眠たそうにしてる。


「あの勇者は名前なんてないよ」


「は?」


「正確には誰にも名前を教えてない。いや、教えてるけど全て違う名前だ。偽名だ」


「偽名?」


「詳しくは私も知らない。知っているのは彼は“名も無き勇者”って事だけさ」


マークスはそう言うと遺跡に向かって歩いて行った。


エルフ達や団長やエミリアもマークスに着いて行く。残っているのは俺にブラック、タマにリューネだ。


「マサキ、私と会った時の事覚えてる?」


「リューネと会った時?」


「そう。ステータスの話をしていた時に言ったんだけど」


やべ、覚えてない。


「その顔は忘れてるわね。まぁいいわ。私が言ったのは“特殊な人間”がいるって言ったのよ。それがあの勇者よ」


「ああ、なんか言ってたような言ってなかったような」


「全く。まあいいわ。マサキも特別な存在だけど彼ーー勇者もまた特別な存在だから気をつけることね。勇者は人であって人ではない存在と昔から言われてる」


それ、どっかで最近聞いたことある。


「だから、強い。私やブラックにタマもだけど負ける事は無いけど苦戦はする」


「え?マジ?」


「マサキよ。リューネの言う通りだ。今の勇者とは戦った事は無いが、小さい頃、我の親が勇者に殺された。それくらい強いのだ。今は我の方が強いがな」


「はいはい。ってか、よく生き残れたな」


「勇者も深傷を負っていたからな。何もせず帰っていた。親を殺されて復讐とかの気持ちは一切無かった。強い方が勝つ。ただそれだけだったからな」


淡々と答えるブラックはやはりいろんな意味で強いな。


「話を戻すわよ。今の勇者は今のところ敵意は感じられないから一緒に行ってもいいと思うわ。戦力的に格段に上がるわ」


「リューネがそう言うなら文句はない。敵意が無いなら勇者だろうが魔王だろうが安全の為に容赦なく利用させてもらうよ」


ひどい言い方かもしれないが生きるためだ仕方ない。あっちもそれを利用するために待っていたんだから。


俺たちは勇者の元へ歩き始めた。


「おや?意外だったよ。本当に一緒に行ってくれるなんて」


勇者は眉を少し上げ俺を見て言う。


「どう言う意味だ?」


「もうビシビシと嫌なオーラ全開で出してたからね君。もう笑ってしまうくらいにね」


「チッ。バレてたか。イケメンってだけで嫌な奴なのに性格も嫌な奴だったか。俺はそう思った」


「マサキ殿。口に出てますよ」


「はっ!?しまった。俺としたことが……!!」


「はは。面白いね君。今までこうもストレートに言ってくれる人がいなかったから斬新だよ。気に入ったよ」


「気に入られても困るわ!俺行くからな!」


こいつのペースに合わせていたら疲れるから俺はさっさと遺跡に入っていった。


入り口の扉を開け中に入る。


「思ってたより広いな」


中に入って一番最初に思ったのはそれだ。


外から見る遺跡は確かに大きかったが中はある程度狭いんだなって勝手に思ってた。


何も無い、とは言えないけれども瓦礫や鎧が落ちてるなど目立った場所は無くただただ広い空間である。まあ、入ってすぐに敵とかいたら笑えないな。


「ん?」


中を見渡しているとキラッと光った場所があった。


光った場所を見ると壁に何か書いてありそれが光っていたのだ。


俺は光って書いてあるのが気になってそっちへ歩き始めた。


「マサキ!!!」


マークスが大声で俺を呼び止めたが遅かった。


カチッ


そう音がした。


下を恐る恐る見ると何かボタンみたいなのを踏んでいた。


「罠のセオリーじゃないか。やれやれだぜ」


そう言った瞬間、黒い煙が俺を包んだ。


「ゴホッゴホッ。なんだこの煙。むせるじゃないか!」


なんか、似たような事を経験したことあるな。


なんだっけな。


忘れた。


煙は晴れ俺の周りから消えていった。


「地味な嫌がらせだな。チクショウ!」


「地味なって……いやいやいや。マサキ身体大丈夫か?」


マークスが近寄り心配そうな顔で見てくる。


「身体は大丈夫だが、いきなり罠に引っかかった自分の心はズタボロさ」


「いつも通りみたいだね。良かった」


おっと。俺の心は毎日ズタボロみたいな感じでスルーされたよ。


「しっかし、むせる程度の煙を罠に仕込むあたり作ったやつは相当ひねくれてるな。うん。ひねくれてるに違いない」


「いや、マサキ。さっきの煙は即死する猛毒な煙だよ。何故こんな入った場所にあるのか分からないし、それを受けて生きてるマサキもビックリなんだが」


「……即死級の罠を遺跡に入ったところに設置するな」


マークスがジト目で見てくるから目を左右に移動させて目を合わせずにそう言った。


黒い煙。


思い出した。ブラックが変身する時に現れた煙だ。


リューネもなんか言ってたな。


「ま、まあ無事だし?良かったじゃないか」


「無事なのが異常って事を頭に入れておいてね。後、フラフラと勝手にどこにもいかない事」


「はい……」


正論すぎて何も言えない。


「全く。君達も色々大変だね」


「本当よ。マサキは悪い意味でも良い意味でもトラブルを起こす体質だから困るわ」


「マサキ殿が異常なのがこれで皆さんに分かってもらえて良かったです」


「おい、お前ら言いたい放題言いやがって!」


くそ。こいつら覚えておけよ。


何かミスしたらチマチマと言ってやるからな。


「ところで君は何を見てフラフラと歩き始めたのかな?」


勇者が腕を組み不思議そうに聞く。


「ん?ああ、なんか壁に書いてある文字が光ってたから気になって。ほら、あそこ」


未だに光っている文字を指し言う。


「……悪いが僕には見えない」


勇者は目を細め壁を見て言う。


「私も見えない」


マークスも?


いや、俺以外全員見えてない。


リューネやブラックもか。


「嘘だろ?あんなに光ってるのに?」


俺は慎重に歩き始める。


下の罠はもう喰らわない!


壁まで歩くと光っていた文字が何を書いてるか分かった。


“この文字を見える者よ 自分が見える物が全てじゃない 嘘も真実もありはしないのだ”


書いたやつを殴りたい。


トンチみたいな事を書きやがって。


わかるわけないだろうが!!もうちょっと分かりやすい言葉を書いてくれよ。


「なんか書いてあるのかい?」


勇者が聞いてきたので書いてある事を教えた。


「嘘も真実もありはしないのだ、か。なるほど」


勇者は考え始める。


いや、多分だけどこれ書いたやつノリで書いたんだろうよ。恐らくな。


「あまり気にしないで進もうぜ。こういうのは気にしたら負けだ。文字が嘘か真実か分からないのなら尚更な」


こういう文章は恐らく後から重要になる事があるのかもしれないし、引っ掛けなのかもしれない。


分からないなら無視するのが今とる正解の道だと思う。


「確かに君の言う通りだ。分からなければ気にしない方が良い。見える道を進むのが今とる一番正解なんだろうね」


勇者も意見に賛同してきた。


「マサキが見える文字は後で考えるとして今は進もう。マサキ、勝手にフラフラと歩いてかないでくれよ?」


「私はどこにも行きません!お金が落ちててもフラフラ歩いて取りに行きません!」


マークスに注意されたから今度からは声をかけてからフラフラ歩こう。


「……まぁ、いいや。じゃあこっからは私が先導していくからついてくるんだよ?」


「分かった分かった。でもよ、この部屋から次行く階段とか扉とか無いぞ?」


そうなのだ。


この部屋は広い。ただ、それだけなんだ。


入り口の扉以外何もないのだ。


「そう。最初見つけた人達もそう思ったのさ。この遺跡の最初の罠がこの部屋なのさ。まあ、マサキは違う罠に引っかかってたけども」


「な、何のことか俺には分からないし聞こえないなー!!」


「まったくもう」


「で、部屋が罠なら誰かが解いたんだろ?」


「ああ。部屋が罠だと分かってから色々調べた結果……」


マークスは入り口に向かって歩き始めた。


入り口に着いてマークスは扉に向かって剣で切った。


「こいつが“扉”を隠していたのさ」


切った後、入ってきた扉とまた違う形の扉が現れた。


「え?何で?よく分からないんだが。魔物……じゃなさそうだし、普通の扉だったよな?」


「まあね。扉なんだけど巧妙な魔法が使われていて“攻撃されないと違う扉が現れない”という一種の幻覚魔法を使われていたのさ。まあ、これを幻覚魔法と呼んで良いか分からないけどさ」


マークスはそう言って剣を腰に戻した。


「つまり入ってきた扉に攻撃しない限り永遠に次の場所に行けないのか。鬼畜だな。誰もが扉なんて意識しないからな」


「そういうこと。この程度の罠を突破出来ない者にこの遺跡に入る資格が無いって言われてるのと同じさ」


そう言ってマークスは扉を開いた。


開いた先には通路が続いていた。


「じゃあ、行こうか。開いて閉めるとさっきの扉に戻るから皆んな遅れないようにね」


マークスはそう言うと通路に歩き始めた。


皆んながついていき、部屋には俺と勇者だけしかいなくなった。


「行かないのかい?」


「行くさ。ただ、何か引っかかる気がするようなしないような」


「奇遇だね。僕もだよ。何か引っかかる。何がと言われても分からない。聞いても答えてくれない。それが異常なんだよ。だから、引っかかる」


勇者は目を瞑り誰かに聞いてる感じで言う。


部屋には俺と勇者しかいないのだ。


「聞くって誰にだよ。俺とお前しかいないじゃないか」


「ん?秘密さ」


指を口に当てシーって言う格好をする。


イケメンがしたらかっこいいな。


殴って良いかな。


「まあ、良い。見た感じ、何もないしここにいる必要は無い。さっさとマークスの後に……」


そう言って扉を見る。


先ほどまで見えていた通路が無い。


扉の先が真っ暗だ。


「なぁ、何故通路が消えた?」


「……何でだろうね。僕も初めての経験だよ。何回か来たことはあるが通路に繋がるとこしか見たことがない」


「つまり、あの先は何があるか分からないと」


「分からない」


参ったな。


「うん。行ってみよう。あの先からは邪悪な気が感じる。とてつもなく強い邪悪な気がね」


「いや、感じるなら行かねえよ?何でわざわざ行かなきゃならないんだよ」


「勿論、僕が勇者だからだよ?邪悪な気は滅ぼさないとね?」


「なら、一人で行けば良いだろうが。俺は勇者じゃなくしがない冒険者だから身の危険を感じたら引くさ」


「いや、君が行かないとダメなんだよ。そう教えてもらった。だから行くよ」


そう言うと勇者は俺の手を引っ張り闇の中へと歩き始めた。


勇者に引っ張られながら暗闇の中に入っていく。


振りほどけるのだが、なんか一緒に行った方が俺的に悪い事が起きないと思った。


なんとなくだが。


「ん?」


勇者に引っ張られながら闇雲に歩いていると光が見えた。


「どうやらあそこからでれるみたいだね」


「出た瞬間崖とかやめてほしいわ」


「大丈夫。死なない場所に出るよ」


「何で分かるんだよ」


「聞いたから」


「あーはいはい。さっさと行こうか」


聞いたところで教えてくれないしめんどくさいから話を終わらせ進む。


暗い闇が終わり光の先に出る。


「なんだここ」


出た場所は空が広がる草っ原だった。


「幻覚……では無く本物みたいだね」


勇者は手を離し、しゃがみこんで草を掴みそう言う。


「遺跡の中に草原が広がってるとかまじファンタジー」


「ファンタジー?……まあいいや。とりあえず行こうか」


勇者は立ち上がりスタスタとまるで目的地が分かるかのように歩き始めた。


仕方ないのでついていく。


「しかし、リューネ達大丈夫かな?俺がいないと何にもできない奴らだからな」


「面白い冗談だね」


「おい、勇者。そんな可哀想な子を見る目で見るんじゃねぇ!」


「あの子達なら大丈夫でしょう。伊達に王が二人いるからね。負けはしない」


「なら、心配はこっちか。冒険者と勇者しかいない」


「あれ?勇者と言ったらみんな大丈夫だって安心するんだけどな。君みたいな反応は初めてだよ」


「勇者の力知らないし。俺、勇者嫌いだし。イケメンだし」


「はは。勇者を嫌う人間は沢山いるがそれでも利用する奴らばっかりなんだけど、君は本当に面白い。益々気に入ったよ」


「気に入らないで欲しいんだけどな、俺は!!」


調子狂うぜ。


暫く無言で歩き続けていた。


特に話す事ないし、あちらも話す事もないから黙って歩いていた。


「うん。やっぱりいた」


「おい、何だよアレ」


「何だろうね。ただ分かることは僕達にとって敵なことだけ」


勇者と俺が地平線にいる、巨大な何かを見て言う。


山じゃない。アレ生き物だ。


ここからでも分かるくらいでかい。


「戦うのか?」


「勿論。戦わなきゃ死ぬよ?アレはもうこちらへ向かって歩いてきてるし」


ズシン、ズシン


と、腹に響く音が近づいてくる。


つまり、巨大な何かがこちらに向かって歩いてきてるのだ。


しかし、アレは何だ?


山と見間違うほどの巨大さ。


頭はあるみたいだが、まだはっきり見えない。


ただ、周りに真っ暗な渦が何百個も発生している。


「う~ん」


勇者が腕を組み困った顔をしている。


「参ったな。攻撃が効かない」


「は?」


「さっきから攻撃を仕掛けているんだけど、あの黒い渦?煙?が邪魔して本体に攻撃出来ないんだよ」


「と、言うことは?」


「うん。ピンチだね」


「そんな爽やかに言ってもらっても困るんだが!?どうするんだよ?」


「そうだね。逃げたくないし参ったね」


「いや、逃げる。命あっての冒険だ。じゃあな!」


俺はクルリと反転し逃げようしたが後ろを見て固まる。


「さっきまでいなかったよな?」


後ろにも前と同じ何かがこちらに向かって歩いてきてる。


「左右にも現れたよ。逃げ道なんか無いよマサキ」


勇者が言った通り左右にもいる。


いつの間にだ?


さっきまでいなかった。


現れたのは前の何かがこちらに向かって歩き始めてからだ。


「くそ!詰んだか!?」


流石に俺もあの巨大な何かに挑んだら負けるだろうな。


「何か奥の手とかあるだろ?」


「……なんで知ってるのかな?」


「そりゃあ勇者によくあることだからだよ」


出鱈目な事を言ったら当たった。


「あるにはあるんだけど君まで死んじゃうよ?」


「はい、却下!」


巻き添えで死んでたまるか。


そう、思った時


キュュイィインン


何か高い音が聞こえた。


辺りを見渡すと、怪物達がこっちに向けてエネルギー塊を溜めてる。


「レーザーか。どうしたもんかね」


「何故余裕ある感じで説明してんの!?レーザーとか死ぬ死ぬ!」


何か俺に出来ることはあるか!?


勇者は攻撃してたみたいだが通用してなかった。


奥の手は俺を巻き添えにするみたいだし、俺弱いから何もできない。


あ、終わった。


そう、思ったのと同時にレーザーが放たれた。


ああ、死ぬ時が勇者とだなんて嫌だな…。


せめて、美女に囲まれて死にたかった。


いや、美女に囲まれたら逆に緊張しすぎてある意味死ぬ。


というか、レーザー遅くね?


いや、これ走馬灯だ。死ぬ前に感じるゆっくりした時間の流れ。


でも、走馬灯って今までの思い出とか流れるんだよね?思い出流れずに欲望しか出てないんだけど。


レーザー遅くね?


改めて見るとレーザーはこっちに向かってきてる。


ゆっくりと。


ん?


レーザーの中に何か見えたぞ?


なんだあれ?


とりあえず、殴っておくか。


そう決めて、前から来るレーザーに突っ込んだ。


あれ?レーザーに当たってるのに痛くない。


まあ、いいや。とりあえず見つけた。


それは、星型の石だった。


うし、よく分からないし怖そう。いや、石って壊せなくね?


そう思いつつ殴った。
















『おめでとう。裏に入ります』

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