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アンファー遺跡。
いつの時代に作られたのか未だに分かっていない。
分かっているのは現代の技術をもっても作れない数々の罠がある事くらいだ。
作られた場所も今は人の領域となっているが昔は魔族の領域であった。なのに“人”が作った遺跡なのだ。
謎だらけの遺跡に冒険者達はこぞって挑んだが誰一人最深部まで行けてない。今までで一人もだ。
ダンジョンでもないのに行けない理由は二つある。
一つ目は魔物。
ここに住み着いている魔物は弱くてもAランク。
しかもうじゃうじゃといる。
不思議なもので奥に行けば行くほど強い魔物が現れる。
二つ目は罠だ。
即死レベルの罠が張られており、しかも中々分かりづらく死ぬ冒険者が後を絶たない。
この二つが重なり次第に誰もが挑まなくなった。
宝箱もあるが今のところお金しか出てこなくて命賭けてまで挑むにはリスクが高すぎた。
今じゃアンファー遺跡は別名“死の遺跡”と呼ばれ、挑む人間は皆から死にたがりと思われるようになった。
「ま、簡単に説明するとそういう所さ」
「行きたくなくなる説明ありがとうよ!!」
チクショウ。
移動している最中暇だったのでマークスに簡単にアンファー遺跡の詳細を聞いてたんだけど、行く気が失せました。
「最近じゃあ行って帰ってくるだけである程度チヤホヤされるくらい誰も行かなくなったんだよね」
「そこに向かう俺達は何なんだろうね」
「ん~。魔力も力もある私達が初めて奥まで行ける最後の希望じゃないかな?」
「希望どころか俺は絶望しか無いわ。即死レベルの罠とか普通に行きたくねぇ!」
何だよ即死って。
アンファー遺跡怖い。
「まあまあ確かに罠は怖いけどちゃんと調べて慎重に行けば大丈夫だから」
「マークスは行ったことあるのか?」
「一回ね。その時は途中で強い魔物と出会って命からがら逃げ延びたよ」
ははは。って笑うけど笑い事じゃ無いから!
「あの時は丁度“あいつ”が目を覚めた時だったから運が悪かった。いや、生き延びたから運は良い方なのかもな」
「あいつって何だよ」
「アンファー遺跡の厄介もんさ」
「だから何の魔物だよ!?」
「【ネニュファール】という魔物だよ。魔物と言って良いのか分からないけど特殊な生き物さ」
ネニュファール。何処かで聞いたことあるな。うん。分からんから気のせいだろう。
「アンファー遺跡にはネニュファールが出るんですね。よく生き残れましたね」
「私もそう思うよ。たまたまネニュファールが違う標的を見つけてそっちへ行ったんだよ。無我夢中で逃げた。ネニュファールが見つけた標的が人間だったら……」
何だよネニュファールって。そんなに強い生き物なのかよ。
「まあ、あいつは一回目を覚ませばその後は数十年目を覚まさないやつだから今回は大丈夫」
「マークスには悪いがその時目を覚ましてもらって良かったよ」
そういう危ない生き物に出会わない事が一番だからな。
「因みにネニュファールは倒せない化け物として有名だから」
「え?リューネやブラックもか?」
「精霊のお姉さんは相性が悪すぎる」
「そうね。私達精霊達はネニュファールに会ったら逃げろって言われてるわ。私でも戦えばこちらに不利すぎるから逃げるわ」
リューネがそこまで言うってことは相当だぞ。
「我もそいつとは一度戦ってみたかったんだよ。一度も戦っていない相手だからのぉ。アイツら目を覚ますタイミングが我が他で戦っている時ばかりで一回もタイミング合わなくてのぉ」
ブラックはプクーと頬を膨らませ「全く」とか言ってるが本当に戦闘狂だわ。
プクーとか可愛いからやめなさい。
「メイドちゃんは良い戦いするんじゃないかな?ま、それくらい強いんだよ」
「絶対に会いたくない。良し、いいかお前らそいつに出会ったら逃げるぞ。何が何でも逃げるぞ」
ブラックは不満そうな顔をしてたが無視だ無視。
命大事にだ!
「そーいえばさ、アンファー遺跡ってここから近いのか?」
「二日くらいで着くかな?」
「二日……近いな。近くに街とかは?」
「無い。昔はあったけど魔物が蔓延る遺跡の近くに誰も来ないから結局みんな移動したんだよ。だから、誰もいない街……というより村かな。廃村ならあるよ。私達も行く前にそこで寝泊まりはしていたかな」
まあそうだよな。
魔物が蔓延る遺跡の近くに誰も来たがらないしな。
俺たちは話しながら進んでいった。
リューネの魔法移動で動いてるので疲れはしない。
魔物も帝国に比べたら遥かに多い。
瞬殺だが。
そんなこんなで二日が経った。移動は順調である。夜も見張りをつけているがリューネの魔法により無意味だったが。
「もうすぐ見えてくるはず」
「やべぇ。行きたくない気持ちがどんどん増えてきてきた。なあ、やめようぜ」
勿論無視され移動は続く。
最近さ思う。こいつら俺に対して冷たくないか?いや、絶対冷たい!いかに俺が寛大な心を持っていても傷つくよ?いや、エルフ達からのあの目にゾクってする時はあるからご褒美か?
「着いた」
マークスの言葉に俺の意識は戻ってきた。
危ない危ない。もう少しで危ない領域に入りそうだった。
「マサキ殿。顔が気持ち悪かったですが大丈夫ですか?」
「そんな目で言うな!!俺は至って普通だ」
「……」
「はい無視ー!良いさ!俺はもう君達が無視する事について慣れた。慣れたけどそういう目で見ないでー!!」
「行きますよ」
「あ、はい」
普通の対応されたら困る。
さて、気を取り戻して俺は目の前に見えるアンファー遺跡をじっくりと見る。
見える範囲で言うと、とにかく広い。
高さもどれくらいかな。二十メートルはありそうな建物。
森の中にあるここは異質である。
本当に異質。
死の遺跡か……。あながち間違いではないのかもしれない。
「行きますか……ってあれ?」
マークスがある場所を見て目を開く。
遺跡の入り口に突然人が現れたのだ。
「やあ、来たね」
声は目の前に現れた男から発されたものだ。
そいつは確かに遺跡の入り口にいた。
俺たちは入り口からそんなに離れてはいなかったが百メートル程くらいは離れていた。
マークスが見つけてから声をかけてくるまでに移動したのだろうが姿が見えなかった。
何だこいつ。
「おっと警戒されたみたいだね。申し訳ない」
その男は両手を上げ敵ではない事を身体で表現する。
「珍しい人がいるもんだね」
マークスが目を細め腰に携えている剣に手を添える。
「ん?僕の事を知ってるんだね。いや、待ってね。僕も君の事は知ってるよ。そう、確か君は……ああ、悲劇の英雄マークスさんだったね」
男は考えた後ハッと思い出しニコッとする。
「それに君はイースル国の騎士、ケール団長にエミリア王女」
団長とエミリアを見て当てる。
団長もマークスと同じく剣に手を添えいつでも抜刀出来るようにしている。
「この有名な三人に加えエルフ二人に“人ではない”二人と一緒にいる……」
俺の方を見る。
「君は何だい?」
「マサキだ」
「ふーん。マサキか。見たところ普通の人間に見えるけど、普通ではないこの人達と一緒にいる時点で君も化け物の類かな?」
「人を化け物と呼ぶな!!至って真面目で普通な人間だ!」
「そうなのかい?いや、どっちでも良いか。人だろうと化け物だろうと僕にとってはどうでも良いや」
そいつは興味を無くしマークスの方を見る。
「君達がここに来る事は知っていた。いや、教えてもらった。だから、僕は来た。誰一人奥まで行けなかったこの遺跡が初めて行けると知ってね」
「誰に……とは言わないさ。予想はしていたさ。ただ貴方が一人で来るなんて思わなかった」
「言われたのさ。僕一人で行けって。だから一人で来た」
真面目な超シリアスな話なんだけどさ
こいつ誰?
やべえ。すっごく聞きたい。
厨二全開なこいつの名前を。
身長は高く180あるかないかの高さに
マッチョではなくスラっとしたモデル体型。
髪は金髪の俺と同じくらいの長さ。
顔は整っており二重のムカつくやろうだ。敵だ。
服装は至ってシンプルな旅人の上下。
一見ただのイケメン野郎にしか見えないが俺の何かが引っかかる。
「さて、行こうか」
イケメン野郎はクルッと遺跡に向き歩き始める。
その時
ウガァァォァッ!!
猛スピードで森からこちらに向かって魔物が突っ込んできた。
その魔物は見たことない魔物で数は十以上。
だが
魔物達は消えた。
「え?」
魔物達が文字通り消えたのだ。
「おっとごめんよ。襲ってきたもんだからつい」
どうやら魔物達を消したのはこのイケメン野郎だ。
「何したんだ?つか、お前何者なんだ?」
「消したのさ。存在をね」
なるほど。こいつのスキルか。
「後僕は君と同じ人間だよ」
そう言ってそいつは遺跡に歩き始めた。
こいつ……。
「マサキ。言っておくべきだったね」
マークスが近づき頭をかく。
「あいつはね
【勇者】だ」




