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マークスがそれ以上言わずに家に入って行った。
俺達も中に入る。
「なん……だと?」
俺は驚いた。家の中にいたのは確かに知っている二人だった。
「また会えましたね~」
「とてつもない強い魔力が近づいてくるかと思えば感じたことがある魔力だったからビックリしましたよ」
家にいた人間ーーいや、人間じゃないな。
家にいた“エルフ”達は助けたエルフ二人だった。
「何で二人がここに?いや、それよりも」
エルフの二人は人間の旅人の服を着ている。
ダークエルフは腰に剣を携え、もう一人のエルフは背中に弓を背負っている。
そんな二人にスッと近づき二人の手を掴み
「あいも変わらず良い身体してますね!」
「エロオヤジは黙ってなさい!!」
エミリアに頭を引張叩かれエルフ達から離される。
「はは。この状況でそう言うこと言えるなら大丈夫そうだね」
マークスは苦笑いしながら一旦言葉を止め、エルフ達を見る。その後俺達の方を見て話し始めた。
「さてと、どこから話したもんかね」
「はい!どういう関係?」
手を勢いよくあげ質問する。
「どういう関係かと言われたら、そうだな……」
エルフ達に目を向け説明して良いかどうかを聞いてる。それに二人とも頷く。
「私の仲間の知り合いかな?」
「仲間の知り合い?ヤックルの知り合いか?」
その問いに答えたのはダークエルフだった。
「あんなやつ仲間じゃない!敵だ!!」
ダークエルフは眉を釣り上げ睨んでくる。
いや、俺もあいつの仲間じゃないし。
「はいはい落ち着くこと。 リーティ、貴女は感情が正直過ぎるのを叱られた事を覚えてるでしょ?それにこの人達は何も知らないんだよ?」
マークスは子供に諭すかのようにダークエルフに言う。
「うぅ。ごめんなさいマークスさん」
素直に謝るダークエルフ。
めっちゃ萌えるんだが。
「話の途中だったね。ヤックルとは仲間だった時期があるのは知っていると思うんだけど、実はその時もう一人仲間がいたんだよ」
「三人でパーティ組んでたって事か?」
「正確には私ともう一人がパーティ組んでて、後からヤックルが入ってきたんだ」
「なるほど。で、もう一人の仲間はこの街にいるのか?」
それを聞いた途端エルフ二人は悲しい顔をした。
「街にはいない。というかこの世にはもういない」
「死んだって事か?」
「ああ」
「そっか」
何て声をかければ良いのか分かんない。
「そのお仲間さんとこの二人の関係は何なのかしら?」
リューネが聞く。
「死んだ仲間っていうのがエルフだったんだよ。そのエルフの身内がこいつらさ。そいつに言われたんだよ。二人の特徴と助けてあげて欲しいって」
「助ける?」
「ああ。実は仲間のアイツが死ぬキッカケを作ったのはヤックルなんだよ。アイツが死んだ後もヤックルはこいつらを利用して色々と裏で動いててさ。アイツはそれを分かっていたから助けて欲しいって言ったんだと思う」
マークスは寂しそうに話す。
あの会場で話し合っていた内容はそういう事か。
何となくヤックルとマークスの関係が分かったような気がする。多分。
「ま、ヤックルがつけた銀の首輪を誰かさんが壊してくれたお陰でヤックルが死んでもこの子達も死なずに生きていてくれたんだけどね」
俺はマークスから目線をズラす。
いや、アレは事故だ。
「聞いた時は驚いたよ。銀の首輪を無傷で壊す人間がいるなんてさ。けど、そういう常識を覆す人が現れたお陰でこいつらを助けれた」
「俺はいたって常識ある人間だ!!」
その問いに全員が冷たい目を向けてきたのは悲しかった。
俺は部屋の片隅で体育座りをしながらいじけていたが話は続けられていた。
「つまりはマークス殿はこのエルフ二人を助ける為にヤックル殿がいるこの街に来たのですね」
「そうだね。ただ、アイツが二人を使っている事は分かっていたが中々情報が集まらなくて困ってたんだよ。情報操作はアイツが得意としている事だったからね」
「しかし、二人を見つけたのですよね?」
「ああ。偶然だったけどね。アコでいじけている彼があの力を使ったことで見つけれたのさ」
「やっぱりあの方の力でしたのね~」
エルフは納得するように頷く。
「どういう事でしょうか?えーっと……」
「自己紹介がまだでしたねぇ。私はスレイルで」
「私がリーティだ」
ダークエルフがリーティ、白いエルフがスレイル。
俺はすぐ頭に焼き付けた。
「スレイル殿ですね。それでスレイル殿、マサキ殿が使った力で何があったのですか?」
「結界が壊されたのよぉ」
「え?」
「結界が……」
「スレイルに代わって私が説明しましょう」
リーティがスレイルの言葉を遮り話す。
「ヤックルは私達に銀の首輪とある結界をかけたのです。銀の首輪は皆さんご存知であると思いますので話は省きます。もう一つの結界の方ですが簡単に言いますと“指定した生き物”から見つからないという結界です」
「なるほど」
リューネや団長はそれで納得する。
「はい!意味わかりません!」
俺は手を上げ説明してもらうように言う。
「マサキ殿。リーティ殿が言っていた“指定した生き物”とは人間にも通用します。つまり、これはヤックル殿が自分に対して不利な人間」
「……マークスか!」
「そうです」
確かにマークスに二人が見つかったらヤックルにとって良い事ないもんな。
「そんな結界をアイツがはれるのか?首輪をつけてないエルフに対して」
「それは銀の首輪をつけた時に万が一壊されても主人には服従するよう銀の首輪に結界をかけてたのですよ。銀の首輪をつけている状態じゃエルフとはいえ魔力が格段に落ちますからかけやすいのです」
「どんだけ慎重なんだよ??というかあのギルドマスターがそんな結界とか魔法とか得意なのがビックリなんだが。見た目はそこまで凄そうじゃないんだがな」
「アイツは裏で動くのが得意なんだよ。だから、表じゃ普通に見えるのさ。ただ、裏で動くには少なからず実力は必要さ。それこそ指定した生き物に対して見つからないように出来る結界を張れるくらいにね」
マークスは鼻で笑う。
「そう、その結界が壊れたのってなんか俺の力みたいな話をしてたじゃん。どうなって壊れたの?結界が壊れるって相当なことだろ?」
結界だもん。そりゃあ硬いだろうに。
「それが私達にもよく分からないのです。いきなり強い圧力がかかったかと思えばすぐ甲高い音が鳴り響いて結界が壊れました」
「ん~恐らくだけどマサキの力で無理矢理結界の元である原式が力によって壊されたんじゃないかしら?複雑で難解な術式で作られている銀の首輪ですら壊れるくらいだからそういう事も出来て当たり前じゃないかしら?」
「なるほどな。確かに私達がしていた首輪をいとも簡単に壊していたな。結界ぐらい簡単に潰せるか」
俺を見る目は皆んなマサキだからな。みたいな目で見てくる。いや、知らないし!!
まるで俺が化け物みたいな扱いだよ。
「ま、そういう事で結界が壊れ私はこの子達の存在に気付いたのさ。丁度あなた達が湖に行っている間に会いに行ってこの家に連れてきて湖に貴方達に会いに行った訳なのさ」
「ああ、あの時ね」
マークスとヤックルが火花を散らしながら言いあっていたあの時か。
「まさかその日にヤックルが殺されるなんて思いもしなかったけどね。どうやってこの子達の事を隠そうか悩んでいたんだけど結果的には良かったよ」
「一応仲間だったんだろ?殺されたことに対しては何か思うところは無かったのか?」
「ない。はっきり言うがアイツにこれっぽっちもも思う事がない。恨みしかないさ」
断言するマークスに昔どんな事があったのか聞きたくなったが流石に個人の問題だ。聞かなくて良いことは聞かないでおこう。
「ま、簡単にまとめて話だけど私とこの子達が何故知り合いかってのは分かってくれたかい?」
「なんとなくだが分かった。色々聞きたいことはあるが今はやめておくよ」
「助かるよ」
マークスとヤックルの関係。
ヤックルとエルフ達の関係。
マークスと仲間だったもう一人の人。
色々重なって今の状況になっている。
うん。だいたい分かった。
「あの~良いですか?」
スレイルが手を上げて質問したそうな顔で俺達を見る。
「なんだいスレイルちゃん。俺が彼女いるかいないかの質問だったらいないぜ?」
「はい、マサキはこっち!」
キメ顔で言うがエミリアに引っ張られ部屋の隅に放置される。
「えっと、マサキ殿はおいておいてどうかしましたか?」
「私達がマークスさんと知り合いなのは分かったと思いますが、マークスさんとあなた達はどういう関係なんですか~?」
「どういう関係かと言われたらどういう関係なんでしょうか?たまたま泊まった宿がマークス殿の宿でしたから」
「そうなのですか?それはまた不思議な縁なのですね~。たまたま助けてくれた人達がたまたまマークスさんと一緒にいるなんて」
「貴方達を私達が助けたのはたまたまじゃないでしょうが。あんなバレバレな手法に引っかかるわけ無いじゃない」
「あら?バレてましたか~」
む?全く分からないが?
「どうせヤックルが絡んでるでしょ?恐らくはイースル国からの通達でマサキと私たちの事を知り確認するためにああいう方法を選んだ。で、私とブラックの正体を知りたかった。違う?」
「合ってます」
スレイルが相槌をうつ。
「ま、銀の首輪を壊す事は完全に予想外だったみたいだけどね。だから、その結界が張られたんでしょ?その結界もマサキが壊しちゃったけどね」
「なんか俺が悪者みたいじゃないか!」
「私達からしたら英雄さ」
スレイルやリーティが尊敬する目で見てくる。
やめてくれないか?そういう目は慣れてない。照れる。
「で、英雄さん。これからどうするのさ?」
マークスが笑いながら聞いてくる。
他の奴らも俺の言葉を待っている。
「そうだな。今はこの街にいない方が良いだろう。なら、次の街に向かおうかな」
「次の街か……」
ここにいても良いんだが他の街へ行った方が危険は減る。
「ここら辺は帝国の領域だから、帝国からは離れた方が良いかな」
マークスが唸りながら教えてくれる。
「団長よ。なんか良いところないか?」
「そうですね……。あ、あこはどうでしょうか。【アンファー遺跡】」
「【アンファー遺跡】か!確かにあこなら良いかもね」
団長とマークスが盛り上がっているが
「ちょっと待て。何故遺跡に行くんだ!?ここは街か違う国に行こうぜ?つか、遺跡とか嫌な予感しかしねーよ!」
「行きましょうマサキ。面白そうじゃない」
「嫌だ!俺の嫌な予感はだいたい当たってるんだよ!!」
リューネが面白そうとかいう時点でアウトだ。
「因みにだが聞いてみる。行かないが一応な。どういう所なんだ?」
団長とマークスは二人揃ってニコッとして
「「魔物の巣窟さ」」




