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「やっと解放された」


ギルドから出て大きく背伸びをする。


ヤックルが殺された事を聞いたのは次の日の朝だ。


ベッドから出たくなかったのにリューネにいつもの如く起こされて朝食食べようとした時、宿に何人もの鎧を着た人達が入って来て最後に入ってきたスーツらしき服を着たツリ目の怖そうな女の人がこう言ったのだ。


「ヤックル暗殺容疑で貴殿を拘束する」


「なに言ってんのこの姉ちゃん」


「マサキ以下パーティメンバーも一緒にご同行願う」


「あれ?話聞いてた?いきなり来てなに言ってんの?ヤックルが暗殺された?俺が容疑者?」


「直ちに拘束しなさい」


「おい、話を聞けぇぇえ!!」


鎧を着た人間が何人か俺の所へ来て手を掴む。


俺の手に何か変な模様が入ったリングをつけさせた。そのリングを左右の手首につけた途端磁石みたいにリングがくっつく。


「それは拘束アイテムだね。中々珍しい物を使うね」


マークスが食堂から出て来て俺に使われたアイテムを感心するように見る。


いや、助けてよ。


「マークスさん。貴女の仲間であったヤックルさんが暗殺されました。容疑者としてこのマサキを拘束して行きます」


「へぇ。あいつ死んだんだ。ま、冒険者は死と隣り合わせの仕事だ。特にヤックルは色々裏で動いていたから怨みを買われるのは普通の冒険者よりは多いしね」


「はい。ですがギルドマスターであるヤックルさんを暗殺出来る人間はそうそういません。昨日ヤックルさんと揉めたこの人達はヤックルさんより遥かに強いと思われるので暗殺した可能性があります」


「強いのに暗殺?笑っちゃうほどこじつけてるね。強いなら堂々と倒しちゃうでしょうが。それともそういう風にしろって言われてるのかな?」


「私は何も言えません。では」


女はクルッと反転して宿から出て行く。


マークスは俺を見て


「あー多分ギルドの地下に牢獄があるんだけどそこに入れられると思われる。ここで派手に暴れちゃっても良いと思うけどもっとトラブルが起きると思うから……」


「黙って牢獄に入っとけって事だろ?全く状況が理解できてないがとりあえずヤックルが死んだ事はわかった。ま、牢獄って言っても俺何もしてないしすぐ解放されるだろう。大人しく牢獄で寝てるよ」



「甘く見てました。本当に甘く見てた。何この固いベット。何このさらけ出した便所。床はなんか所々赤黒くなっている所多すぎ。臭い」


「なにブツブツ言ってるんだ!大人しくしてろ!」


「うるせー!!宿でリューネ達を置いてきて正解だわ。こんな所にいたらあいつらぶっ壊すわ。いや、俺も壊したい。固いベットって……俺は柔らかいベットじゃないと中々寝付けないんだよ!」


「大人しくしてろって言ってるんだろうが!!」


「あーここ俺無実って確定したら壊しちゃおうかな。いや、無実だから壊す事確定だわ。第一何故俺ここにいる?本当は柔らかいベットで寝ていたはずなのに。ギルドマスターめ。生きてても死んでても俺の邪魔をするとは」


「おい、聞いてるか!?大人しく……」


「大人しく出来るかぁぁあああ!!なんなんだよこの固いベット!便所は良い。見られて興奮する訳じゃないがこんなもんだと思っていたさ。ただな、ベットがいかん。固い。固すぎるぞ!!という事で俺をここに入れたいなら柔らかいベットと交換しな!」


「お前容疑者だからな!?図々しいにも限度があるだろうが!!それにその手首につけたリング。それはこっちから魔力を流せば……」


「ああこのオモチャみたいなリングね。ふん! ホラ取れたぞ?という事でベット交換を要求する!!」


「ッ!?力で拘束リングを千切っただと!?魔力を十分の一まで抑えて力も出ないよう改良したはずなのに……」


「ベット!!ベット!!」


「ひぃぃ!!近寄るな!!」


「ベットを交換しなきゃこの牢獄から抜け出すぞ?困るよな?俺は別に困らないけどお前達は困るよな?な?」


「分かった!!分かったから!!」


「お前は話がわかる奴だ。なら、今から用意しな。俺は柔らかいベットじゃないと寝れないんだぜ?」


こんなやり取りがありつつも牢獄で一週間程過ごした。


一週間過ぎても外には出れなかった。牢獄の中にずっといた。取り調べとかも無くただただ監視付きの部屋に入ってる感じ。


「へいへい。俺はいつになったら出れるのかねワトソン君」


「私はワトソンではありません。それにその質問には答えれません」


監視している人間は毎日変わる。


男だったり女だったり。今日は熟練感がある女性だ。雰囲気は熟練感があるが見た目は若い。


「ワトソン君はこの仕事についてどれくらい経ってるんだい?」


「ですからワトソンではありません。五年勤務しています」


「ほうほう。ワトソン君は真面目なんだね」


「ワトソンでは……いえもう良いです」


「で、ワトソン君さ。何で懐に拘束アイテムを隠しているんだい?」


「念のためです。貴方には効かないことは知っていますが素のままで貴方に会うほど私達は馬鹿じゃありません」


「まるで化け物相手してるみたいだよな。全く困るよ。こちらとて人間なんだからもうちょっと丁寧な扱いをして欲しいよ」


「拘束アイテムを軽々壊し毎日看守に話す人間は中々いません。看守に悪口や呪い関連の言葉をするのが当たり前の中普通に話す貴方はどこかおかしいのです」


「だーって暇なんだよ!!暇なの!!ベットは交換してくれたから睡眠は確保出来てるけど流石に暇だわ。暇だから話すしか無いんだよ!という事で話そうじゃないか!」


看守は黙ってしまった。


全く照れ屋さんなんだから!


俺はそそくさとベットに入った。あれ?目から水が流れてくる。


「お、お疲れ様です!!」


俺が布団に潜り込み少し経った時看守の女性がガタッと立ち上がり緊張した声で話した。


「どうですか?容疑者は」


あ、この声一番最初に会ったあのキツめの姉ちゃんだ。


「相変わらず看守に話しかけてはきますがそれ以外は特に何もありません」


「ふむ。まだ尻尾をみせませんか」


コツコツと鉄格子の前まで来て


「マサキ。貴方が認めない限りここからは出られませんよ?いい加減認めたらどうです?」


俺は布団から顔を出して


「バルス!」


そう言ってもう一度布団に潜り込んだ。


「飽きた。抜けよう」


あれから数日が経ったがまだ牢獄から出てない。流石にベットにずっとくるめているから苦では無いがそろそろこの部屋に飽きた。


布団から出て鉄格子の方へ歩く。


「何の用だ?」


今日は男の看守だ。


「飽きたんでこの部屋から出ます」


「何を言ってるんだ貴様!?」


看守は立ち上がり腰に携えている剣に手をあてる。


「まあまあ落ち着けって。俺はこの部屋から出たいだけだ。戦おうって訳じゃない」


「その考えは脱獄すると言ってるのと同じだ!!こちらはその場の状況に応じて容疑者を斬る事も許されている」


隙のない構えで剣を抜きこちらに向けるが……。


「いい構えだがまだまだだな。団長に比べたら動作が遅い。抜いた時点でもう団長だったら二回は斬ってるぞ」


「何を……」


「だから遅いんだって」


看守が手にしてた剣はバラバラに崩れ落ちる。


「ほらな。俺ですらこういう事が出来るんだぜ?」


「な、何をしたんだ!?」


「何したと思う?」


俺の目の前にある鉄格子が勝手に曲がっていく。そして一人通れる大きな円状の鉄格子が出来た。


俺は一歩前に歩き久々に牢獄から出た。


「あ、出てきていいよ~」


俺は俺の影にいる奴に話しかけた。


「 やっと出れましたよぉ。精霊王様の願いとはいえ暇でしたぁ」


影からヌッて現れたのは上級精霊のダークである。


「悪いな俺の気分に付き合わせて」


「何のなんのですぅ。マサキ様の影は居心地が良かったですよ?」


「知らんがな。ま、とりあえず戻っていいよ」


「良いんですかぁ?この人間殺さなくても?」


「物騒な事言うな!良いからリューネの所に戻りな!」


「はぁ~い」


ダークはスッと消えた。


「ま、今日でバイバイしますよ。もう飽きたから」


看守に敬礼して俺は堂々と外に出て冒頭に戻った訳だ。


いやー疲れた。


「居たぞ!」


ギルドから鎧を着た人間が出てくる。


次々と出てきて俺を囲む。


「行け!」


掛け声と共に囲んでいた鎧の人間達……言いづらいな。鎧で良いか。鎧が一糸乱れず俺を捕まえようと飛び込んでくるが……。


「「グッ!!?」」


何人かが吹き飛ぶ。


「マサキ殿待ってましたよ」


剣を横になぎって吹き飛ばしたのは団長だ。


「おいおい物騒な事するなぁ」


「怯むなぁ!!!」


掛け声と共に先程とは違う隊形で剣を持って捕まえにくるが


ドンッ!!


大勢吹き飛ぶ。


「お前ら……」


リューネ達が俺の事を囲むように集まった。


「そろそろかなーって思って皆んなで待っていたのよ。そしたらダークが戻ってきたから来たら面白そうな事してるじゃない」


「面白くはないわ!」


しかし、これで全員集まった。


「あなたたち!何をしているのかわかっているのですか!?ギルドマスターの暗殺容疑に加え脱獄に貴族様の兵士まで吹き飛ばして罪をどれだけ重ねるのですか!?」


ギルドからはあのキツめの女性が般若よろしくみたいな顔をして唾を飛ばしながら怒ってくる。


「脱獄じゃない。俺はただ部屋に飽きたから出ただけだよ」


「脱獄ですそれは!!」


「そもそも俺はギルドマスターを殺してはない」


「それを証明するのも無いでしょ?」


「それ言うなら俺が殺したって言う証拠も無いだろ?だから、取り調べしようにも出来ないからずっと牢獄に入れてたんだろ?」


「それは……」


「ま、アンタに言っても仕方ないけど。俺は殺してない。ずっとここにいても俺にメリットは無い。つまり、この街からでていくわ!」


そう言って俺はギルドを背にして歩き始める。


後ろでは何か言っていて恐らくだが貴族の兵士達が襲いかかってくるが全部リューネ達が追い払ってくれてる。


歩く度に前が左右に広がる。


そしてーー


「じゃ、またな!」


街の入り口から普通に出て行く。


リューネが魔法で街全体になにかの魔法をかけたのか悲鳴が聞こえてくる。


入り口には分厚い氷が張っておりそう簡単に壊すことは無理そうだ。


「これで俺達はお尋ね者になった訳か」


ギルドマスター暗殺に脱獄。あの鎧が貴族の兵士みたいなことも言ってたから貴族に対する反発。


後、この街での無差別攻撃。


やべぇ。捕まれば即処刑は免れないだろうな。


「いや、大丈夫だと思いますよマサキ殿」


「大丈夫じゃねぇだろどう見ても」


団長は剣を腰に携えて氷の壁を見ながら気楽に言う。


「今回の件は明らかに貴族が絡んでいます。これだけの兵士を動かすのですからだいぶ上の貴族が絡んでいるでしょう」


「尚更大丈夫では無いよな?」


「だから大丈夫なのです。上にいる貴族……大貴族などはここまでして失敗したとなると他の大貴族に顔を向けれないのですよ。プライドの塊みたいな人間しかいませんからね」


「ということは今ここでやったことって?」


「無かったことになります。マサキ殿が暗殺したという事も無くなりギルドマスターは誰かに殺された。で、終わります。勿論情報を操作するため街の人間には圧力はかかると思いますが」


「なんか信じられないんだが」


「正確なことを言いますと大貴族や貴族達は殺しを躊躇いません。それこそギルドマスターにですらします。ただ、圧倒的な力を持つ人間ーー今で言うとマサキ殿や私達には力で及ばない以上殺すより従えたほうがメリットがあります。だから、今は何もしてきません。勧誘はしてくると思いますが」


「めんどくさ」


団長の話だとこの事態はこの街だけに留まるみたいだな。 なんか無駄な事したようなしてないような。


「マサキが命令すればその貴族ごと滅ぼしてやるのに」


「ブラックはお口チャック。あ、 マークスは大丈夫なのか?」


一応宿に泊まらせて貰ったり色々助けて貰ったからな。


「私を呼んだかい?」


「何故いるし」


入り口の近くのちょーど生えている木の上にマークスはいた。


木の上から飛び降りる。


身のこなしは流石は元冒険者だけあってキレがある。マークスは宿にいる時の服装では無く冒険者の格好をしている。


「色々と聞きたいことがあるんだが」


「ま、そうだろうね。けどね今はこの場所から離れた方がいいと思うよ?」


「なんでだ?」


「簡単さ。兵士が帝都から送られてくるからさ。さっき通信道具で応援を呼んでた」


「なんで応援を呼んだことを知っているんだよ」


「企業秘密さ!ま、なんにせよ離れるに越したことはないよ」


マークスの言う通りであれば離れた方が良い。良いのだが何故ここまでしてくれるんだ?


「帝都の兵士達とバッタリ会わないためにも裏道通った方が良いよね?」


「そうしていただけると助かります」


俺が考えている間に団長達はマークスと話を進める。


うん。考えるのは後にして離れよう。考えるだけ無駄だから落ち着いたら直接聞こう。


「こっちだよ」


マークスが案内する道を俺達はついて行く。


森の中を左行ったり右行ったりとくねくね歩く。


整えられた道じゃないので歩き辛くて仕方ない。


案内されること30分は経っただろうか。


森の中に開けた場所に着いた。


開けた場所には家が建てられている。木造建てでなんか小人が住んでそうなイメージがする。


「ここは緊急用で私が作らせたのさ。何かあった時に休める場所が欲しくてさ。だから、作りは簡単にしてもらっているしいざとなったら捨てれる」


「もったいないな」


「緊急用だから良いんだよ。使わないことが一番なんだけどさ」


そう言ってマークスは家に向かって歩いて行く。


俺たちも歩き始める。


なんか、リューネと出会った時を思い出すな。


「あ、そうだ。家の中に……」


「この“二人”なら知っているわ」


マークスが何か言おうとしたがリューネがそれを遮りそう言った。


「いつ会ったんだい?中々会う機会なんて無いはずなんだが……」


「旅の途中で会ったのよ。見え見えの策だったけどね」


「ふーん。そうかい」


いや、誰だよ。納得しているのは団長にリューネと魔力を感知するのが得意な奴らだけだ。


「しかしビックリだわ。マークスってあの二人とどういう仲かしら?」


「それも家に入って話すよ」


いや、だから誰なんだよ。

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