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湖に向けてありったけの声でツッコミを入れた。
「マサキ何いってるの?」
後ろからリューネが何いってんのコイツ?みたいな口調で言ってくる。どうやら時は動いたみたいだな。周りからガヤガヤ聞こえてくる。
「ちょっとな。一方的に言ってくる奴にツッコミ入れたんだよ」
そう言うがリューネ達は分かっていない感じだ。
「そんなことよりも魚がいない原因と解決策が分かった」
「へ~。原因は分かるけど解決策は知らないから教えてほしいな」
リューネが目を細め俺に言ってくる。
こいつ原因知っていたのか?
「なんで原因知っているんだよ?」
「秘密よ。って言いたいけどマサキはもう知っているからいいか。あの光る魚よ」
「マジで知っていやがった」
「あの魚は私やブラックくらいしかどういう魚がは知らないはず。いや、魚じゃないわね」
リューネは俺に近付いて耳元で言う。
「神の使い……かしら?」
やっぱり気付いていたのか。
「そんな顔しないで。私達はマサキの事を詳しくは聞かないわ。聞いたところで私達の常識を斜め上にいって理解出来そうにもないから。まあ、知らない方が私は楽しめるからいいんだけどねー!」
リューネは悪どい笑顔で俺から離れていく。
「リューネが知っているって事はお前らも知っているんだよな?」
全員が頷く。
知っているが余計な詮索はしないのは信頼されているからか。全く優しい奴らだな。
頭をボリボリ掻きながら湖の方へ体を回す。
赤い湖の中には光る魚どころか未だに魚一匹もいない。
「どうやって解決するの?」
リューネ達はいつのまにか横にきている。
「頼んでみる!」
「は?」
リューネ達は は? みたいな顔をするが無視する。
「ユカリー!悪いけど魚達を戻してくれ!」
しゃがみこみ周りに聞かれない程度の大きさでユカリに頼む。
側からみたら湖に声をかけている危ない人に見えるだろう。実際俺も声をかけてみたが恥ずかしさはある。出てきてくれよ。
願いが通じたのかユカリと名乗る光る魚が水面からジャンプした後赤い湖の水面に次々と魚達が跳ねていく。よく見ると他の色の湖にも同じ現象が起きていた。
「ふぅ。なんとか魚が戻ってきたみたいだな」
立ち上がると周りにいた漁師や冒険者達が今起きている事態をちゃんと把握出来ず、驚いた顔で固まっている。リューネ達も同様に目を開いて驚いている。
「問題も解決したしさっさとここから離れようぜ。もうトラブルはゴメンだ」
色々と分からないことが多い。
ユカリはどうして魚を隠したのか。俺が神に転生させられた事を何故知っているのか。
疑問しか残っていないが答えを知るためにトラブルに突っ込んでいく勇気を今は持ってはいない。
逃げるようにリューネ達を抜け漁師達の中に歩いていたのだがふと、誰かに見られてる視線を感じた。
リューネ達……ではないな。
どこからだ?
辺りをグルグルと視線を感じる方に探していると、見つけた。湖に集まる群衆の中で俺をずっと見続ける男を。その視線からは恐怖と驚愕が含まれているの何となく感じる。
その男はゆっくりとだがこちらに歩いてくる。僅かだが男が歩いた後の周りの顔が強張る。たが、すぐに元に戻る。ん?というかそういう反応をしているのは冒険者だけだ。
男は俺の目の前まで来ると急に笑顔になりこう言った。
「初めましてマサキ。私はこの町のギルドマスターをしているヤックルと言います」
こいつがギルドマスターだと?
見た目はどちらかと言えば本などを管理するメガネをかけた文化系みたいな見た目だ。
身長は高く冒険者特有の頭がツルツルじゃない。
こんな事を言ったら怒られるだろうが、ギルドマスターはツルツルな強面なガタイが良いオッサンがなるもんだと思っていた。
さらにイケメンなのが腹が立つ。
「昨日は申し訳ございません」
ヤックルは頭を下げ謝罪してきた。
だが、俺はなんとなく分かった。こいつ心から謝っていないな。
「ああ、嘘ついて居ないって言ったことね」
正直そこからトラブルが始まったと言っても過言ではない。だから、ここは変な探りとかを入れずに思った事をはっきり言おう。
「俺は心が小さいから許さないけどね」
そう言うとヤックルは顔を上げ困った顔をする。
「本来なら私はマサキに会っても良かったのですが、上からの指示で会わないよう言われてました」
「ほー。上からの指示ね……。覇水の指輪も買い取ってくれなかったのも上からの指示なわけね?」
「そうなんですよ。まあ本来覇水の指輪を売る冒険者はいませんが」
「いらないから売るんだよ!!ったく。で、ビビって気絶したギルドマスターは謝って終わり?」
「いや、その……」
「しかも今起きてた湖の異常事態も解決せずにノコノコ来たわけですか。ギルドマスターっていうのは名前だけ立派で中身はオンボロみたいですね?」
あ、やべ。ちょっとムカついていたから正直に話していたらなんかヒートアップしてしまった。
その証拠にヤックルは顔は困っているのだが目が笑ってない。あれ、人を殺す時に向ける目だ。
「あがぁぁあああ!?」
急に誰かが叫んだ。しかも一人じゃない。何人もだ。辺りを見渡すと……。
「マサキは殿中々悪役が染み付いていますね」
「マサキだからね。仕方ない」
リューネ達が群衆の中からそれぞれ現れた。
「あ、そこら辺に倒れているのアナタの部下よね?何しようとしていたのかは知らないけど……ふふ。邪魔だったから眠ってもらったわ」
「こちらも三人程いましたよ」
リューネ達はどうやら叫んだ人達に何かしらしたみたいだ。
「いやー、この人達早い早い。あっという間に倒していったよ」
マークスが近づいて来てヤックルを見る。
「あんた、懲りずにまだこういう事してたんだね。あん時懲らしめたのに。はぁ。来て正解だったよ」
「マークス知っているのか?」
「知っているさ。私の元仲間さ」
ほへ~。
「これはこれはマークスさんじゃないですか。お久しぶりですね。同じ街にいるのに中々会えなくて寂しかったんですよ」
「はっ!相変わらず貼り付けた笑顔と嘘が上手いじゃないか。ギルドマスターとしても上手くやってるみたいじゃないか」
「はい。お陰様で盛況していますよ。今度帝都にて大貴族様達にお呼ばれするまでになりましたよ」
「そりゃあ良かったな。悪どい事を躊躇わず殺しも躊躇わない人間を貴族達は欲しいもんな。お前にピッタリだよ」
「嫌だな。私はそんな事しませんよ。私わね」
「だろうね。お前は人を使うのが上手いからな。私達の仲間にも上手く囁いて事件起こしたからな」
「あれは私のせいじゃありませんよ。私はただちょっとだけアドバイスをしただけですよ」
「……本当にそう思っているならその口叩きってやりたいもんだよ」
「昔はそう思った瞬間斬ってましたね。大人になりましたね!」
「人をおちょくるのは相変わらずだな」
二人の間で険悪な雰囲気が漂う。俺とヤックルが話し合っている時から注目されていたのだが今は俺達を囲むように輪が出来ていて見られている。
いや、あのさ二人が過去何かあったのは確かなんだろうけどさ、俺おいてけぼり。
最初に文句言ってから気持ちがスッと落ちついちゃった。文句言ったし指輪は違うギルドで売れば良いし、
まだ、二人何か言ってるが俺は帰りたくなっちゃった。このまま気配を消して離れれないかな?
帰っちゃう?
「っと。アナタと言いあってる場合じゃありませんでした。私はマサキに用があるのですよ」
「俺はお前に用はない。帰る」
言いあっていたヤックルが俺に話しかけてたので、チャンスと思い歩き始める。
「待ってもらいましょうか」
ヤックルが俺の肩を触ろうとした瞬間
「何するんだ貴様?」
今までここにいなかったブラックが現れヤックルの手を掴む。
「この魔法は人を拘束する為に使う魔法だぞ?何故マサキにかけようとしたんだ?」
ブラックがヤックルの手を強く握る。
ヤックルは痛いのか顔をしかめる。
パリン
何か甲高い音がヤックルの手から聞こえた。
「まあ、こんな弱い魔力の拘束魔法じゃマサキどころか我らには効かないがな」
ブラックはヤックルの手を離す。ヤックルの手のひらを見ると魔法陣が描いてありそこに亀裂が入っている。
「人間にしてはまあまあの魔法陣ね。ギルドマスターって言われるだけはあるみたいね。ただ、その魔法陣じゃ物理攻撃に対して弱いわね」
リューネはヤックルの手のひらに描いてある魔法陣を一瞬で理解して解説する。その解説いらない。
「これはどういう事でしょうかヤックル殿?いくらギルドマスターとはいえ今起こした事は度を超えていますよ」
団長が目を細め剣に手を当てながらヤックルの後ろから告げる。
「ヤックルよ。お前の得意な魔法を使う拘束魔法や精神を弄れる魔法はこの人達には効かないぞ?」
マークスも剣を抜きヤックルに向ける。
周りの騒ぎが無くなる。今のこの状態を緊張しながら見ている。
「マスター。殺意がそこらじゅうから感じます。排除いたしますか?」
タマが俺の側に来て聞いてくる。
うん。ちょっと待ってね。
「あー皆んな待ってくれ」
俺の言葉に全員こちらを見る。
「なんか殺伐としているが俺はもうこの人に用はない。だから帰ろう」
それだけ。そう言ってクルッと反対を向き歩く。
「あ、いうの忘れていた」
立ち止まりヤックルの方を見る。
「俺は何されても文句しか言わないけど、俺と関わった人達に何かしたら全力で潰しに行くから」
そう言ってまた歩き始める。目の前の人達が左右に避ける。
「流石はマサキだのぉ」
「何が流石なんだよ?というか助かったよありがとう」
「なぁに気にするな。主人を護るのは我の役目だ」
横で歩くブラックは若干誇らしげに言う。
「しかしマサキ殿は常にトラブルを呼びますね」
「俺だって呼びたくて呼んでるわけじゃねぇよ!!」
「マサキは厄病神」
「エミリア貴様また頭を掴まれたいんだな。良しやってやろうじゃねぇか!!」
「全く……お客さん達は強いね」
全員ああだこうだ騒ぎながらマークスの宿に向かった。
ーー夜。
「クソッ!!」
机を思いっきり殴る。
ヤックルはギルドに帰ってきたのはついさっきの事だ。湖の事件と一人の冒険者との対応に時間が掛かっていた。
「おやおや随分とイラついてますね~」
壁に寄りかかっていた人物がヤックルに話しかける。
「イラつくに決まっているだろうが!!私のプライドをズタズタに傷つけられましたからね」
ヤックルの周りには魔力の塊が現れ歪んでいる。それを見てヤックルに話しかけた人物はニヤリとする。
「そうだな。まさかお前が得意な拘束魔法を破ったばかりかこわされたもんな。俺も初めて見たぜ」
「なに喜んでるんですか?だいたいあなた達があの日殺さないからこういう事態に陥ったのですよ。分かってますか?」
「殺さないんじゃない。“殺せない”だ」
「あなたがそう言うのは珍しいですよ」
(こいつは気絶していてあの男の本当の力を知らない。力の次元が違いすぎる。気絶出来たのはあの男が力の使い方を把握してなかったからだろう)
「まあ、なんにせよ俺達はこの一件から手を引く。割りに合わなすぎる」
「良いでしょう。使えない人間を雇う方が私にとってもマイナスですからね。ああ、失敗した事は上に言っておきますので」
「好きにしな」
ヤックルは人間を見る目じゃなくゴミを見る感情の無い目で見てきた後、椅子に座り机にあった資料を読み始めた。
(さて“上の方”に報告しておきますかね。このギルドマスターはもう使えないってね)
壁から離れ扉から出て行く。
「はぁ。あの暗殺ギルドはもう使えないな。どうしたものかね」
出て行った扉を見てヤックルは考える。
「私の拘束魔法すら通用しないとなると、それ以上の魔力がある人物か……。殺しに特化した人間は……」
ゴトッ
ヤックルはそれ以上話す事は無かった。
落ちたのはヤックルの首である。
「アハハ。私の資料がある。あー可愛そう。自分が殺される側になるなんて思わなかったんだね。可愛そう」
ヤックルの首を切断した女らしき人物はヤックルが持っていた資料をジッと見てる。
「アハハ」
そう言って消えた。部屋に残ったのはヤックルの首と体だけである。




