03
「ご馳走様でした。とても美味しかった」
「ふふ。美味しかったならなによりだよマサキ」
一緒に空いた皿を片付ける。
俺は今、リューネと一緒に朝飯を食べ終えた所だ。
リューネに朝起こされた。
というか、起こされるまで寝ていた自分にビックリだ。
目覚ましが無いとはいえ基本朝は早く起きるようにしているせいか休日でも目覚まし無しで早く起きる体質になってたのに……。
まあ、色々あったから疲れてたんだよ。きっと。
で、朝起こされて一緒に朝食を食べることにした。
お腹は空いてなかったが、リューネが作って用意してあったので無下にするのは流石にどうかと思った。
美味かった。
で、寝たおかげで落ち着いたのか多少リューネと話せるようになった。
そう言えば自己紹介してなかったから名前と年齢だけ言ったらビックリされた。
なんか、見た目がかなり若く見えたらしい。
いや、年相応の顔をしているよ。
で、他の事は話してない。
流石に転生や神様の話をしたら頭オカシイ人に認定されそうだからさ。
まだ、リューネには悪いけど黙っておこう。
さて、話を整理しよう。
……って言ってもまだわからない事だらけだが。
まず、ここは異世界。
魔法が使えるらしい。実際使ってる所は見てない。
そして、この女性。
リューネ。
美人さんだがどうやら魔法使いみたいだ。
それも強力な魔法が使える。
ステータス。
これは、まだ分からない。
神様。
ぶっ飛ばす。
うん。こんなもんか。
ソファに座りながら無い頭を使いまとめてみた。
「難しい顔してどうしたの?」
洗い終えて向かいのソファに座りリューネが不思議そうに聞いてくる。
「ちょっと自分なりにまとめてた」
「ふーん。そうなんだ」
「それで、ステータスの事を教えて欲しい」
「う~ん。本来なら子供でも分かるステータスが分からないのが不思議よね~」
何?この世界では子供ですらステータスを分かるだと?
やべえ、俺聞くの間違えたか?
「まあマサキのステータス興味あるしちょっと色々聞きたいこともあるから……そうね、マサキちょっと付き合ってくれる?」
立ち上がり玄関に向かおうとするリューネに俺はただただついてくしかない。
俺もステータス知りたいしそれに……いや、とりあえず付いて行こう。
「ちょっと待っててね~」
家を出てすぐの森。
リューネが手を動かすと木々が小さくなり無くなった。
そこには剥き出しの土が縦横200メートルくらいの広がった。
すっげ。
開いた口が閉まらない。
「どうしたん?」
「……え?いや、何でもない」
「そう?まあいいや。良し、ステータスの説明をするには見せた方が良いよね!」
ハイ、と急にリューネの前に文字が現れた。
「これがステータスね!」
俺はリューネに近づき文字を見る。
どうやら、読めるようだ。
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精霊王 リューネ
Lv…900
HP…9050000
MP…1000000
【スキル】
精霊召喚【最上】
全魔法無詠唱
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俺は何回も目を擦った。
え?
「精霊王?全魔法無詠唱?精霊召喚?」
「どう?中々凄いでしょ?」
リューネが自信満々に胸を張る。
全くもって理解が追いつきませーん!
「あのさ、色々と質問したいんだが…」
「ん~良いんだけど、とりあえずはマサキのステータス見てからにしよ?」
「良いけど……」
ここで問題発生。
ステータスの出し方が分からない。
「リューネ、ステータス出す時どうすれば良いの?」
「どうすればって……普通に思えば出てくるんだよ?」
いや、知らないし。
でもな……多分普通にステータスが出せるもんだから説明しづらいんだろうな。
呼吸の仕方が分からないから教えてくれ
みたいなことなんだろう。
よし、とりあえず色々試してみよう。
「ステータスオープンんんん⁉︎」
とりあえず言葉にして出るか試したら文字が現れた。
「あ、ステータス出たね!見せて~」
リューネが近づいて見てくる。
俺も見よう。
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猫田 正木
Lv…1
HP…???
MP…???
【スキル】
超成長
フルコピー
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やべ、俺のステータスツッコむ所有りすぎる。
「……あのさリューネ」
「なにこれ。何で〔???〕なの?」
俺が聞きたいわ!
「とりあえずさ、教えて欲しい。全部」
「そうだね……」
リューネは俺のステータスを見た瞬間ニコニコしてた顔が真顔になった。
いや、結構怖かったよ。
「まず、なにから話そうかしらね」
「あ、ならステータスってどういう理屈で現れるん?言葉にしたら出たけどリューネはなにも言わずに出したよね?」
「ステータスは自分の魔力で現わせる。だから、別に言葉にしなくても大丈夫なんだよ」
「魔力?」
「それも知らないの?」
「いや、まぁ。その……知らない」
「……まぁ良いわ。魔力は生まれた時から体内に持っているもの。レベルを上げれば勿論魔力は増える。まあ、上限はそれぞれだからこればかりは何処までかって言うのは分からない。魔力はMPで表されるのよ」
「なるほど……というかリューネはレベル900だったよね?普通なの?」
だいたいゲームしていれば100が上限だよね。
「私はリミットオーバー《限界を超える者》だから900まで上げたけど、普通の人間は100行かないよ」
「……チートだわ」
「チート?よく分からないけど、私からしたらマサキのレベルの方がびっくりなんだけど……」
Lv1がおかしいのか?
「どういう事?」
「Lv1って生まれた赤ちゃんがそのLvなんだよ。だからマサキの年齢だったら少なくとも20は無いとおかしいんだよね~」
「あ、赤ちゃん⁉︎」
おいおい。
あの神様絶対ワザとだよな。
「本当、マサキって何者?」
「日本人です」
「日本人?聞いた事ないなぁ~」
そりゃあ異世界から来たからね!
なんて、言えない。
「と、とりあえず話を戻してMPが魔力だとしたらHPは生命力で解釈して良いんだよね?」
「うん、その考えで大丈夫だよ!0になれば死ぬって事ね」
よし、ここら辺はRPGのゲームと似てる。
なら、俺の〔???〕は何だろうか。
……考えても分からん。
なら、次は【スキル】の意味を聞こう。
「それじゃあ、質問変えてこの【スキル】って何?」
「【スキル】はその者が使える特殊な技…かな?だからそんなに数は多くない。というか普通の人間はスキルは持たないものよ?」
まあ、ここまできたらもう普通の人間じゃないんだよな俺。
「……なるほどね。なら、リューネのスキル二つはかなり凄いんだ」
「まあ私は精霊王ですからね」
ふふ、どうよ?みたいな感じで威張ってくる。
いや、どう見ても精霊王には見えないし、というか…
「精霊っているんだ?リューネのスキルに精霊召喚ってあるし召喚出来るの?というか全魔法無詠唱って何?」
「ちょっと落ち着いて。えーっとね先ずは精霊がいるかどうかって話はいるわよ。ただ、普通の人間には見えないけどね。せいぜい魔法使いか精霊使いが見えるのが限界かな?」
「あれ?俺リューネ見えてるよ?」
「私は特別なのよ。他の精霊達は見えないのよ。それに精霊使いは呼び出してせいぜい中級精霊までだし、見えなくても別に良いのよ」
つまり、精霊はいるが見えない。
精霊使いでも中級までしか喚べない。
で、多分だが中級まで呼べるってことはそれ以下も呼べるってことか。
しかも、精霊使いでも見える人と見えない人がいるんだな。
「精霊使いが見えるってのは全員みえるの?」
「いいえ。見えるのは2パターンあるの。一つはスキルで精霊が見えるパターン。まあ、ごく稀にだけど。もう一つは精霊を呼んで長く過ごした人物が精霊との仲を深くしたら見えるようになるの。だいたいが見える人ってのはこのパターン」
「仲を深めると見えるようになるのか?」
「全員が全員見えるってのは違うけど仲を深めることによって精霊が可視化のスキルが付くの」
「へ~。スキルって便利だな」
まあ、精霊の事は分かったな。
「私は精霊王だから好きなように精霊を呼び出せるのよ。しかも【最上】だから上級も何体でも呼べるのよ」
「最上?」
そうそう、これは気になっていた。
「スキルの限度かな?一番下で【小】で一番上がこの【最上】なの。これは魔力と関係があって魔力が少なかったら【小】。で、鍛えていけば上がってくのよ。ただ、大体の人は【中】で止まるんだけどね」
なるほどな。
リューネの魔力は確かにぶっ飛んだ数値だったな。
「私は……まあレベルを上げていったから最上になったけどこれは後から付いたスキルなのよね~。元々のスキルは全魔法無詠唱なのよね」
「その全魔法無詠唱ってさなんなの?文字だけ見るとバケモノじゃない?」
「レディーにバケモノは酷いな」
もう怒るよ?みたいな仕草をするが……。
バケモノでしょ。色んな意味で。
口には絶対出さないが。
「ごめんごめん!で、全魔法無詠唱って文字通り全部の魔法が無詠唱で使えるの?というか、この世界で魔法使う時って詠唱するの?」
「今度バケモノって言ったら知らないんだから!まったくもう…まぁ良いわ。そうね、その通り。全魔法を無詠唱で使えるの。ま、無詠唱だけなら他にもいるけど全魔法は私ぐらいかな?で、人間達は魔力を魔法にする時詠唱するわね。簡単な生活魔法は大丈夫なんだけど、攻撃する時とかは詠唱するわね」
「人間は全魔法使えるやついるの?」
「いないわね。せいぜい二つの魔法が限界よ。まあ特殊な人間はいるけどあくまで特殊だから一つしか使えないわよ」
「つまり、人間は基本的に魔法一つだけしか使えないと」
「そうね。“火、水、土、風、光、闇”基本はこのどれかの魔法を一つしか使用できない。使える魔法は魔力がどの属性かで決まるわね」
「リューネは全部使えるんだよね……」
「そうね。後は無魔法と精霊魔法が使えるわ」
「無魔法と精霊魔法?」
「無魔法はマサキに使った幻影魔法や探知魔法が無魔法になるわ」
ああ。あれが無魔法か。
「精霊魔法って言うのは、精霊にも属性があり精霊は魔力を使わずに自然の力を使えるの」
「んん?どう言う事?」
さっぱり分からん。
「そうね。簡単に言えば今風が吹いてるでしょ?本来人間は魔力を使い詠唱を唱えてから風を発生させるの。精霊魔法は風があればどんな風魔法を使えるの。魔力もいらないの。だから、簡単に言えば人間が使う魔法の上位交換かな?」
「精霊全員チートじゃねぇか⁉︎」
「ま、だから精霊使いは重宝されるの。魔力いらないし強いしで」
「た、確かに……。なるほどね。うん。大体は分かった」
また、分からないところ出たら聞けば良いだろう。
ステータス、スキル、魔法。
リューネのお陰で仕組みは分かった。
「後は俺のスキルが二つある事。【超成長】と【フルコピー】がなんなのかだよな~」
「私も成長スキルなら見たことはあるけど超成長とか見た事ないわね。フルコピーも聞いた事ないわ」
超成長とフルコピー。
文字通りなら成長が早いのとコピーが完璧って事やろ。
「う~ん……考えても分からないな。よし、リューネ。ちょっとお願いがある」
「ん?どうしたん?」
「俺のスキルは恐らく自分がするんじゃなく相手がしたものをコピーする……スキルなんだと思うんだよね。確信は全くないけど」
「あーなるほど。なら、私が全魔法マサキにぶつければ良いのね?」
「全然違う‼︎」
「ふふ。冗談よ」
何この人。怖い。
あ、人じゃないか。いや、どうでも良いか。
「魔法は後にしてくれ!先、リューネの召喚スキルを見てみたい。魔法はここじゃなんだし召喚なら出来そうかなって思ってさ」
「ふふ。魔法も後から教えてあげるわ。なんか久々に楽しいと思ってしまったからね。嫌って言っても見せるからね?」
「……ほどほどにね」
「それじゃあ……」
リューネは手を前で組み目を閉じ
「“精霊達よ我の力に答えよ……”」
今までの声と違い何処か神秘的な…そう、女神みたいな聞いたものを魅了する声で詠唱する。
ん?詠唱?
あれ?精霊召喚は詠唱必要なのか?
リューネの目の前にいくつもの魔法陣がキラキラと光って現れた。
「……皆んな出てきてー!」
「だと、思ったよ!!」
どうやら、無詠唱で呼べるのに無理矢理かっこいいとこ見せようとしたみたい。
だが、めんどくさくなったのか素に戻り呼び出した。
リューネが呼びかけた瞬間、魔法陣が一斉に強く光り出し、色々と出てきた。
「お呼びでしょうか、精霊王」
紅く光る魔法陣から出てきてリューネに話しかけてきたのは長髪の赤い髪をしたイケメン。
なんか、服装が袴なんだけど……袴あるんだ。
顔の特徴とかは後からで良いか。
どうせ、後からリューネに紹介してもらえる…はずだから。
リューネの周りには呼び出した精霊達が集まっている。
子供から大人まで。どうやら今いる精霊達は人型みたいだ。
というか、精霊って全員人型なのかな?
「今日は特に何もないよ~。ただ、召喚を見せたい人がいたからさ」
リューネがそう言うと精霊達が一斉にこっちを見た。
「あの、人間にですか?」
赤い髪をしたイケメンが目を細めこちらを見る。
怖い。
「マサキ~!これで覚えれた?」
イケメンの話を無視しリューネはこちらに来る。
「え?無視して良いの?と言うか紹介とかして貰えないの?」
「そんなもの後で良いよ。それよりどう?なんか変化ある?」
ちょっと!近い近い。
興味津々で近づくリューネに焦りながら何とか離す。
「そんな事言ってもな~。特に『召喚スキルを覚えました。超成長スキルにより召喚【最上】に成長しました』……なんか覚えたっぽい」
「嘘!?どんなスキル!?」
宝物を目にした子供みたいな目をしたリューネ。
「えーっと……召喚【最上】スキルってのを覚えたらしい」
頭の中に機械的なガイダンスが流れた。
あれって、なんか覚えたら聞こえるのか?
……考えたいとこだが、リューネがキラキラした目で見てくるもんで、どうやら考えるよりスキルを使わないといけないみたいだな。
「まさか精霊召喚見ただけで精霊召喚じゃなく召喚を覚えるなんて……これがフルコピーのスキルなの?」
「知らないよ!俺だってよく分からないし……」
「しかも最上って……よし、マサキ。召喚してみよう」
「そんな簡単に出来るものなの!?」
「コツは何を召喚したいかをイメージする事よ。後は魔力次第かな?だから、早く召喚して!」
もう、精霊達は何が何やら分からない状況だろうな。
「分かった分かった!……ったく、成功するか分からないぞ?それでも良いならやってみるよ」
「大丈夫。マサキなら、なんか出来そうなん気がするよ!」
呑気なことを言ってくれる。
しかし、召喚か。
うーむ。召喚となるとあの生き物をイメージしてしまうな。
つか、この世界にいるのかな?精霊達はいるみたいだし……多分いるよね。
正直失敗しそうだけど、やってみるか。
それに、ちょっと楽しい。
なんか、呼べたら俺スゲーって自慢出来そうだし。
まあ、自慢する相手なんざリューネぐらいしかいないだろうけどさ。
「よし、イメージはした。えーっと、どうやったら召喚出来る…」
とりあえず、召喚!って思っただけなんだけど、なんか目の前に黒い魔法陣が現れた。
しかも、一つの魔法陣なのに大きいんだわ。
目の前の地面の半分ぐらいの大きさ。
あ、これやっちゃった系だわ。
黒い魔法陣から黒い煙がもうもうと立ち上がる。
リューネが精霊達を呼んだ時とは違う現象に内心焦った。
いや、だってさ俺もピカピカーって光らせながら召喚したかったんだよ。
なのにだよ、真っ黒な煙に目の前が見えなくなるし……
さて、この事態をどうしようかと考えてると
「な、この魔力……」
「嘘でしょ」
精霊達が騒ぎ出した。
「ふふ……まさかあいつを呼んだのね」
リューネは普通だった。
いや、よく見ると冷や汗をかいてる。
精霊達は何かバリア的なモノを全員張っている。
「リューネ……」
何を召喚したのかと聞こうとした瞬間煙が勢いよく広がった。
「ゴホッゴホッ。な、何が起きたんだ!?」
煙を吸い咳き込みながら煙の中の生き物を見る。
「誰だ……我を召喚したのは」
体の芯まで響くような声だ。
煙の中からギラリと金色の鋭い目が見える。
そして、煙が晴れて姿を現した。
そこには真っ黒な身体に、何もかも通さない鱗。
見られただけで気絶しそうな金色の瞳。
簡単に何十…いや、何百も一振りで殺せそうな爪。
ビルかと思われるような巨体。
そう、俺がイメージしたのはドラゴンだ。