21
「何したの?」
リューネがまたあくどい笑顔で聞いてくる。
こいつ、隠すつもりは無いな!?
「この少女の命令を消せれば良いなぁって思って、ならその命令を消そうと思ったわけ。で、結果少女は意識を失い俺は何か普通の人間からかけ離れた気がして心で泣いてる」
「ふふ。大丈夫よ。私といる時点で普通の人間じゃないわよ」
「それを言うなァァ!!」
俺が膝をつき絶望してた時
カチッ
そういう音が聞こえた。
何もない空間に扉が現れた。
「今までだったら魔法陣だったよな?」
「そうですね。あの少女を倒したから現れたのは間違いないようですね」
「話ししてもラチがあかないわ。行くわよ」
リューネはなんの戸惑いもなく開ける。
その後を慌ててつい…
「流石に少女を1人置いて行けないな」
少女を背中におぶって扉の中に入る。
俺が最後で入った後扉は勝手に閉まり消えた。
扉の中は風景がガラリと変わり
「ここって玉座?」
壁とかは崩れているところがあるが、造りはイースル国の玉座に近い造りなっている。
目の前には椅子が1つだけある。
そこには骸骨になっている人間が座っている。
《ダンジョン制覇おめでとう》
突然頭の中に男の声が聞こえた。
辺りを見渡したが俺たち以外いない。
《因みに私はもうこの世界にはいないだろう。これはダンジョン制覇した者がこの玉座に来た時に自動的に流れるように魔法をかけてある》
「へ~。魔法でこんなこと出来るんだ」
「いやマサキ殿。リューネ殿みたいに精霊王とか魔王とかなら出来るかもしれませんが人間にこういう魔法は使えませんよ」
「え?」
「自分の声を何百、何千年と残す魔法なんて今の人間には出来ません。この声の方はもし人間だとしたらとてつもない魔力を持ってる人間です」
なるほど。
まあ、現代だったら録画とかして残せるしセンサー使って声出す機械を作れば良いんだろうけど。
…なんか日本帰りたくなった。
「どうかしました?」
「いや、なんもねぇよ。とりあえずこの声はあの椅子に座ってる骸骨か?」
「恐らく…」
《あ、その椅子に座ってるのは私じゃないから》
「違うのかよ!?つか、何で対話出来てるんだよ!!」
《それは簡単さ。椅子に骸骨がいてこの声が届くって事で普通に考えれば声の主として勘違いするよね!ぷぷ》
「なんか、この声にイラつくんだが!!」
まるで子供みたいな考えだな!
なんか神様みたいな奴だな。
《…えーと、ひとまず私のことは良いとして。ダンジョン制覇の報酬はこれだよ》
カチカチ
何かが噛み合い動いてる音が聞こえる。
奥の壁に扉が現れる。
《中にお宝がある。それを好きなだけ持って行くと良い。古代アイテムだったり金貨があるだけなんだけどね》
それは有難い。
古代アイテムは良いとして金貨は貰うだけ貰っておこう。
俺達は奥の壁に向かう。
その時少女が起きた。
「ん…?」
「お、起きたか。お前体軽いぞ。ちゃんと飯食べなよ」
「何で私を背負っているの?」
「流石に置いて行くわけにはいかないからな。まあ、起きたなら降ろすぞ」
そう言って少女を降ろす。
俺はそそくさと扉に行く。
金貨!金貨!
俺は扉を開け中を見る。
「うひょおお!」
見渡す限りの金貨金貨。
俺はアイテム袋に一生懸命入れ始めた。
「マサキ殿…」
「マサキ醜い」
「うるせぇ!お前ら自分の金貨は自分で持てよ?俺は俺で勝手に貰って行くからよ!」
親指をたてキメ顔で言う。
「あれはダメね」
リューネがなんか言ってるが気にしない。
これで俺はスローライフを送れるぜい!
ヒャァフゥー!!
金貨やなんか知らないアイテムを全て袋に入れるのに時間がかかった。
リューネ達はいつの間にかいなくなっていた。
扉から出るとリューネ達はお茶飲んでた。
「お前ら酷くねえか?俺を置いて一息つくなんて…」
「あの状態のマサキ殿に声をかけても無駄だったので」
そんなに酷かったのか俺は?
と、そんなリューネ達と話してる時少女がこちらに歩いてきた。
「どうした?」
「私…あなた達殺す命令されてた。なのに今はその命令なくなっている。私不必要だから好きな様にして」
少女は下を向き悲しそうな顔をする。
本当に機械なのか?
まるで人間だ。
いや、俺はもう人間だと思っているが。
「あ~なら…とりあえずこのダンジョン一緒に出るか?」
少女は顔を上げ
「殺さないの?」
「何でだよ!?殺さねえよ。戦っていたが今戦うつもりないだろ?なら、一緒に出ようぜ。ブラックもリューネも団長もエミリアも文句ないだろ?」
「うむ」
「マサキ殿にお任せします」
「良いわよ~」
「眠たい」
1人、関係ないことを言ってるが皆んな文句ないようだ。
「私、死ななくて良いの?命令をこなせなかったから廃棄されないの?」
「お前の脳みそは死ぬしか無いのか!?良いからついてこい。好きなようにして良いんだろ?つか、置いていった方が俺の良心が痛む」
「マサキに良心があるなんて…!?」
「おい、エミリア。お前にはお仕置きが必要だな」
エミリアには後から一発頭殴っておこう。
「つーわけで、一緒にこい。そっから自分で考えな」
俺は親指をたてキメ顔で言う。
それに対して少女は暗い顔から可愛らしい笑顔になり
「変な人」
「あらら?いたって真面目な俺が変な人だと!?」
少女はトコトコと俺のところまで来て
「私にはマスターがいましたが亡くなりました。マスターは私を倒した方を次のマスターになるよう言われてます」
「へー」
「なのでマスターが死ねって言われれば死にます。生きろって言われれば生きます」
「ほー」
「そして、今マスターは一緒にこいと言いました。なので私はマスターと一緒に行こうと思います」
「…もしかして俺がマスターなのか!?」
「はい」
マジか。
「因みに聞くけどそこの骸骨さんがマスター?」
「はい。マスター…いえ前のマスターは私を作ってくれたマスターです」
ふむふむ。
つまり、この少女の造り主か。
「ま、弔うことは出来ないが…」
手を合わせ目を瞑る。
あなたが作った少女は大事にします。
後、あんな戦闘させないでもうちょっとこう違うスキルとかつければよかったと俺は思います。
「さあ、帰るか」
実はさっきから角に魔方陣が現れており、あのよく分からない声がそこに魔力を出せば地上に帰れるって言ってた。
俺が魔方陣に向かおうとしたその時
「いい加減出て来たらどうなの?」
リューネが魔方陣とは反対の方を見て言う。
「リューネなにい…」
「あれれ?バレちゃいました?」
何もいない場所から黒い帽子を被った女の子が出てきた。
「え?誰?」
「おっと失礼しました。わたくし上級精霊のダークと申しますぅ」
女の子はペコリと頭を下げる。
女の子は黒いブカブカな服を着ており、いかにも魔法使いって格好をしている。
「そのダーマとか言う上級精霊が何でここにいるんだ?」
「マサキ殿、ダークです」
「いや、ワザとだから。ほんと」
俺が名前を間違えるわけないじゃないですかー!
ははは。
「で、ダークはなんでいるん?」
「わたくし、精霊王様があの森から出たと聞いていてもたってもいれられなくて探してまして。このダンジョンに入るのを見つけて追いかけてきました」
ほうほう。
「隠れるのが得意なわたくしを簡単に見つける精霊王様。流石です」
目尻を下げ頬に両手をあてうっとりする。
あ、なんかヤバイ匂いがする。
「はいはい。はぁ~。ダークはちょっと危ない子だから知られたくなかったんだけどね」
リューネが危ない子って言うこのダーク。
嫌な予感しかしません。
「…は!?わたくしとした事が」
どうやら意識は戻ってきたようだ。
「ダークはリューネを見つけたらどうするつもりなんだ?」
ここまで来て探すってことは何かしら理由があるのだろう。
「精霊王様を見つけて森から出た理由を聞かせて欲しいのですぅ」
「マサキと旅に出るため出たのよ。ね?」
「ね?じゃねぇし。お前が勝手について来ようとしたんじゃねぇか」
本当はブラックと2人で旅に出るつもりが下手くそな変身をしたリューネが旅について来ようとしたわけだしね。
「つまりつまり、そこのマサキとやらの人間と旅に出るつもりで出たんですね」
ダークは顎に手をあて、ふむふむ、と頷く。
そして
「なら、そこの人間を殺せば精霊王様はあの森に戻られるわけですね」
ダークがそう言うとリューネとブラックが動こうとしたが…
「精霊王とそちらのメイドさん…キングには一時的に動かないようにしました。まあ、簡単に破られますがそれでも…」
ダークは消え、俺…じゃなくエミリアと団長の前に現れ
「人間を殺すには充分ですぅ」
両手に黒い塊を現せ2人に放ーー
ドン!
ダークは吹き飛んだ。
少女によって吹き飛ばされた。
「ナイス!」
「いえ。マスターのお仲間を守るのは当然の事」
少女強くて助かった。
吹き飛ばされたダークを見ると
ダメージが無いのかいつの間にか俺たちの目の前にいた。
「忘れてましたぁ。そこの少女の事を。厄介ですぅ」
「なあ、お前俺達を殺そうとしてるんだよな?」
「そぉですよ?死んでもらい精霊王様は森に帰ってもらい静かなーー」
「おすわり」
ズドォン
ダークは地面に倒れる。
「あらら?」
俺はダークに近づき
「お前の気持ちは知らん!…が、仲間を殺そうとするなら…」
「俺はお前を許さないよ?」
ちょっとだけの殺意。
ただただ忠告するため。
「主人よ…そこまでじゃ」
「そうね。マサキ落ち着きましょう」
ブラックが前、リューネが後ろから抱きしめる。
「ななな何してるんですか君達はァァォァァア!!」
前からすっごい柔らかい感触。
後ろからは…うん。
「あ、戻った。後すっごく失礼な事を考えてないかしら」
「き、気のせいだよ!つか、2人して何してんだよ!?」
いや、気持ちいいんだよ?
ただ恥ずかしい。
「大丈夫そうだな」
そう言ってブラックは離れる。
続いてリューネも離れる。
「全く…主人はそのふざけた調子が一番似合うんじゃ。殺意を持つんじゃない」
「そうね。マサキはバカみたいな顔で騒ぐ方が似合ってるわ」
「なんなんだよお前らは!!急に貶しやがって!!」
こいつらなんなんだよ。
と、その時
「せ、精霊王様。キング…助かりましたぁ」
ダークがヨロヨロと立ち上がる。
「ダークも分かったでしょ?マサキはただの人間じゃないのよ。身をもって分かったでしょ?」
「はい…」
ダークは俺の顔を少し恐怖した顔で見る。
「まあ、あれだ。俺の仲間に手を出さなきゃこのリューネとイチャイチャしようが構わないさ。ただ、エミリアや団長を殺そうとするなら俺やブラック、それにリューネだってお前を潰すからな?」
「はい…」
現れた時と違いすっごくテンション落ちてる。
だが、今回はこいつが悪い。
…まあ、ちょっとやりすぎたかも。
ダークはトボトボとエミリア達のところへ行き
「すいませんでしたぁ」
頭を下げる。
へ~ちゃんと謝るのか。
「いや、大丈夫だ。自分の王がいなくなるのは異常だしそれを守るために…殺すのは分かる」
団長が真っ直ぐダークの目を見ていう。
「でも、1番の原因はこのリューネが森を出た事なんだけどね」
俺はリューネをジト目で見る。
「あら?なんのことかしら?」
澄ました顔で、知らんぷり。
「精霊王様はどうされるんですかぁ?」
ダークがリューネの所に行き心配そうに聞く。
「勿論、マサキと一緒に旅するわよ」
「いや、帰っても良いんだぞ?」
「ふふ。マサキは何を言ってるのかしら?」
チッ。
「そうなんですね。…なら…ッ!」
「ダメよ。あなたはちゃんと元にいた所に戻りなさい。また機会があれば呼んであげるから」
リューネはダークの頬に手をあて微笑む。
「…絶対ですよ?」
「ええ」
ダークは母親に甘える子供みたいだな。
「なら、分かりましたぁ」
と、ダークが俺に向き
「精霊王様を宜しくお願いしますぅ」
「おお。そのうち帰すから。リューネが帰る気分になれば」
「はい」
ダークはニコッと笑い闇に消えていった。
俺は体を伸ばし
「良し。色々あったが…」
皆んなの顔を見て
「外に出るか」
魔法陣の所に皆んな集まり、リューネが魔力を流す。
《…彼女を任せたよ》
何処からか優しい男の声が俺の頭に響いた。
「ああ。任せろ」
魔法陣は光り、オレ達は玉座から消えた。
【ダンジョン制覇しました。おめでとうございます】
ダンジョン内でその声が響いたーー




