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02

「ん…」


意識が少しづつ起き始める。


「…ここは何処だ」


完全に目が覚める。

寝ていたので上半身だけ起き上げ周りを見てみる。

どうやら地面に寝転んでいたみたいだ。


周りには木が沢山生えており俺が寝ている所は道とは呼べないが土が剥き出しで雑草が生えてない。

獣道みたいなかんじかな?


「さて、どうしたものか…」


ゆっくりと起き上がり考える。

どうやら、先程…まあどれくらい時間が経ったか分からないが俺は確か雲の上にいた。

あのクソッタレの神様と一緒に。


で、俺は死んでいた。こればっかりは夢であって欲しかったが…あの痛み、間違いなく夢じゃ無い。

はぁ~…一先ず現実と仮定してあいつは言ってたな。

異世界に行け、と。

つまり、ここ…森みたいな所は日本じゃなく異世界って事だよな。

ん~…ダメだ。頭が悪いせいか上手く纏まらない。


「よし。とりあえず歩いてみよう」


真っ直ぐ獣道が続いている。

なら、今は考えるより体を動かそう。


「疲れた~…喉乾いた~」


現在、まだ森の中です。

いやね、歩けばいつかは森を抜けると思ったのよ。

甘い考えでした。


かれこれ2時間以上歩いてると思う。

時間が分からないがお日様がだいぶ真上に来てる。

起きた時は朝だったのか多少涼しかったのが今じゃ暑くて仕方ない。


あ、服はなんかスウェットから俺が持っているユニ◯ロの上下に着替えてある。

って、俺の服なんてどうでも良い。


「このままじゃ、疲労で死んでしまうわ」


携帯も財布も何も無い。

神様は随分と酷いことするな。


だいぶ進んだつもりだがずっと同じ風景だから感覚が狂う。道を間違えたか?しかし、戻るのは嫌だな…。

仕方ない。このまま進もう。足に力を入れて歩き続ける。


歩き続けたマサキは屍のようだ。


冗談は置いといて。


「誰か助けてくれー!!」


思わず叫んでしまった。

俺は今木に寄りかかりグッタリしてる。

そりゃあそうなるわ。


なにせ、あれから歩いて日が傾き夕方になった。

あれからずっと歩いて一切風景が変わらないんだぜ?

しかも、人どころか動物すら見かけない。

鳥も見てない。


不気味すぎる程静かな森だよ。

怖い。

だけど、もうね、歩けないわ。

起きてから何も食べず飲まずで歩き続けてるから力が入らない。


「ああ、俺ここで死ぬのかな…」


たかだか1日何も口に入れないで歩き続けたくらいで死にはしないだろうが心がもうボロボロでネガティヴになるわ!


あーこれからどーしよ…と考えてると


「ん?…なんか良い匂いがする」


フンフンと匂いを嗅ぐと肉を焼いた香ばしい匂いがする。

歩くどころか立つのもキツイ体がスッと立ち上がり匂いの元へ歩き始めた。

匂いを辿りなが歩く。

森の中に入るわけでは無く獣道を歩く。


「…あれ?」


永遠に続くと思われた獣道が無くなった。

いや、無くなったというよりは行き止まりだ。

獣道が無くなった先には湖…と呼ぶには小さいが綺麗な湖が現れた。


湖の周りには相変わらず木がズラーっとそびえ立ってる。

湖に近づくと地面が見える程の透明な水だ。


そして、真っ正面。

俺から反対の湖の淵に家が建っている。

煙突から煙が出ており、恐らく匂いの元はあそこだ。


「…誰か住んでるんだよな」


家の下まで歩き玄関で立ち止まる。

パッと見た感じ木で作られてる普通の家にみたい。

二階建てじゃなくこじんまりしてオシャレ感がハンパない。

何処ぞのアニメ映画に出てきそうな家だ。


ぐ~~


家の外観を見てるとお腹が早く何か入れろと音がなる。

ええい。死ぬことに比べたら恥なんて知ったこっちゃ無い!

意地汚くて良い。住んでる人に飯を恵んでもらおう。


決意しドアをノックする。


「すいませーん!」


ノックした後少し時間が空き、ドアが開かれる。


「あ、すいませ…」


開けた住人に声をかけようとして言葉が詰まった。


「なんでしょう?」


そこには今まで生きてきて見たことないくらい美人がいた。


「どうしましたか?」


「え?…ああ、すいません!」


思わず見惚れていたら再度声をかけられた。

これじゃ変人だよなー。


「えーっと、実は…その」


恥を捨てたはずがどもってしまう。

あ、ほら美人さんが怪訝な目を向けてくる。

ちゃんとしろ俺!


「いきなりすいませんが、良かったら余った食事とかありましたら分けてください!」


頭を下げる。

これ、日本だったら警察もんだよ。

恥ずかしいし情けないし悔しいが生きるためだ。

もし、無理だったら…また歩き続けるしかあるまい。


「ん~良いですよ?」


「あ~やっぱりダメで…え?」


「ちょっと作りすぎたので…良かったら一緒に食べてください」


ニコッとする美人さん。

いやいやいや、ちょっと待て。

俺から頼んでおいてなんだがこの人大丈夫か?

知らない…しかも子供や女性じゃなく不審者っぽい俺を残飯じゃなく家に入れて一緒に食べる?

まさか、毒を盛られるのか!?

美人さんはクルッと回り家に入っていた。

これは、入ってこいって事だよな。

…どうする。怪しさ満点だが


「お邪魔します」


仕方ない。

毒盛られても良いか。

だいたい考え方が異世界では違うのかもしれないしな。


家の中は綺麗に整理整頓されている。

…なんか、おれが一人暮らししてた部屋より高そうで綺麗な部屋だ。というか、女性の家に入った事が無いからこんなもんなんか?


彼女?いたけどすぐ別れるから家なんて入った事無いわ!


若干ブルーになりながら立ち止まってると


「そちらに座ってください。すぐ、用意しますんで」


「あ、手伝う事ありますか?」


ソファがありそこに座る様言われたが流石に何もしないで食事を貰うなんて嫌だから手伝いでもしよう。


「1人で大丈夫なんで座っててください」


やんわりと断られ座る。

え?何このソファ。座った瞬間沈む沈む。

体に負担が一切無い。

ヤバい。このまま座り続けると寝そうだ。


俺がソファに1人で興奮していると美人さんが料理をソファの前にある木のテーブルに置き始めた。

料理を並べ終え反対側にも1人用のソファがあり美人さんがそこに座る。


「食べてください」


美人さんが言う。

箸がある。ここでも箸の文化はあるんだな。


「いただきます」


両手を合わせ感謝する。

アレだけ色々と不安や疑心暗鬼だった俺の心は目の前の料理に奪われていた。


肉料理、野菜、スープ、パン

どれもキラキラと光ってる。

いや、俺が単純に腹減りすぎて光ってる様にみえるだけだが。


どういう料理なんかは覚えてない。

ただただ美味かった。

下手したら三つ星料理より美味いかも。

まあ、三つ星料理なんて食べた事ないけど。


「あの…すっごく美味かったです」


料理を食べ終え美人さんに頭を下げる。

食事の間ほとんど話してない。

気を使ってくれてるのか食べる姿があまりにも無様だったから…まあ、後半だろうな。


「いえいえ。あんなに美味しく食べてくれるなら良かったです」


ニコッと嬉しそうに言ってくれる。

後片付けをしようと立ち上がろうとするが


「座っててください。歩き続けられてお疲れでしょう」


そう言ってテキパキと片付ける。

…待って。俺何も言ってないよ?

寧ろ名前すら知らないし今までで話す事なんてしてない。


何で知ってるんだこの人?

後片付けをしてる美人さん…

見た目は最初から会った時綺麗だなとその程度だったが今改めて見ると…。


髪は腰まで長い青色の毛先が緑のコスプレか!って思うほどの色だが、これが似合ってるんだな。

顔は…マジマジと見れないんで簡単に言えば漫画やアニメに出てきそうな整った顔立ちで印象に残ってるのは目が赤と青の透き通った綺麗な目をしている。

スタイルは…まあチラチラと見ているが良さそうだな。胸は普通だ。普通なんだ。大事な事だから二回言う。


着ている服は白のワンピース…みたいな服の上から茶色のカーディガンを着てる。

まずいな、服とか興味ないから説明が下手だな。


簡単に言えばそこらのアイドルよりは綺麗だって事だ。


そんな、美人さんの容姿を観察してると終わったのかこちらに来る。

そして、ソファに座る。


どうする?食事を頂いた時点で恐らく良い人なんだろうが…


「ふふ。今、私のこと怪しんでますね?」


俺の考えを読み取ったのか面白そうに言うもんで体が強張る。

まさか、彼女は心眼の持ち主なのか!?

よし、考えても仕方ない。


「聞きたいことがあります」


「何でしょう?後、普通に話されても構いませんよ」


助かる。敬語とかあまり使わないから。


「それじゃあ、普通に話すよ。聞きたいことはいくつある。まず、俺が今まで何をしたか分かってる感じだが…」


「ええ、分かりますよ。何せあそこの森は私が作り魔法をかけてますから」


「ふぁい!?」


魔法!?

森を作った!?


「えーっと、確か冒険者達には【神秘の森】って言われてたわね。そんな大した森じゃないんだけどね~」


次々と知らない情報が出て来る。


「で、何で【神秘の森】って言われる理由は簡単。私が幻影の魔法をかけて森に入った物達を迷わせ入り口に戻すからよ」


ちょっと仰け反り得意そうに言う。


「…悪い。ちょっと考えを纏まらさせて」


無い頭をこれ以上使わさないでくれ!

ここは異世界。

俺の知識はここでは通用しない。

寧ろ漫画や小説の世界、だと考えた方が良さそうだ。

魔法…うん。やっぱりあるんだ。

冒険者とかも出てきたし、魔物とかも居そうだな。


「OK。で、えーっと…」


名前を聞いてない。

なんて、呼べば良いんだろうか。


「あ、私はリューネって言います」


俺が知りたかった名前を教えてくれる。


「リューネさん…で良いのか。とりあえずリューネさんが森を作って幻影…魔法だっけ?その魔法を使って俺が歩き続けた訳?」


「リューネでいいわよ。その通り」


「でもさ、何で俺ここにいるん?」


聞いた感じじゃあ森の入り口に戻るみたいな事を言ってたが俺はこの家に着いた。


「そこは私も不思議なのよね~」


本当に不思議そうに頭をコテンと傾ける。

可愛いじゃねーか、チクショウ。

可愛いが今は置いといて。


「でもさ、何で俺がここに来る事や歩き続けた事分かるの?」


「ん?ああ、探知魔法使ったからよ」


はいはい。魔法ですか。


「そ、そっか。あ、後何で普通に家に入れてくれたの?警戒するでしょ?」


「ん~それは確かにそうなんだけどさ私の幻影魔法を解けるのは中々いないし、どういう人なのか気になったんだよね~」


随分と冒険するな~。見た目とは裏腹に。


「そんなんで普通入れるか?」


俺だったら警戒するぞ。


「大丈夫よ。こう見えて私強いもの」


ドヤ?と顔をするが…

いや、めっちゃ弱そうに見えるけどな。


「ステータス見てみれば分かるでしょ?」


「ステータス?」


「そうそうステータスよ。…まさか、ステータスを知らないの?」


今度は頭オカシイの?みたいな顔をされるが

いや、ステータスとか知らないからね。

さて、困った事が起きた。

ステータス。

ゲームとかしてたら言葉の意味は分かるが、この場合どうしたら良いんだ?


「まさかステータスを知らない人間がいるなんて…」


「えーっと、ん~ちょっと色々あってさ」


色々あったんだよ。


「色々ね…うん。とりあえず今日はもう遅いからここまでにしておきましょう」


まだ、聞きたい事だらけなのだが仕方ない。

無理に聞いたところで俺の頭じゃ理解するのに時間かかるしな。


「あ、ここら辺て寝る所ある?」


流石に女性の家で寝るのはマズイ。

お金が無いからせめて虫とか動物とか出ない場所で寝たいな。


「ここで寝てけばいいじゃない」


「いや~流石にそれは…」


「私は大丈夫よ。それとも襲うつもり?」


どうなん?みたいな顔で聞いてくる。

絶対ワザと聞いてるだろ。


「…食事を食べさせて頂いたのにそんな事しない。それに、襲った所で返り討ちにあってボロボロになるイメージしか無いよ」


魔法とかで簡単にやられそう。

実際幻影魔法で散々な目にあってるからね!


「ざ~んねん。そこのソファで寝ていいから。毛布はこれを使ってね。おやすみなさい」


毛布を渡されリューネは自分の寝室に戻っていた。

何が残念だよ。絶対ボコボコにするの楽しみにしてた顔だよあれは。ソファで横になる。

色々と考えをまとめようとしたが流石に歩き疲れたせいかすぐ寝てしまった。

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