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第五話 勇者、対峙する

 さて、これは非常にまずい状態になった。


 何がまずいのか?簡単である。弱体化した我より、ユイの方が強いかもしれないのだ。

 ユイが修行するにあたり、城を破壊されてしまっては困るしユイも申し訳無さそうにするので、空間隔絶魔法を展開し、その中で修行させているのだ。早くそうすればよかった。しかし、ユイの力は凄まじく、空間隔絶魔法を打ち砕きそうな程の猛威を振るうのだ。いざ、打ち砕きそうになった時は、そろそろ休憩にしようか。とユイに促し、誤魔化している。


 魔王としての威厳を保つ為に我はさらに修行を重ねなければならなくなった。切磋琢磨し、互いを強め合う。仲間とはこうあるべきなのだろうか?


 ユイの成長は目紛しい。この場合成長とは、自身の能力の向上でなく、制御の観点で見た場合の話である。技能は劣るものの、他に類を見ない才能、力、可能性を秘めていた。流石に勇者の名は伊達では無い、人類が彼女を勇者と讃え希望を背負わせる気持ちは理解できる。


 魔王という存在は人類から見れば余りにも理解し難い、超越した存在である。理解の及ばない物に対して、生物は畏怖を覚えるのだ。故に魔王は、人類にとって恐怖の象徴なのである。つまり、現状力を失くした我の状態は非常にまずいのだ。


 我はユイが寝ている間に、ひっそりと修行をする事にした。


 空間隔絶魔法を使用し、さらに時間圧縮魔法を重ねがけする。その空間の中でひっそり、濃厚に修行をするのだ。結構ずるい修行法である。


 すまんな、ユイ。今の我の力では時間圧縮魔法を同時にかけてやるだけの余裕が無いのだ。マジつ強すぎってやつなのだ。


 我とユイは微妙なバランスで互いを高め合い、共に成長していくのだった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 魔王城には、多数の人員が揃っている。

 主に戦闘人員、それを束ねる幹部。

 その幹部に我は頭を悩ませている。最早患部なのか?

 そして今日も悩みの種を撒き散らしに、我の前に現れるのだった。


「ま・お・う・さ・ま〜」


 と、甘い声を発しながら我に飛び付いてくる女の子。

 腰まで届く、透き通るような真紅の髪に、血のような真紅の瞳。赤色とはこんなにも美しいものなのかという程に、全身を真紅のドレスで着こなす、統一された赤。いや、紅と言うべきであろうか?

 彼女の名はシェリー。吸血鬼である。我に好意があるらしい。それが我の悩みの種なのだ。我はロリコンではないのだ。ん?ユイはいいのかって?はっはっは、ユイは我の娘のような感覚であり、決してその様な気持ちは無いのである。本当である。本当である。我はシェリーをヒラリと躱す。


「もー、魔王様ったら、いけずぅ〜」


 我が避けた事により激しく床に転がりながらシェリーが何か言っている。毎度毎度の事であるが、そろそろ学習したらどうなのだろうか?そして、まずい事にこの場面、我はユイと一緒にいたのだ。


「なんで、ニンゲンサマがここにいるわけ?」


 シェリーは、我にしがみついて後ろに隠れるユイに不満そうにそう言い放つ。


「まてまて、シェリーよ。ユイは我の仲間である。つまり、お前の仲間でもあるのだ、いつも言っているではないか」


 ユイは敵意を丸出しにするシェリーに怯え、我の後ろから顔を出して、睨みつけてくるシェリーを見ては引っ込め、見ては引っ込めを繰り返している。なにそれ可愛い。


「魔王様、私はこのニンゲンを仲間と認めていません!大体、なんでニンゲンが仲間なんです?私達より劣る種族が仲間なんて私には我慢なりません!」


 シェリーはユイに対して不満を唱える。ユイは怯えきって、我の背後でプルプルと震えている。


「キー!あなた、魔王様から離れなさい!魔王様は私のものなのよ!そこは私の場所なの!」


 ふむ……女の嫉妬は怖いな。どうしたものだろう?と頭を悩ませている中、ゼファーが見兼ねて我の前に現れ、一つ発案する。


「魔王様、ここは一つシェリーとユイを闘わせてみては?」


「えっ」


 シェリーとユイが同時に驚く。


 ほう?それは面白そうだ。ユイは新たな力を手に入れてから修行を重ね、まともに力を操れるようになっていた。しかして、絶対的に実戦経験が足りない。どのような状況においてどう対処するのか、学んでおいた方が良いだろう。そして、ユイの力をその身で体感すれば、シェリーもユイを仲間と認めてくれるかもしれない。


「ふむ、それは面白いかもしれないな。では、ゼファーよ、空間隔絶魔法、空間拡張魔法を展開し、場を設けるのだ」


「かしこまりました。すぐに初めてしまっても構わないのですか?」


「よろしい、我もこの二人の闘いには興味がある」


 ユイは驚きと怯えの顔で、我を見上げる。なんで?なんで?と言いたそうな心境が手に取るようにわかる。


 が、ユイよ。お前は腐っても勇者であろう。自分より大きな存在が近くにいる事で、ユイに甘えが出てきている事は知っていた。少女なのであるから仕方ないが、たまには厳しくしてやるのもまた、我の務めなのである。


 そして、我は誰よりユイの力を認めているのだ。シェリーは強い。だが、ユイも負けず劣らず強いのだ。そして、我はユイの頭に手を置き、告げる。その行為を見てシェリーにも完全に火が着いたようだ。


「出来るな?」


「はい、魔王様」


 ユイは泣き出しそうだったが、迷いを捨て、闘いの覚悟を決める。我はシェリーに目をやる。


「私ももちろん構いません。でも、殺してしまうかもしれませんよ?いいんですか?魔王様」


 シェリーが不敵な笑みを浮かべながら我に話しかける。


「構わん、そのつもりでやれ。しかしシェリーよ、ユイは強いぞ」


 ユイとシェリー、果たしてどちらが強いのか?我は知らず知らずの内に、心躍らせていた。


 そしてその直後、ゼファーが魔法を展開させ、空間が拡張される。


 闘いの準備は整った。


 さて、どのような闘いが繰り広げられるのか、実に楽しみである。

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