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4 湖畔での再会

「あと半分です。クルストラさま、大丈夫ですかな?」


「トルダのほうがよほどしんどいだろ。悪いな。でも、俺だけじゃこの山脈に登るなんて無理だった。すごく感謝してる」


「なに、当然のことをしたまでです」

「それでも。すごく助かった」


「お役に立てて幸いでした。さあ、少し休憩したら発ちましょう。下りのほうが辛いはずですから、そのつもりで」

「はい」


 目的地が見えると、やる気が甦ってきた。


そうだ。俺たちはあそこを目指しているんだ。

あそこにたどり着かないといけないんだ。

それも、できるだけ早く。


 山を登っている間にも、何度か地震があった。

 幸いそれほど大きなものではなかったけれど、いつまた大きな揺れがきてもおかしくはない。


「それにしても、サリアさまは本当にお元気でいらっしゃいますな」


 息ひとつ切らしていないサリアを見ながら、トルダが感心している。


「リフシャティーヌの加護を得ているらしいからな」

「なるほど。そうでしたか」


 トルダは納得したように数度頷き、それから隊士のほうへと去って行った。

 ここから先の指示を出すのだろう。


 俺は空を見上げた。

 太陽は既に傾き始めている。


 日暮れまでに麓にたどり着くことができるかどうか、微妙なところだ。


「ツァル、ペリュシェスに精霊の気配はあるか?」 


 さすがにこれだけ離れていると、俺には精霊の気配を感じとることは不可能だった。


『ああ、思った以上にたくさんいるみたいだ』

「なんとかなるか?」


『なんとかするしかないだろう』

「そうだな」


 俺は精霊の塔を視界に収め、その姿をしっかりと脳裏に刻み込んだ。




 山々に囲まれた地、そこにあるのは精霊幻都市ペリュシェスの遺跡。


 かつて大精霊シュテフォーラがこの世界を創造した。

 世界には精霊が、生物が誕生し、やがて人類が現れる。


 世界は平和だった。

 しかしやがて人間たちは醜い争いを始め、そのせいで世界は荒んでしまった。


 いつまで経っても争いをやめようとしない人間の愚かさを嘆いたシュテフォーラはこの世界を見捨て、大精霊の世界(ネル・シュテフス)に帰ってしまった。


 シュテフォーラを失った世界は、崩壊へと向かう。

 しかし世界の崩壊を食い止めようと、ふたりの男が立ち上がった。


 彼らは精霊都市ペリュシェスを目指し、精霊にどうか世界を存続させてほしいと頼む。

 その願いを聞き届けたのが、ヴァルヴェリアスとリフシャティーヌだ。


 強大な力をもつこの精霊は、世界を守るために力を貸すことをふたりの男に約束する。

 ただし世界を守るためには人間の協力が不可欠だった。


 守護者は男たちの子孫に代々守護者の協力者たらんことを望み、ふたりの男はそれを受け入れる。


 人々は世界を救った男を王と崇め王宮を建て、守護者のために塔を造った。

 それがこの世界のあらましと王家の始まりだと言われている。




 ――ぺリュシェスに踏み込んだとき、小さいころから聞かされてきた話を思い出した。


 俺たちは麓で夜を明かした。

 後続の隊士たちはまだ着かないけれど、先を急ぐことにする。


 ペリュシェスの端から端まで歩こうと思ったら、丸一日かかるほどの広さがある。

 ペリュー山脈の麓に近い場所には緑が多いけれど、中心部に近づくに連れて石と土ばかりになる。


『サリア』

『待っていたわ』


『無事に到着してなによりね』

『約束どおり、来たのよ』


 湖の畔で休んでいたとき、精霊たちの声が届いた。

 サリアが真っ先に反応し、跳ねるように立ち上がる。


 遅れて俺も気配のするほうを見ると、知っている気配がいくつかそこに漂っていた。


「テュッポ、パル、ドールン、ジェンナ! みんな元気だったんだね!」


 そう、エスーハで出会った精霊たちだ。


『もちろんですわ。みなさまもご無事そうでなによりです』


 テュッポの声が聞こえて、ふわふわと光が舞った。

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