2 東西にのびる黒い亀裂
「どうなってるんだ?」
「すごく大きな地割れができてるみたい。きっと、馬車は隙間に落ちたんだと思う」
馬車が落下するほどの、大きな地割れだって?
ぞくりとして、馬車の止まっていたはずの場所を凝視する。
いくら目を凝らしても、やっぱりそこには何もなかった。
引き寄せられるように、俺は足を踏み出した。
『近づくな。地盤が弱くなっているはずだ。崩れたら今度こそおまえも落ちるぞ』
ツァルが鋭い声で警告する。
「黒い亀裂が、東西に伸びてるの。まるで、アラカステルからペリュシェスへと向かう道を断っているみたい」
「深そうか?」
「たぶん。あれを越えるのは大変だと思う。こちら側に逃げて良かったね」
「ご無事ですか?」
「ああ。親衛隊士は全員無事か?」
「はい。なんとか」
トルダが隊士の顔を確認してから答える。
「それは良かった」
「ですが馬車を失ってしまいました」
「俺たちはここまでずっと歩いて旅をしてきたから、徒歩には慣れてる。平気だ」
「隊士たちを無事な馬の回収に向かわせます。何頭見つかるかはわかりませんが、少しここでお待ちいただいてもいいですかな?」
「構わないけど」
「できるだけ急がせます」
そう告げると、トルダは隊士たちに指示を出し始めた。
馬のある隊士は即座に駆け出し、馬のない隊士は食料や水などの確認を始めている。
『それにしてもひどいな』
『急いだほうがよいかもしれませんね』
今の地震はこれまでで一番大きかったように感じた。
各地でかなりの被害が出ているはずだ。
俺は唇を噛み締めた。
「トルダが戻ってきたら、相談してみよう」
「そうだね」
サリアが不安そうに頷いた。
リファルディアにいる父親と姉のことを、そしてルークにいるという家族のことを心配しているんだろう。
俺は南へと視線を向けた。
脈々と連なるペリュー山脈がすぐそこに見える。
一刻も早く彼の地へ。
自然と鼓動が速まるのを感じた。




