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6 路上に響く破裂音

 身軽なサリアは部屋の窓から飛び降りる。

 俺は階段を下りて玄関から外へ。


 敵に遭遇した場合は適宜倒すこと。

 二手に分かれて、外で合流する。


 万が一合流できなかった場合は、アラカステル地区の南に位置するキュチェ鉄橋で待ち合わせ。

 そのままアラカステルを出る寸法だ。


 アラカステルから真っ直ぐ南下すれば、ペリュシェスを囲むペリュー山脈が、そしてそれを越えればペリュシェスがある。


 世界の中心にして、かつて精霊幻都市のあった場所。

 そしてその遺跡が残る場所。


 ――俺たちの目指す場所。


 俺は宿屋の玄関から外へと勢いよく飛び出した。

 剣を構えていた男が、咄嗟に剣を握り直すのがわかった。


 でも遅い。

 俺はその手首を思い切り蹴り上げた。


 吹っ飛んだ剣が宙を舞う。

 脇の上がった男の懐に素早く入りこみ、腕を掴んでこいつの仲間が立っている場所へと投げ飛ばした。


 避ける間もなく、仲間の下敷きになった男が呻いている。

 それを尻目に、俺は駆け出した。


 建物に沿って走り、左に曲がれば俺たちの部屋の下に出る。

 角を曲がろうとしたところで、こちらに向かってきた人影とぶつかりそうになり、慌てて半身になってかわした。


 相手は俺よりもでかい図体の男だった。

 髪を短く刈り、鋭い目で俺を捕らえる。


 男は即座に反応して、短剣で俺に斬りかかってきた。

 とっさに顔を傾けて避けると、耳のすぐ傍を刃先がかすめた。


 その腕を絡めとリ、捻りあげる。

 短剣が軽い音を立てて落ちた。


 そのまま男を地面に押し倒し、背中を膝で押さえつける。


「何が目的だ?」


 捻りあげる手に力を込めた。

 力加減次第で、このまま脱臼させることもできる。


「力を借りたい」


 男が低く呻くように言う。


「協力を仰ごうっていう態度には見えなかった」

「大人しくしてもらわなければ、話ができないからな」


「残念だけれど、俺にはどうでもいいことに関わってる暇はないんだ。悪いな。俺たちはすぐにアラカステルを発つ。もう用はないはずだ。放っておいてくれ」


 言い終えるなり、俺は手に力を入れた。

 手ごたえがあり、男の右腕がだらりと落ちる。


 関節を外されたのに、男は声のひとつも上げず、荒い息を繰り返しているだけだった。


「また襲われるのは御免だからな」 

「クルス!」


 サリアが姿を現し、俺は立ち上がった。


「サリア、そっちはどうだ?」

「大丈夫」

『わたしがついているのです。怪我をさせるような無様はいたしません』


 アスィの、心外だ、とでも言いだそうな声が聞こえた。

 それは結構なことだ。


「よし、行こう」


 念のため近くに落ちていた短剣を遠くに蹴り飛ばしてから、サリアの傍に駆け寄る。


「クルス、怪我はない?」

「ああ」

『さっさと行こう。応援が来たら厄介だ。気絶してる奴が目を覚ますかもしれないしな』


 ツァルが言ったその時、破裂音が響いた。

 反射的に、体が動く。


 俺はサリアを抱えこむようにして、地面に倒れこんだ。

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