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5 決意と固く握りしめた拳

『アラカステルに拠点を置く団体です。自然と精霊を愛し、植物を育て、精霊を敬い、世界を救おうという団体のようです』


「いい奴らじゃないか」

『以上が表の顔。裏では、あくどい金儲けをしているようです』


「ありがちな話だね」

「そいつらが俺たちになんの用があるんだ」


 階段のほうをちらりと確認したけれど、まだ後続者がやってくる気配はない。


 けれど長居は無用だ。

 早くこの場を去ったほうがいい。


「さあな、そこまでは知らねえよ」

「ですよね」


 膝を震わせているこの店主に、これ以上訊いても無駄だろう。


 サリアの肩に手を置き、下がらせる。

 店主がほっと息を吐くのと同時に、俺は店主のみぞおちに拳を叩きこんだ。


「がっ……」


 店主は唾を吐き出しながら、背を丸めて倒れこむ。


『つまり俺たちは新生ヴァヴァロナの都市長ドッツェの部下と、メ・ルトロっていう団体のふたつから追われてるってことか?』


『ドルグワたちを捕らえたかと思えば、次から次へと新たな追っ手が増えてゆく。これではきりがありませんね』


「俺たちの素性が、ばれているのか?」


『ドルグワがあなたたちを追う過程で、精霊を連れた青年と、精霊を見ることのできる少女のふたり連れを捜している、という情報を流したことがあるらしいですよ。ただ、ぱっと見はふつうの人と変わりませんから、精霊を見たり感じたりできる人でないと判別は難しいですよね』


「そんなことになってたなんて、知らなかったよ」

『わたしもですよ。ドルグワの取り調べをしていた者からの報告で知りました』

『それよりなにより、列車の中の騒動を見ていた奴らからは絶対怪しまれてるだろうな』


 他の乗客のいるところで顔を見られることは避けられたはずだ。

 けれど俺が窓から外に出たあとに、俺が王子じゃないかという話があの場で出たとしたら、少なくとも同じ車輌に乗っていた人たちには疑われていてもおかしくないわけだ。


「今でも、ヴァヴァロナの王子ってのは利用価値があるのか?」


『王政の復活を願う声は多いのですよ。ですが今は世界の崩壊を止めるほうが先です。だからこそツァルは貴方を連れてペリュシェスに向かっているのです。この意味はとても大きい』

『失敗すれば、この世界は間違いなく滅びる』


 その言葉に、俺とサリアはごくりと唾を呑み込む。


 俺たちのこの旅に、それほど重大な意味があったとは知らなかった。

 旅立ちのきっかけはラドゥーゼが滅び、住む場所を失ったことだと思っていたから。


『世界が精霊の集う都市ヘルル・ド・シュテフスを失う意味は大きい。最悪どんな状態でもいい、そこにあることが大事だった。世界の五方にある精霊の集う都市ヘルル・ド・シュテフス、そしてそこに存在する精霊の寄る辺(ルチェ・シュテフス)は世界を支える楔だからな』


 そういうことだったのか。

 そういえば地震が増えたのは、ラドゥーゼが滅びたあとだった。


「何がなんでも、ペリュシェスに行くしかないね」


 サリアの言葉に、俺は深く頷いた。


 俺を生き延びさせろとツァルに命令したヴァルヴェリアス。

 そこにはなんらかの意味があるに違いない。


 たぶん、ヴァヴァロナ王族としての役割が俺にはあるんだ。


 そして俺がリファルディア王族の血をひくサリアと出会ったことにも意味があるはずだ。


 リファルディアの王、王女がともに病に倒れている今、健康なサリアとこうしてペリュシェスを目指していることにも、きっと意味があるんだ。


「行こう」


 俺の声に、三人が応じる。 


 外には依然人の気配。

 中が静かなので、そろそろおかしいと思い始めているころだろう。

 あるいは、俺たちが出てくるのを待ち構えているのかもしれない。


 けれど、俺たちは奴等を突破してペリュシェスへ行く。

 俺は決意し、拳を固く握りしめた。

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