表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/68

14 車輛内に投げ込まれた軍服の男

 と、先頭に立っていた男が剣を振り上げた。


 遅い。

 俺は低く踏み込むと、剣の柄を男の鳩尾にめり込ませた。


 男が唾液を吐き散らし、前傾姿勢になって剣を落とす。

 からんと通路に剣が落ちる音が響く。


 俺はその男を座席のほうに蹴り飛ばした。


 その隙に横から迫っていた剣を、自分の剣で受け止める。

 手に衝撃が伝わる。


 ぎりぎりと押し込んでくる相手に押されて、刃先が徐々に顔に近づいてくる。

 特に鍛えているわけじゃないから、力比べじゃ部が悪い。


 渾身の力を込めて、相手の剣を押し返す。

 その隙に数歩後退して間合いを取り、体勢を立て直す。


「怪我をさせても構わん。とっとと捕らえろ!」


 ドッツェの怒声がとぶ。

 自分は何もしないくせに、随分と偉そうだ。

 こんな奴の下で働かないといけないなんて、こいつらが気の毒になってきた。


 男が再度斬りかかってくる。

 この男は、他の奴とは違ってなかなかやる。


 相手の攻撃を防ぐのに精一杯で、なかなか反撃に出られない。


『そういえばおまえ、剣は苦手だったんだよな』

「は? そうなの?」


 記憶はないけれど、剣を持った感覚に覚えがあったから、てっきりそこそこ使えるんだと思っていた。


 その隙を狙って、男の剣が襲いかかる。

 俺は慌ててそれを弾き、更に下がる。


『王子だから剣術の練習もやってたんだけどな、おまえはいつまでたっても上達しなかった』

「この状況でそんなこと言うなよ」


 すっかり勝てる気がしなくなった。

 そうか、俺、剣は下手なのか。


『ま、ほどほどのヤツが相手なら対等にやり合えるだろ』


 ほどほどってどの程度だ!?


 その時、キィンという音がして、俺が握っていた剣が吹っ飛ばされた。


 しまった!


 剣を失った手が空を掴む。


「ここまでだ。怪我をしたくなかったら大人しくしろ」


 剣先が真っ直ぐ、俺の喉もとにつきつけられる。


 俺はごくりと唾を呑みこんで男の目を睨みつけた。

 真っ直ぐに俺を射抜く瞳に負け、目を逸らす。


 視界の隅をツァルがちらちらと移動してゆく。

 おまえのせいだぞ、と文句を言いたくなる。


 言ったところで、この状況をどうにかできるわけじゃないけれど。

 俺は両手を上げて降参の意を表した。


「逃げようとは思わないことだ」


 ここまでか。

 俺は抵抗を諦めた。


 ――その時。


「思うに決まってるでしょ!」


 突然、女の声が投げこまれ、俺たちは一斉に周囲を見渡した。


 どこだ!? 

 どこから聞こえた?


『馬鹿、今だ。逃げろ』


 声の主を探そうとしていた俺は、ツァルに言われてはっと我に返った。

 男の剣先から逃れるように後退する。     


 そこに、窓から人影が飛び込んできた。

 その人影はドッツェにぶつかり、諸共に倒れこむ。


 人が飛び込んできたんじゃない。

 軍服を着た男の体が、投げこまれたんだ。


 そちらに気をとられているうちに、続いてもうひとり、窓から侵入してきた。

 こちらは自分の意思で入ってきたようだ。


「どうして置き去りにしたのよ、クルス!」


 俺の名前を呼ぶその声の主は――。


「サリア!?」


 そこに立っているのは、黒く光る重そうな剣を手にしたサリアだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ